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美しい花たち
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信じられないと言った様子で鏡を見続けている瀬里さんに実感してもらおうと、隣の部屋に支度が終わったことを声かけるとすぐに襖が開いて、千里さんと和泉さんが現れた。
前を少し垂らし、纏め髪のウイッグをつけた和泉さんと、ふわふわのカールのロングウイッグをつけた千里さんはどちらも見た目男性には全く見えない。
もちろん、和風な纏め髪にした瀬里くんも誰が見ても女性にしか見えないだろう。
元々の本人たちの顔立ちが女性っぽいということもあるけれど、やっぱり飯野さんのヘアメイクは最高だわ。
お互いに、お互いの可愛さに見惚れてしまっているけれど、この感動を外で待っている旦那さまたちに見せてあげたくて、
「さぁ、せっかくお着替えも終わったし、見せにいきましょうか」
と誘うと瀬里さんは恥ずかしそうに遠慮していたけれど、せっかくお着替えしたのにここで終わらせるのは勿体無い。
慌てて瀬里さん用のお草履と千里さんたちのハイヒールを用意していることを告げて、外でも写真が撮れると話すと千里さんはすぐに話に乗ってくれた。
千里さんがこのお着替えにノリノリで本当によかったわ。
瀬里さんは千里さんに流されるままに頷き、お着替え用の部屋を出た。
部屋を出るとすぐに三人の男性がエスコートのために近づいてくる。
天沢くんは愛しい千里さんのドレス姿を見て、目を細めている。
瀬里さんの上司の佐久川さんはさっと和泉さんに駆け寄って、腰に腕を回した。
あらあら、和泉さんは恥ずかしがっているけれど、嫌ではないみたい。
ふふっ、お似合いの二人ね。
そして、板前の麻生さんは千里さんと和泉さんには脇目も振らずに瀬里さんの元に駆け寄ってきた。
自然に手を差し出したからか、瀬里さんも当然のように手を置いて……楽しそうに会話をしている。
ここも正式なカップルになるのももうすぐね。
すると、瀬里さんが他の人の存在を思い出したのか、周りをキョロキョロして、千里さんと和泉さんを見ると和泉さんの隣に当然のように佐久川さんがいたことに驚いていた。
どうやら瀬里さんだけはまだあの二人の関係に気づいていないみたい。
佐久川さんはそんな瀬里さんに
「日南にも紹介しておこう。彼は私の恋人だ」
と堂々と宣言していたけれど、瀬里さんはあまりにも突然のことにびっくりして少しパニックになっている。
佐久川さんから落ち着けと声をかけられていたけれど、それよりも隣にいた麻生さんが瀬里さんを優しく落ち着かせていた。
ふふっ。やっぱり好きな相手の言葉は偉大ね。
これなら本当にすぐに二人も恋人に発展しそう。楽しみだわ。
征哉たちも待っているだろうし、そろそろ移動したほうがいいわね。
きっと一花くんも直純くんも疲れているはずだし。
「さぁさぁ、立ち話はこの辺にしてせっかくだからみんなが集まっているところに行きましょう」
「そうですね。貴船にも千里の可愛い姿を見せつけてやらないと、一花さんの惚気ばかり聞かされるのは損ですからね」
天沢くんがそう言ってくれたおかげで、みんなで征哉たちが集まっている部屋に向かうことができた。
<side征哉>
胸に桜の花刺繍が施された袖付きの桜色のチュールドレス。
それを着た一花は桜の妖精のようにとても可愛い。
さっき榎木くんに一花の身体の状態について相談したのだが、一花の身体は私と愛し合える程度には回復しているということだった。
ただし、絶対に無理はしないようにということと一花がうつ伏せに寝たまま、もしくは横たわったままの体位のみとの限定付きだったが、それでも一花と結婚式を挙げた夜に愛し合えるのはこの上ない幸せだ。
着物からドレスに着替えもさせたし今日はこのドレスのまま愛し合えるだろう。
ああ、ここまで長かった。
