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「あっ、これ……」
一花が見せてくれた画面には、私にそっくりなアイコンが出ているが、驚いたのはその衣装。
「私にそっくりで嬉しいよ。でもなんで、白衣なんだ?」
「征哉さんもお医者さんだって言っていたから、一度くらい見てみたいなって思ったんです。今日、普段着の榎木先生を見たから余計にそう感じちゃったのかも……」
「ああ、なるほど。そういうことか。一花が医者の私がいいなら、いつだって医者として働いてもいいよ」
「えっ……」
私の言葉に一花は驚きの表情を見せた。
でもその気持ちに嘘偽りはない。
「私はいつだって一花が望むことはなんでも叶えたいと思っているんだよ」
「征哉さん……嬉しいです。でも……」
「でも……?」
「お医者さんな征哉さんは、僕だけがいいです」
「――っ!! 一花」
「ごめんなさい、僕……わがままですね」
「そんなことない。私は一花がそう思ってくれたのが嬉しいよ」
一花が私を独占したいと言ってくれた。
それがどれだけ私を喜ばせるか知らないだろう。
一花への想いが溢れて抱きしめると、一花もギュッと私に抱きついてくれる。
ああ、私は一花にこんなにも愛されているのだな。
「ねぇ、征哉さん。それで、このアプリはどうやって使うんですか?」
「あ、ああ。そうだったな」
一花が可愛すぎてつい話が脱線してしまうが、ここからがこのアプリの大事なところだ。
「このアプリの録音ボタンを押して、一花の口に私のスマホを近づけてしばらく普通に会話をするんだ。そうしたら、このアプリが一花の声を認識して記憶してくれるんだよ」
「えっ? その文章を記憶するんじゃなくて僕の声を覚えてくれるんですか?」
「ああ、そうだ。だから記憶が完了したら、言ってほしい言葉を入力するだけで、一花の声を拾い集めて文章にしてくれるんだよ。説明するよりまずやってみようか。その方がわかりやすいだろう」
お互いにスマホを交換して、口に近づけながら会話をしていく。
初めは緊張しているようだったけれど、今日食べていたケーキの話や浅香さんと有原くんの話を振ると、途端に饒舌になり楽しそうに話してくれた。
「――それで、僕たちが話をしている間は、征哉さんたちは何を話していたんですか?」
「んっ? ああ、そうだな。私たちは三人とも同じ大学を卒業した接点があったから、その話をしていたかな」
「そうなんですね。同じ学校なんて楽しそう!」
まぁ、蓮見さんとは年齢が離れているから同じ時を過ごしてはいないが、二学年下だった有原くんのことはよく知っている。
当時医学部に通っていた榎木くんは私の直属の後輩だったし、司法試験を受けるために聴講していた法学部には有原くんが後輩にいたからな。
あの二人は入学した時からあまりの仲の良さに話題になっていたし、榎木くんが有原くんのところに足繁く通っていたから私も二人の姿はよくみていた。
男同士だということをあまり気にする様子もなく、堂々と一緒に過ごし幸せな様子を見せつけられて、羨ましいと思ったことは一度や二度ではない。
八学年上の蓮見さんは経済学部卒業で私とは直接の関わりはないが、私の卒業後に、蓮見さんの三学年後輩になる法学部の安慶名さんと一緒に大学で時々講義をなさっていたから、当時学生だった榎木くんは、有原くんと一緒にその講義に参加しよく覚えていたようだ。
「年は離れていても同じ学校を卒業すると知っていることで盛り上がれるものだよ」
などど、昔の思い出を一花に話していると、スマホから
<完了しました>
という音声が聞こえた。
「征哉さん、終わったみたいです」
「ああ、そうだな。そうしたら、ここに私の声で言ってほしいことを入力してごらん」
そう言って、一花にスマホを渡し、一花からもスマホを受け取った。
「えーっと、何にしようかな……。やっぱりこれかな」
嬉しそうに悩みながら入力していく一花を微笑ましく思いながら、私も一花に言ってほしいことを入力していく。
「できました!」
「よし、じゃあ再生ボタンを押してみて」
「はーい」
一花が嬉しそうに画面に触れると、
「一花、休憩だよ。リハビリお疲れさま」
と甘い私の声が響いた。
「わぁー、征哉さんだ!」
喜ぶ一花の隣で私は、驚きを隠しきれなかった。
だって、先ほどは普通に会話をしていただけであんなふうに甘い声は出していなかった気がするのだが……。
いや、これが倉橋社長のすごいところなのだろう。
このアプリがそこまでを認識して、文章に合わせて声のトーンを変えてくれるに違いない。
とすれば、一花の声でいろんなことを言わせられるというわけか……。
まずい、顔がニヤける。
もちろん、一花本人に言ってもらうわけではないのはわかっているが、仕事で離れている時間に疲れた私を癒してもらうには十分だ。
「これなら、何をしてても気づけそうです!! 征哉さんも僕の声に気づけそうですか?」
「あ、ああ。もちろんだよ。私も仕事中に一花の声で休憩だと教えてもらえたらすぐに気づくし、癒されるよ」
「ふふっ。よかった」
ああ、もう一花が可愛すぎるな。
蓮見さんにはまたいいものを教えてもらった。
蓮見さんと、倉橋社長には何かお礼をしたいものだな。
