歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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可愛い姿

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「私は一花のことを一日も忘れたことはなかった。このランドセルは一花が触れてくれるこの時をずっと待っていたんだよ。私は一花がこうして胸に抱きしめてくれるだけで嬉しいよ」

「お父さん……ありがとう。僕、このランドセル……大切にします!」

「ああ、そうしておくれ」

ランドセルを抱いた一花に寄り添いながら涙を流すお義父さんをみながら、私はある提案を持ちかけた。

「このまま、このランドセルを保管するのもそれはそれで素晴らしいことだと思うのですが、これをリメイクするのはどうでしょう?」

「りめいく? 征哉さん、それってなんですか?」

「このランドセルの革を使って、他のものに作り変えることだよ。ほら、母さんが昔作っていたマフラーを解いてゾウのセイとチカの可愛い帽子とセーターに作り直していただろう?」

「あっ!」

私がプレゼントした一花のお気に入りのゾウのぬいぐるみと、saraさんに会いにいった時に対となるぬいぐるみだからと贈られたゾウ――温泉から帰宅後に一花が悩みに悩んでチカと名付けた――に、編み物を教える傍ら、母がぬいぐるみたち用の帽子とセーターを編むのに、昔のマフラーを解いて作っていたことを思い出して伝えた。

「あんなふうに材料は一緒で、違うものに新たに作り変えるのをリメイクというんだ。このランドセルはとても可愛らしいけれど、大人になった一花が使うのは難しいだろう? でも物は使ってこそ価値があると思うんだ。だから、このランドセルを使って、一花が使えるような小物に……そうだな。一花だったら、たとえばこれから勉強するときに使えるペンケースに作り変えるのもいいと思うよ」

バッグや財布、キーケースにリメイクすることが多いようだが、どれも一花が使う物ではなさそうだ。
一花に財布を持たせることはないし、元々荷物も持たない子だ。

「ああ、スマホのケースや、スマホを入れるバッグもいいね」

ペンケースやスマホ関連のものなら、一花でも手元に置いて使えるだろう。

「なるほど、それはいいアイディアだな。一花、。どう思う?」

「僕……このまま置いておきたい気持ちと、せっかくなら大切に使いたい気持ちがあって……あの、これをぬいぐるみの僕が背負えるくらいの小さなランドセルにして、残りで作れるものを作るっていうのは難しいですか? 僕、ランドセルを背負った姿をお父さんにもお母さんにも見せたいです……」

「――っ、一花っ!!」

一花の言葉に、お義父さんは再度涙を流して一花を抱きしめる。

「ありがとう、一花。嬉しいよ、一花がそこまでこのランドセルを大切に思ってくれて……」

「だって、お父さんが僕のために選んでくれたんですよ。それが嬉しいから……」

「じゃあ、一花の願い通りにできる工房を探しておくよ」

「はい。征哉さん、ありがとうございます。あの……それまではこのランドセル、近くに置いていていいですか?」

「ああ、もちろんだよ。これは一花のものだからな」

お義父さんがそういうと、一花は嬉しそうにランドセルを胸に強く抱きしめた。

「そうだ! 少し小さいかもしれないが、ベルトを伸ばしたら背負うことはできるかもしれないな。一花、やってみるか?」

「はい!! お願いします」

嬉しそうに差し出したランドセルの肩のベルトを長めに調節して背負わせてやると、やはり少し小さかったもののランドセルは綺麗に一花の背中におさまった。

「――っ、一花っ! よく似合うよ。なぁ、征哉くん」

「はい。本当ですね。一花。こっち向いて」

この姿から小学生の頃の一花を想像する。
ああ、本当に可愛い。

あまりにも可愛すぎて写真を撮ると、お義父さんも隣でパシャパシャと写真を撮り出した。

いろんな角度からランドセルを背負った一花の写真を撮りまくりながら、

「征哉くん、あっちに座らせてみようか」
「征哉くん、私も一緒に撮ってくれないか?」

というお義父さんの要望にも答えた。

「ああ、一花がランドセルを背負った姿を見たいという私の夢が叶ったよ。ありがとう」

「僕もすごく嬉しいです」

一花はランドセルを下ろしてからもずっとそれを離すことなく抱きしめていた。

よほど自分のランドセルは嬉しいのだろう。
小学生にとってランドセルは自分の宝物のようだからな。

一花がこんなに喜んでいるところを見ると、実際はとんでもないものを使わされていたような気がする。
それでも文句言わずに使っていたのだろうな……。

昔の辛い記憶を消すことはできないが、これからたっぷりと上書きしてやろう。
それが一花の生涯のパートナーとして私がやれることだ。
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