歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

文字の大きさ
28 / 313

母の優しさ

しおりを挟む
「じゃあ、何かあれば連絡してくれ」

「はい。承知しました」

後のことを志摩くんに任せて、洋菓子店に向かう。

ひかるにお土産のプリンを買っていきたいと話をしたら、志摩くんがここを勧めてくれた。
甘いもの好きな彼のおすすめなら間違いはないだろう。

なんといってもここはプリン専門店。
ひかると出会わずにいたら一生入ることはなかっただろう店だが、専門店というだけあって私の前に数人並んでいたが品揃えは多く、ゆっくりと選べそうだ。

ショーケースの中にはいろいろなプリンが並んでいる。
小さな瓶の中に入ったトロトロとした柔らかそうなプリン。
そして、昔ながらのと書かれているのは、先日シェフが作ってくれたようなあの硬めのプリンだろう。
スポンジケーキの上にプリンやフルーツが載っているプリンアラモードもひかるは好きそうだ。
牛乳プリンや黒糖プリンなんてものもある。

どれにしようかと悩んだが、いろんな味を食べ比べるのも楽しいかもしれない。
気に入ればまた買いに来たらいい。

とりあえず今日は柔らかいプリンと硬めのプリンそしてプリンアラモードを母の分と2個ずつ買うことにした。
せっかくなら全種類買ってやりたいが、ひかるはまだそこまでたくさん食べられないだろうからな。

自宅に帰り、プリンの入った箱を持ったままひかるがいる部屋に向かうと、ひかるは気持ちよさそうに眠っていた。

「今頃寝てるのか?」

「ええ。今日はお客さんが来るでしょう? だから少し早めに昼食をとらせて寝かせたの。寝ることはひかるくんの身体にとって重要だからね」

「ああ、そうだな。だがちょっとがっかりしたな」

「えっ? 何かあったの?」

「いや、プリンを買ってきたんだ。ひかるの喜ぶ顔が見られると思って帰ってきたから……」

「ふふっ。あなたもすっかり変わったわね」

母が面白いものでも見たように私に笑いかける。

「何が?」

「わからない? あなたがこんなに感情を表すことなんてなかったでしょう? 玄哉とうやさんが亡くなってからは特にね。でもここ最近はあなたのいろんな表情を見られて嬉しいのよ」

「ああ、志摩くんにも同じようなことを言われたよ。ひかると出会ってから私に感情が見えるようになったって」

「あら、さすが志摩さんね。あなたのことをよく見てくれているわ。もういい加減、自分でもわかっているんでしょう?」

そう言われてドキッとする。
母は私の気持ちに気づいているんだ。
なら、隠し通すなんてできるはずがないな。

「母さんには敵わないな。ああ、わかってるよ。自分でも認識した。私にとってひかるが大事な存在だって……」

「よかったわ。あなたにそんな相手ができて」

ひかるがまだ成人になったばかりの一回り以上も年下で、しかも男だってことを気にするようなそぶりも全く見せず、心から喜んでくれているような母の笑顔に救われる。

「母さんはそれでいいのか? そもそもひかるに私の思いが伝わるかもわからないし、もしうまくいったとしても子どもは一生望めないぞ」

「ふふっ。親はね、子どもが幸せになってくれることが嬉しいのよ。あなたが会社のために好きでもない人と結婚して子どもを作ってもそれは幸せではないでしょう? 玄哉さんだってきっと同じことを言うはずよ。私は征哉が本気で好きになれる人ができただけで幸せよ。たとえそれが報われなくてもこの気持ちは無駄なことではないわ」

「母さん……」

「今はまだひかるくんは自分の置かれた環境に馴染むことに必死で、あなたに対する思いはもちろん、恋愛なんてことを考えられないかもしれないけど、それでも変わらずそばにいてやれる自信がある?」

「ああ、それはもちろん!」

「なら、私は何も言わないわ。私は中立的な立場で見守らせてもらうから」

「母さん、ありがとう」

「ふふっ。今の笑顔を玄哉さんに見せてあげたいわ。ひかるくん、もう少ししたら起きるはずだから、それまでついててあげて」

そう言うと、母は部屋を出て行った。

部屋の中にある冷蔵庫にプリンをしまい、私はジャケットを脱いでひかるの横に体を滑らせ、ひかるの首の下にそっと腕を差し込んだ。

するとすぐにひかるが私の方に顔を向けたと思ったら、嬉しそうに微笑む。

夢の中でも私を認識してくれているのか。
ああ、本当に愛おしい。

しばらくひかるの寝顔を堪能していると、ゆっくりとひかるの瞼が開いていく。

「ふふっ。ひかる、おはよう」

「んっ……せい、やさん……?」

まだ寝ぼけているようだ。
私がなぜいるのかわかっていないのだろうな。
そんなところも可愛い。

「ああ、私だ。よく眠っていたな」

「あれ、どうして?」

「昼に帰ってくると言ったろう? プリンも買ってきたよ」

「ぷ、りん……あっ!!」

「ふふっ。私よりプリンを待っていたか?」

「ちが――っ!」

「冗談だよ。食べられるなら、プリンを食べようか?」

恥ずかしそうに小さく頷くひかるを一度ギュッと抱きしめてから、冷蔵庫にプリンの箱を取りに行く。

そして三種類のプリンを並べて説明してあげると、ひかるは笑顔で悩み始めた。

ひかるが選んだのは小さな瓶に入ったトロトロとした柔らかめのプリン。

それを小さなスプーンで掬って口に運ぶと、目を丸くして驚いた。

「わぁー! これ、すっごく美味しいです。あっという間に消えてっちゃうから勿体ないですね」

「ははっ。大丈夫、気に入ったならまたいつでも買ってきてあげるよ」

ひかるが喜ぶなら何度でも食べさせるよ。
ああ、ひかるの笑顔が見られて幸せだな。


そうこうしている間にあっという間に約束の時間。

「旦那さま。上田先生とお連れさまがお越しになりました」

「ああ、通してくれ」

私の言葉にひかるの身体が少し震える。

「大丈夫か?」

「あ、大丈夫です……」

ひかるを轢いた運転手がトラウマになっているかと思ったが、ひかるは感謝しているとさえ言っていた。
今身体が震えているのはきっと、いつも大人に大声で恫喝されていたから知らない大人に会うことに緊張しているのかもしれない。

「心配しなくていい。私がそばについているから」

そう言うと、ひかるがホッとしたように見えて私も安堵した。
しおりを挟む
感想 555

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

処理中です...