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<side征哉>
「征哉くん、昇の相談ってなんだ?」
「はい。今日はこの後、先生方はうちの保養所で宿泊なさるでしょう? 昇くんは直純くんのお風呂をどうしようかと悩んでいて……」
「ああ、そうか……。それがあったな」
磯山先生の表情が気になったのか、隣に座っていた蓮見さんが声をかけてきた。
「風呂をどうするとはどういう意味だろう?」
「昇くんと、あそこにいるピンクベージュのドレスを着たあの子はつい最近恋人同士になったばかりなんですが、あの子はまだ14歳なので、その性的なことは何も知らないというか……まだ教えるのは早いというか……」
もうすっかり父親として直純くんをみている磯山先生の前でなんと言えばいいのか言葉に詰まったが、
「ああ。なるほど、そういうことですか」
と榎木くんがすぐに声を上げてくれた。
「君は高校生かな?」
「は、はい。そうです」
「高校生で恋人と一緒に風呂に入れば、どうしたって反応はするだろうし、かといってせっかくの温泉に一人で入らせるのは忍びない、けれど大浴場には連れて行けないというところかな?」
「そうなんです。俺、もうどうしたらいいのか……」
この八方塞がりな状況に困っている間にもその時間は刻一刻と迫っている。
昇くんにとってはここが最後の頼みの綱と言ったところだろうか。
「そんなの、別に悩む必要はないんじゃないかな?」
「えっ?」
突然聞こえてきた声に振り向けば、史紀さんの恋人、安城くんが笑顔でこちらをみていた。
「でも、そういうわけには……」
「あの子のことは今、志摩から聞いたから君がいろいろ考えてしまうのもわかるけど、あの子も14歳ならそろそろそういう身体の変化も教えていかないといけない時期だし、それを君が教えられるならそれこそ良いことなんじゃないかなと思うけどな」
「私もそう思いますよ」
安城くんの意見に大きく頷いたのは、榎木くんだった。
「私はたまに中学や高校の学校健診の手伝いを頼まれて参加することがあるんですが、その時に、何か悩んでいることとか困っていることはないかと聞くと、朝起きて硬くなっていたり、白い粘液が出てきたりするから自分が病気じゃないかと不安でたまらないけど病院に行くのもどこに行けばいいか悩んでいるという相談をされたりするんです。そのたびに、それは病気じゃないから大丈夫だと話はするんですけど、そういう相談をする相手がいないのはこの時期の子にとっては死活問題なんですよね。病気じゃないけど、時々処理した方がいいと話をしてもそのやり方がわからないと言われるんですから、前もって教えてあげるのは必要なことだと思いますよ」
ここにいる者たちはそういう悩みを抱えたことがないだろうが、あちらにいる花たちはおそらくそんな経験があるだろう。
一花のように教育を受けていないというだけでなく、絢斗さんたちのように桜守出身者は、恋人からそういうことを学ぶことも多いと聞く。
ある意味、直純くんの年から自分の身体の変化について知っておくのは、榎木くんのいうとおり必要なことなのかもしれない。
「一花くんは特に何も知らなかっただろう? 貴船くんはあの子にもう教えたのか?」
蓮見さんから質問を投げかけられて、私は素直に頷いた。
「ええ。それこそ少し前に一緒に温泉に初めて入った時に教えましたよ」
「そうなんですか?」
驚く昇くんに聞かせるように私はあの時のことを話した。
「一花は、怪我をしてずっと風呂には入れなかったから、ようやく入浴の許可が出たのが温泉旅行の前でね。一人では入れないから私が入れたわけだが、私よりも先に一花の方が反応してね。自分の身体の変化にかなり怯えていたから、これが当たり前だと言って説明したんだよ。その時に処理の仕方も教えたが、一人ではできないというからそれからはたまに私が処理をしてあげるようになったよ」
「あの、それで貴船さんは興奮しないんですか?」
「それがな、一花に初めて説明した時に、好きな人に触れられるとみんな反応するものだと教えたから、一花の処理を終わらせた後は、私のもしてくれるようになったんだよ」
「ははっ。それはいい。さすがだな、貴船くん」
昇くんの質問に答えると、蓮見さんからお褒めの言葉をいただいた。
「ええ、その方が一花も喜びますしね。私も嬉しいですから一石二鳥ですよ。磯山先生、医師の立場から話しますが、反応したり処理の仕方を学ぶのは14歳なら早すぎることはないでしょうし、これがいい機会だと思って、学びの場にさせるのはいかがでしょう?」
「うーん、そうだな。征哉くんのように話をすれば、昇が反応したとしても困ることにはならないか……」
「ええ。それこそ、直純くんは安心するんじゃないですかね?」
「うちの伊月も、一花さんや直純くんと同じく何の知識ももっていませんでしたから、最初は私のをみて驚いてましたけど、反応するのが正しいと説明したら喜んでましたよ」
甲斐さんの言葉に、安城くんも榎木くんも大きく頷いた。
きっと同じ経験があるのだろうな。
「敬介、どうした?」
突然の蓮見さんの声に振り向くと、浅香さんがなんでもないと言いながら顔を赤らめているのが見える。
明らかに何かあったそぶりだが、蓮見さんは特に追及はしなかった。
きっと二人になった時に聞くつもりなのだろう。
「まぁとにかく、今日は余計なことは考えずに温泉を楽しむといい。初めてならきっと喜ぶよ。ただし、暴走だけはしないように」
そういうと、昇くんは大きく頷いていた。
