歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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ご機嫌な音

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すみません。予約時間間違えてました(汗)

  *   *   *


<side一花>

あの素敵なアプリのおかげで、昼間征哉さんがいない時間も征哉さんの声が聞けるようになった。
僕の場合は、征哉さんが仕事に出かけて帰ってくるまでの予定が決まっているから、アラームを設定するのもすごく楽だ。
予定の始まりと終わりには征哉さんの声が聞こえる。
しかも、白衣姿の征哉さんがみられるなんて!
なんて素敵なアプリなんだろう。

夕食までの間に、明日からのアラームをセットしていく。
征哉さんと未知子お母さんがスマホの使い方を教えてくれたおかげでだいぶ使いこなせるようになってきた。

あっという間にアラームをセットし終わると、あとはその時間が来るのが楽しみでたまらない。

ウキウキしながら、顔を上げると視線の先にグリのケージが見える。

「あっ、そうだ」

「んっ? 一花。どうした?」

「あっ、ごめんなさい。今日のグリの写真を撮るのを忘れてたなと思い出して声が出ちゃいました」

「ああ、そうか。じゃあ、私が連れて行こう」

征哉さんはスマホを置いて、僕を抱きあげてグリのサークルの中に座らせてくれた。

近くに置いていたグリの好きな牧草を振りながら

「グリーっ」

と声をかけると、嬉しそうに僕のところに駆けてきた。

「ふふっ。可愛い」

小さな口を一生懸命動かして食べているグリの背中を撫でながら、

「ねぇ。グリ聞いて。あのね、今日お出かけしたんだ。新しいお友達が増えたんだよ。佳史さんって言ってね、この前僕を診察に来てくれたあの先生の恋人さんなんだ。美味しそうにデザートを食べる人で、浅香さんと同じくらい優しい目をしてたよ。それでね、佳史さんとおしゃべりしながら思ったんだ。いつか、浅香さんも敬介さんって呼べるようになったらいいなって。でも、僕から呼んでいいですかって聞くのはドキドキするよ。グリ……なんて言ってお願いしたらいいかなぁ?」

といつものようにグリに話しかけていると、

ーふふっ。名前で呼んでくれたら嬉しいよ

と突然浅香さんの声が聞こえてきた。

「えっ?」

びっくりして声の聞こえた先を見ると、征哉さんがスマホを僕に向けているのが見えた。

「征哉さん、それ……」

「一花をそこに座らせて戻ってきたらちょうど浅香さんから電話が来ていたんだ。ビデオ通話だったから、一花とグリが戯れる姿を見てもらっていたんだよ」

「えっ……じゃあ、さっきの独り言聞かれてたんですか?」

うわー、恥ずかしい。一気に顔が赤くなっていくのがわかる。

ーふふっ。ごめんね。可愛くて盗み聞きしてしまったよ。

「あっ、いえ。僕が勝手に喋ってたので浅香さんが悪いわけではないです……恥ずかしいですけど」

「一花。せっかくだから自分からもう一度頼んでごらん」

そう言いながら、征哉さんが僕の元にスマホを持ってきてくれた。

スマホを手渡され、画面を見てみると画面越しでもすごく優しい表情をしている浅香さんの姿と、すぐ後ろに蓮見さんの姿も見える。

その姿がものすごく幸せそうに見えて、自然と笑顔が漏れた。

「一花くん」

手を振ってくれる浅香さんに、僕も手を振って応えると浅香さんが笑ってくれる。
ああ、本当に優しい人だ。

「あの、僕……今日、すごく楽しくて……それで、これからもずっと仲良くして欲しくて……だから、浅香さんのこと、名前で呼ばせてもらっても、いいですか?」

「ふふっ。もちろんだよ。名前の方が距離が縮まった感じがして嬉しいね。実は、今日……有原くんを羨ましいと思っていたんだ」

「えっ? 羨ましいってどうしてですか?」

「最初から一花くんに名前で呼ばれただろう? あの時、私も名前で呼んでほしいって頼みたかったんだ。だから。一花くんの方から言ってくれて嬉しいよ」

「あさ、敬介さん……」

「ふふ。やっぱり名前で呼ばれる方がいいね」

そう言ってくれた敬介さんは、本当に嬉しそうに見えた。
きっと僕はそれ以上に嬉しい表情を見せていたに違いない。

「わっ、グリっ!」

敬介さんと画面越しに見つめあっていると、スマホが気になったのか突然グリが僕の胸に飛び込んできて、ふんふんと鼻をスマホ画面に擦り付け始めた。

もしかしたら、久しぶりにみる敬介さんの姿に懐かしさを覚えたのかもしれない。
よっほど嬉しいのか、ブウブウと鼻を鳴らしている。

最初はこの鳴き声にびっくりしたけれど、ウサギさんは機嫌がいい時に鼻を鳴らすと敬介さんに教えてもらったんだ。

いつも以上にご機嫌に見えるから、やっぱり敬介さんの顔が見えてグリも嬉しいんだろうな。

ー敬介さんの姿が見えて、グリがすごく喜んでます。あの、これから時々こうやって顔を見ておしゃべりしてもいいですか?

ーああ、もちろんだよ。時間がある時はぜひやろうね。

ーはい。グリ、良かったね。また敬介さんの顔が見れるよ。

グリは僕の言葉を理解したように、ずっとブウブウと鼻を鳴らしていた。
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