無邪気に甘えて、無意識に煽ってくる可愛い一花を前に我慢し続けるのはかなりの苦行であったが、その日々を乗り越えての今日は何にも変え難い幸せだ。
喜びを抑えられないまま、一花をお姫さま抱っこでみんなの元に連れて行くと、
「わぁー! 一花さん、ドレスだ! すっごく綺麗です!!」
と目を輝かせた直純くんがすぐに駆け寄ってきた。
「本当! すっごく似合ってる!!」
「一花くん、綺麗だよ」
谷垣くんや史紀さんたちは一花を抱きかかえている私には一切目もくれずに、一花を囲み楽しそうに会話を続けている。
絶対に邪魔をしてはいけないような雰囲気が漂っていて、私はもう一花を抱きかかえているただのオブジェのような気持ちでその場に立ち続けた。
周りからは同情の目を向けられたまま、気配を消して静かに佇んでいると、
「みなさん、今日の結婚式に尽力してくださったこの方たちにもお着替えしていただいたわ。どうかしら?」
という母の声が聞こえた。
そっちに視線を向けると、天沢が得意げに綺麗なドレス姿の女性を連れて、その後ろにも数人の姿が見える。
「もしかして、千里さんか?」
「ああ、そうだ。よくわかったな。貴船の母君に声を掛けてもらって千里と和泉さん、そしてこの結婚式をプロデュースしてくれた日南さんも着替えさせてもらったんだ」
嬉しそうな天沢の隣で千里さんが笑顔を見せる。
ああ、あの笑顔はまさしく千里さん。
和菓子職人の和泉さんの隣は、プリムローズの佐久川社長か。
元々繋がりがあったのか、それとも今回の結婚式で知り合ったのかわからないが、お似合いだな。
そして、板前の麻生さんとプリムローズの日南くん。
こちらもお似合いの二人だが、日南くんを見る麻生さんの視線を見ると、どうやらこちらはまだ正式なカップルではなさそうだ。
まぁ、それも時間の問題だろう。
私と一花の結婚式がきっかけで幸せなカップルが増えたならそれは嬉しいことだ。
志摩くんと谷垣くんもいうならば私たちが繋いだ縁と言えるだろう。
これも全て一花のおかげではないかと思ってしまうほど、ここには幸せが溢れている。
ここで結婚式を挙げることができて本当によかったな。
前を少し垂らし、纏め髪のウイッグをつけた和泉さんと、ふわふわのカールのロングウイッグをつけた千里さんはどちらも見た目男性には全く見えない。
もちろん、和風な纏め髪にした瀬里くんも誰が見ても女性にしか見えないだろう。
元々の本人たちの顔立ちが女性っぽいということもあるけれど、やっぱり飯野さんのヘアメイクは最高だわ。
お互いに、お互いの可愛さに見惚れてしまっているけれど、この感動を外で待っている旦那さまたちに見せてあげたくて、
「さぁ、せっかくお着替えも終わったし、見せにいきましょうか」
と誘うと瀬里さんは恥ずかしそうに遠慮していたけれど、せっかくお着替えしたのにここで終わらせるのは勿体無い。
慌てて瀬里さん用のお草履と千里さんたちのハイヒールを用意していることを告げて、外でも写真が撮れると話すと千里さんはすぐに話に乗ってくれた。
千里さんがこのお着替えにノリノリで本当によかったわ。
瀬里さんは千里さんに流されるままに頷き、お着替え用の部屋を出た。
部屋を出るとすぐに三人の男性がエスコートのために近づいてくる。
天沢くんは愛しい千里さんのドレス姿を見て、目を細めている。
瀬里さんの上司の佐久川さんはさっと和泉さんに駆け寄って、腰に腕を回した。
あらあら、和泉さんは恥ずかしがっているけれど、嫌ではないみたい。
ふふっ、お似合いの二人ね。
そして、板前の麻生さんは千里さんと和泉さんには脇目も振らずに瀬里さんの元に駆け寄ってきた。
自然に手を差し出したからか、瀬里さんも当然のように手を置いて……楽しそうに会話をしている。
ここも正式なカップルになるのももうすぐね。
すると、瀬里さんが他の人の存在を思い出したのか、周りをキョロキョロして、千里さんと和泉さんを見ると和泉さんの隣に当然のように佐久川さんがいたことに驚いていた。