一花が見せてくれた画面には、私にそっくりなアイコンが出ているが、驚いたのはその衣装。
「私にそっくりで嬉しいよ。でもなんで、白衣なんだ?」
「征哉さんもお医者さんだって言っていたから、一度くらい見てみたいなって思ったんです。今日、普段着の榎木先生を見たから余計にそう感じちゃったのかも……」
「ああ、なるほど。そういうことか。一花が医者の私がいいなら、いつだって医者として働いてもいいよ」
「えっ……」
私の言葉に一花は驚きの表情を見せた。
でもその気持ちに嘘偽りはない。
「私はいつだって一花が望むことはなんでも叶えたいと思っているんだよ」
「征哉さん……嬉しいです。でも……」
「でも……?」
「お医者さんな征哉さんは、僕だけがいいです」
「――っ!! 一花」
「ごめんなさい、僕……わがままですね」
「そんなことない。私は一花がそう思ってくれたのが嬉しいよ」
一花が私を独占したいと言ってくれた。
それがどれだけ私を喜ばせるか知らないだろう。
一花への想いが溢れて抱きしめると、一花もギュッと私に抱きついてくれる。
ああ、私は一花にこんなにも愛されているのだな。
「ねぇ、征哉さん。それで、このアプリはどうやって使うんですか?」
「あ、ああ。そうだったな」
一花が可愛すぎてつい話が脱線してしまうが、ここからがこのアプリの大事なところだ。
「このアプリの録音ボタンを押して、一花の口に私のスマホを近づけてしばらく普通に会話をするんだ。そうしたら、このアプリが一花の声を認識して記憶してくれるんだよ」
「えっ? その文章を記憶するんじゃなくて僕の声を覚えてくれるんですか?」
「ああ、そうだ。だから記憶が完了したら、言ってほしい言葉を入力するだけで、一花の声を拾い集めて文章にしてくれるんだよ。説明するよりまずやってみようか。その方がわかりやすいだろう」
お互いにスマホを交換して、口に近づけながら会話をしていく。
初めは緊張しているようだったけれど、今日食べていたケーキの話や浅香さんと有原くんの話を振ると、途端に饒舌になり楽しそうに話してくれた。
「――それで、僕たちが話をしている間は、征哉さんたちは何を話していたんですか?」
「んっ? ああ、そうだな。私たちは三人とも同じ大学を卒業した接点があったから、その話をしていたかな」
「そうなんですね。同じ学校なんて楽しそう!」
まぁ、蓮見さんとは年齢が離れているから同じ時を過ごしてはいないが、二学年下だった有原くんのことはよく知っている。
当時医学部に通っていた榎木くんは私の直属の後輩だったし、司法試験を受けるために聴講していた法学部には有原くんが後輩にいたからな。
あの二人は入学した時からあまりの仲の良さに話題になっていたし、榎木くんが有原くんのところに足繁く通っていたから私も二人の姿はよくみていた。
男同士だということをあまり気にする様子もなく、堂々と一緒に過ごし幸せな様子を見せつけられて、羨ましいと思ったことは一度や二度ではない。
八学年上の蓮見さんは経済学部卒業で私とは直接の関わりはないが、私の卒業後に、蓮見さんの三学年後輩になる法学部の安慶名さんと一緒に大学で時々講義をなさっていたから、当時学生だった榎木くんは、有原くんと一緒にその講義に参加しよく覚えていたようだ。
「年は離れていても同じ学校を卒業すると知っていることで盛り上がれるものだよ」
などど、昔の思い出を一花に話していると、スマホから
<完了しました>
という音声が聞こえた。
「征哉さん、終わったみたいです」
「ああ、そうだな。そうしたら、ここに私の声で言ってほしいことを入力してごらん」
そう言って、一花にスマホを渡し、一花からもスマホを受け取った。
「えーっと、何にしようかな……。やっぱりこれかな」
嬉しそうに悩みながら入力していく一花を微笑ましく思いながら、私も一花に言ってほしいことを入力していく。
「できました!」
「よし、じゃあ再生ボタンを押してみて」
「はーい」
一花が嬉しそうに画面に触れると、
「一花、休憩だよ。リハビリお疲れさま」
と甘い私の声が響いた。
「わぁー、征哉さんだ!」
喜ぶ一花の隣で私は、驚きを隠しきれなかった。
だって、先ほどは普通に会話をしていただけであんなふうに甘い声は出していなかった気がするのだが……。
いや、これが倉橋社長のすごいところなのだろう。
このアプリがそこまでを認識して、文章に合わせて声のトーンを変えてくれるに違いない。
とすれば、一花の声でいろんなことを言わせられるというわけか……。
まずい、顔がニヤける。
もちろん、一花本人に言ってもらうわけではないのはわかっているが、仕事で離れている時間に疲れた私を癒してもらうには十分だ。
「これなら、何をしてても気づけそうです!! 征哉さんも僕の声に気づけそうですか?」
「あ、ああ。もちろんだよ。私も仕事中に一花の声で休憩だと教えてもらえたらすぐに気づくし、癒されるよ」
「ふふっ。よかった」
ああ、もう一花が可愛すぎるな。
蓮見さんにはまたいいものを教えてもらった。
蓮見さんと、倉橋社長には何かお礼をしたいものだな。
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