歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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着物かドレスか

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「あれ? 伊月が……」

甲斐さんの声にあちらを見れば、伊月くんが母に連れられてどこかに行っているのが見える。
母のあの笑顔を見ると、伊月くんを連れてでた理由はただ一つだと思うが、ここで告げるかどうか……。

いや、甲斐さんのあの心配そうな表情を見る限り、どこかに連れて行かれたまま理由がわからないでは探しに行きかねない。
あれだけ冷静に見えるというのに伊月くんに関してはほんの少しも冷静になれないのは面白い。

まぁ、私も一花が何も言わずに連れて行かれたら同じようになってしまうだろうから人のことは言えないな。

「甲斐さん、大丈夫ですよ。きっと着替えに行ったんです」

「着替え?」

「ええ。さっき絢斗さんからも誘われていたでしょう? 着替えたらよかったのにって。おそらくあとでまた撮影があるので、みんなで一緒に花になって彩ってくれるつもりなんですよ」

「伊月が、着替え……。じゃあ、ドレスか着物を着て戻ってくるということですか?」

「ええ。一緒に行ったのは私の母ですからご心配なく。戻ってくるのを楽しみにしているといいですよ」

私の言葉に甲斐さんは安堵の表情と共に喜びを滲ませていた。

<side一花>

「じゃあ、ドレスと着物、伊月くんはどっちを着てくると思う?」

あやちゃんの言葉に悩んだけれど、敬介さんのことを憧れているようだったしお揃いを選ぶんじゃないかな?

「一花ちゃんはどっちだと思う?」

「僕はドレスだと思います」

「オッケー。じゃあ、ドレス一票ね」

「私もドレスかな」

「あ、私も!」

僕の意見に乗ってくれたのは、佳史さんと史紀さん。
やっぱりそうだよね。伊月さん、すごく似合いそう。

「僕は着物だと思うな」

「あ、私も着物かな」

そう言ったのは尚孝さんと敬介さん。

「どうして着物だと思ったんですか?」

「うーん、なんとなくだけど、伊月くんの恋人さん」

「甲斐さん、ですか?」

「そうそう、その甲斐さんが着物好きそうな感じがするんだよね」

「ああ、わかる。そんな感じするよね」

「はい。そうですよね」

なんだか尚孝さんと敬介さん、二人だけで通じ合ってるみたいだな。
仲良しさんみたい。

でも、そっか。
甲斐さんが着物好きなら伊月さんも着物かな?
まぁどっちにしても楽しみ。

「直くんはどっちだと思う?」

「えっと、あの、僕は……ドレス、かなって」

「わぁ、僕と一緒だね。そう言えば、直くんはどうしてドレスにしたの?」

「着物もすっごく綺麗だったんですけど、慣れないと難しいかなって……」

「ああ、そうなんだ。確かに僕も歩いた時転びそうになっちゃったしね。でもそのドレスよく似合ってる。昇さんが選んだの?」

「はい。僕、いっぱいありすぎて選べなくて……」

「ふふ、そっか。選んでもらえてよかったね。すっごくよく似合ってるよ」

「あ、ありがとうございます」

直くんと昇さんは、僕たちと出会ったあと、すぐに恋人になったと教えてもらった。
文字だけでも嬉しさが伝わってくるメッセージが届いた時は征哉さんと一緒に喜んだものだ。

だから今日、会えるのが楽しみだった。

結婚式の間は自分のことに精一杯で直くんの様子を見るのもあまりできなかったけれど、ご飯食べている時に隣同士にピッタリと寄り添って時々食べさせてもらってる直くんを見て、嬉しくなったんだ。

「私も、着物かな。ってことで、一花ちゃんと直くん、佳史くんと史紀くんはドレス。私と敬介くんと尚孝くんは着物ね。ちょうどいい感じに分かれたね。伊月くんが戻ってくるの楽しみだね。それまでおしゃべりして待ってようか」

「はーい。ねぇ、直くん。外れたらキスだってなんだかドキドキするね」

「は、はい。そうですね。ちょっと緊張してきました」

「大丈夫だよ、きっと昇さん喜ぶし」

そういうと、直くんは少し頬を赤らめて小さく頷いていた。

<side未知子>

「伊月くん、ここがお衣装部屋よ」

「わぁー、すごいいっぱいですね!」

私に連れられて部屋を出てきた時は、戸惑いと緊張の表情でいっぱいになっていたけれど、美しい着物を前に目を輝かせていてそれがとても愛らしかった。
甲斐さんも、伊月くんが可愛い格好で出てきたらきっと喜ぶわね。

「こっちがお着物で、襖を開けた隣がドレスよ。伊月くんはどちらが着たいとか希望はあるかしら?」

「えっ、どちらも綺麗すぎて、僕に似合うかどうか……」

「あら、そんな心配はいらないわ。伊月くんはどちらもよく似合うと思うわ」

「本当ですか?」

「ええ。好きな方を選んで構わないのよ」

そう言ってみたけれど、どうしようかと悩んでいるのがありありとわかる。

「じゃあ、私が伊月くんに似合うものを選んでもいいかしら?」

「はい。お願いします!」

まさか、今日は二度も選べるなんて思わなかったわ。
ああ、楽しくてたまらない。
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