どうやら瀬里さんだけはまだあの二人の関係に気づいていないみたい。
佐久川さんはそんな瀬里さんに
「日南にも紹介しておこう。彼は私の恋人だ」
と堂々と宣言していたけれど、瀬里さんはあまりにも突然のことにびっくりして少しパニックになっている。
佐久川さんから落ち着けと声をかけられていたけれど、それよりも隣にいた麻生さんが瀬里さんを優しく落ち着かせていた。
ふふっ。やっぱり好きな相手の言葉は偉大ね。
これなら本当にすぐに二人も恋人に発展しそう。楽しみだわ。
征哉たちも待っているだろうし、そろそろ移動したほうがいいわね。
きっと一花くんも直純くんも疲れているはずだし。
「さぁさぁ、立ち話はこの辺にしてせっかくだからみんなが集まっているところに行きましょう」
「そうですね。貴船にも千里の可愛い姿を見せつけてやらないと、一花さんの惚気ばかり聞かされるのは損ですからね」
天沢くんがそう言ってくれたおかげで、みんなで征哉たちが集まっている部屋に向かうことができた。
<side征哉>
胸に桜の花刺繍が施された袖付きの桜色のチュールドレス。
それを着た一花は桜の妖精のようにとても可愛い。
さっき榎木くんに一花の身体の状態について相談したのだが、一花の身体は私と愛し合える程度には回復しているということだった。
ただし、絶対に無理はしないようにということと一花がうつ伏せに寝たまま、もしくは横たわったままの体位のみとの限定付きだったが、それでも一花と結婚式を挙げた夜に愛し合えるのはこの上ない幸せだ。
着物からドレスに着替えもさせたし今日はこのドレスのまま愛し合えるだろう。
ああ、ここまで長かった。
無邪気に甘えて、無意識に煽ってくる可愛い一花を前に我慢し続けるのはかなりの苦行であったが、その日々を乗り越えての今日は何にも変え難い幸せだ。
喜びを抑えられないまま、一花をお姫さま抱っこでみんなの元に連れて行くと、
「わぁー! 一花さん、ドレスだ! すっごく綺麗です!!」
と目を輝かせた直純くんがすぐに駆け寄ってきた。
「本当! すっごく似合ってる!!」
「一花くん、綺麗だよ」
谷垣くんや史紀さんたちは一花を抱きかかえている私には一切目もくれずに、一花を囲み楽しそうに会話を続けている。
絶対に邪魔をしてはいけないような雰囲気が漂っていて、私はもう一花を抱きかかえているただのオブジェのような気持ちでその場に立ち続けた。
周りからは同情の目を向けられたまま、気配を消して静かに佇んでいると、
「みなさん、今日の結婚式に尽力してくださったこの方たちにもお着替えしていただいたわ。どうかしら?」
という母の声が聞こえた。
そっちに視線を向けると、天沢が得意げに綺麗なドレス姿の女性を連れて、その後ろにも数人の姿が見える。
「もしかして、千里さんか?」
「ああ、そうだ。よくわかったな。貴船の母君に声を掛けてもらって千里と和泉さん、そしてこの結婚式をプロデュースしてくれた日南さんも着替えさせてもらったんだ」
嬉しそうな天沢の隣で千里さんが笑顔を見せる。
ああ、あの笑顔はまさしく千里さん。
和菓子職人の和泉さんの隣は、プリムローズの佐久川社長か。
元々繋がりがあったのか、それとも今回の結婚式で知り合ったのかわからないが、お似合いだな。
そして、板前の麻生さんとプリムローズの日南くん。
こちらもお似合いの二人だが、日南くんを見る麻生さんの視線を見ると、どうやらこちらはまだ正式なカップルではなさそうだ。
まぁ、それも時間の問題だろう。
私と一花の結婚式がきっかけで幸せなカップルが増えたならそれは嬉しいことだ。
志摩くんと谷垣くんもいうならば私たちが繋いだ縁と言えるだろう。
これも全て一花のおかげではないかと思ってしまうほど、ここには幸せが溢れている。
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