「征哉くん、昇の相談ってなんだ?」
「はい。今日はこの後、先生方はうちの保養所で宿泊なさるでしょう? 昇くんは直純くんのお風呂をどうしようかと悩んでいて……」
「ああ、そうか……。それがあったな」
磯山先生の表情が気になったのか、隣に座っていた蓮見さんが声をかけてきた。
「風呂をどうするとはどういう意味だろう?」
「昇くんと、あそこにいるピンクベージュのドレスを着たあの子はつい最近恋人同士になったばかりなんですが、あの子はまだ14歳なので、その性的なことは何も知らないというか……まだ教えるのは早いというか……」
もうすっかり父親として直純くんをみている磯山先生の前でなんと言えばいいのか言葉に詰まったが、
「ああ。なるほど、そういうことですか」
と榎木くんがすぐに声を上げてくれた。
「君は高校生かな?」
「は、はい。そうです」
「高校生で恋人と一緒に風呂に入れば、どうしたって反応はするだろうし、かといってせっかくの温泉に一人で入らせるのは忍びない、けれど大浴場には連れて行けないというところかな?」
「そうなんです。俺、もうどうしたらいいのか……」
この八方塞がりな状況に困っている間にもその時間は刻一刻と迫っている。
昇くんにとってはここが最後の頼みの綱と言ったところだろうか。
「そんなの、別に悩む必要はないんじゃないかな?」
「えっ?」
突然聞こえてきた声に振り向けば、史紀さんの恋人、安城くんが笑顔でこちらをみていた。
「でも、そういうわけには……」
「あの子のことは今、志摩から聞いたから君がいろいろ考えてしまうのもわかるけど、あの子も14歳ならそろそろそういう身体の変化も教えていかないといけない時期だし、それを君が教えられるならそれこそ良いことなんじゃないかなと思うけどな」
「私もそう思いますよ」
安城くんの意見に大きく頷いたのは、榎木くんだった。
「私はたまに中学や高校の学校健診の手伝いを頼まれて参加することがあるんですが、その時に、何か悩んでいることとか困っていることはないかと聞くと、朝起きて硬くなっていたり、白い粘液が出てきたりするから自分が病気じゃないかと不安でたまらないけど病院に行くのもどこに行けばいいか悩んでいるという相談をされたりするんです。そのたびに、それは病気じゃないから大丈夫だと話はするんですけど、そういう相談をする相手がいないのはこの時期の子にとっては死活問題なんですよね。病気じゃないけど、時々処理した方がいいと話をしてもそのやり方がわからないと言われるんですから、前もって教えてあげるのは必要なことだと思いますよ」
ここにいる者たちはそういう悩みを抱えたことがないだろうが、あちらにいる花たちはおそらくそんな経験があるだろう。
一花のように教育を受けていないというだけでなく、絢斗さんたちのように桜守出身者は、恋人からそういうことを学ぶことも多いと聞く。
ある意味、直純くんの年から自分の身体の変化について知っておくのは、榎木くんのいうとおり必要なことなのかもしれない。
「一花くんは特に何も知らなかっただろう? 貴船くんはあの子にもう教えたのか?」
蓮見さんから質問を投げかけられて、私は素直に頷いた。
「ええ。それこそ少し前に一緒に温泉に初めて入った時に教えましたよ」
「そうなんですか?」
驚く昇くんに聞かせるように私はあの時のことを話した。
「一花は、怪我をしてずっと風呂には入れなかったから、ようやく入浴の許可が出たのが温泉旅行の前でね。一人では入れないから私が入れたわけだが、私よりも先に一花の方が反応してね。自分の身体の変化にかなり怯えていたから、これが当たり前だと言って説明したんだよ。その時に処理の仕方も教えたが、一人ではできないというからそれからはたまに私が処理をしてあげるようになったよ」
「あの、それで貴船さんは興奮しないんですか?」
「それがな、一花に初めて説明した時に、好きな人に触れられるとみんな反応するものだと教えたから、一花の処理を終わらせた後は、私のもしてくれるようになったんだよ」
「ははっ。それはいい。さすがだな、貴船くん」
昇くんの質問に答えると、蓮見さんからお褒めの言葉をいただいた。
「ええ、その方が一花も喜びますしね。私も嬉しいですから一石二鳥ですよ。磯山先生、医師の立場から話しますが、反応したり処理の仕方を学ぶのは14歳なら早すぎることはないでしょうし、これがいい機会だと思って、学びの場にさせるのはいかがでしょう?」
「うーん、そうだな。征哉くんのように話をすれば、昇が反応したとしても困ることにはならないか……」
「ええ。それこそ、直純くんは安心するんじゃないですかね?」
「うちの伊月も、一花さんや直純くんと同じく何の知識ももっていませんでしたから、最初は私のをみて驚いてましたけど、反応するのが正しいと説明したら喜んでましたよ」
甲斐さんの言葉に、安城くんも榎木くんも大きく頷いた。
きっと同じ経験があるのだろうな。
「敬介、どうした?」
突然の蓮見さんの声に振り向くと、浅香さんがなんでもないと言いながら顔を赤らめているのが見える。
明らかに何かあったそぶりだが、蓮見さんは特に追及はしなかった。
きっと二人になった時に聞くつもりなのだろう。
「まぁとにかく、今日は余計なことは考えずに温泉を楽しむといい。初めてならきっと喜ぶよ。ただし、暴走だけはしないように」
そういうと、昇くんは大きく頷いていた。
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