上 下
11 / 21

〜新しい家族との出会い〜 side一帆 (真守の兄) <中編>

しおりを挟む
前後編の予定でしたが、長くなったので前中後編に分けます。
楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *



「えっ……ここが、お父さんのお家ですか?」

今までお母さんと住んでいた家とはまるで違う、お屋敷のような大きな家にただただ驚きしかない。

「ああ。荷物は後で入れるから、妻を……一帆の母親になる人を紹介しよう」

「は、はい。あの、お母さんも一緒に連れて行っていいですか?」

ずっと抱きしめて連れてきたお母さんの骨壷を車に置きっぱなしにはしたくなくてそういうと、

「ああ。和室に夏帆の後飾り祭壇を、雪乃が用意してくれているから夏帆も一緒で構わないよ」

という言葉が返ってきた。

まさか、もう用意してくれていたなんて思わなかった。
お父さんも、それにお父さんの奥さんもすごく優しい人だ。

「一帆が持つには重いから私が連れて行こう。一帆、さぁ、おいで」

お母さんの骨壷を片手で優しく抱きながら、僕の背中にも大きな手を優しく当ててくれて、大きな玄関に向かう。
ものすごく緊張するけど、僕にはお母さんがついているから大丈夫だ。

重厚な扉が開かれて、

「雪乃、帰ったよ。一帆を連れてきた」

とお父さんが声をかけると、奥から優しそうな人がやってきた。

「雪乃、走ってはいけないよ」

「大丈夫ですよ」

その時の笑顔が、お母さんを思い出させるような優しい笑顔で、僕は思わず涙を流してしまった。

「一帆っ」
「一帆くん!」

「うっ、ぐすっ」

「ごめんなさい、何か怖がらせてしまったかしら?」

「ちが……っ、おか、あさん、みたい、で……ぐすっ」

「一帆……そうか、夏帆のことを思い出したんだな」

お父さんの大きな身体で包み込むように抱きしめられて、僕は頷くことしかできなかった。

「一帆くん、これからは私をお母さんだと思ってくれていいのよ。私も一帆くんを本当の息子だと思うわ」

「でも……」

チラリとお父さんが抱いているお母さんの骨壷に視線を向けると、

「そうね。一帆くんにとってはお母さんは、一帆くんを産んで今まで育ててくれた夏帆さんだけよね。その気持ちはずっと持っていてくれて構わないわ。あのね、今私のお腹には赤ちゃんがいるの」

と優しくお腹に手を当てながら教えてくれた。

「えっ、赤ちゃん……」

「ええ、そう。一帆くん、あなたの弟か、妹になる子よ」

「――っ、僕の弟か、妹……」

「そう。だから生まれてくるその子と、そして夏帆さんも一緒に新しい家族になりましょう。どちらかなんて選ばなくていいの。みんなで大きな家族になりましょう。この子もきっと頼りになるお兄ちゃんができて喜んでるわ」

「――っ、うっ、ぐすっ、はい。かぞくに、なりたい、です……」

「よかった……」

「さぁ、じゃあ夏帆を弔ってあげよう」

お父さんはそう言って僕たちを和室へと連れて行ってくれた。

お母さんの祭壇以外はほとんど何も置かれていない部屋だけど、なぜだろう。
すごく落ち着く。
ここならお母さんもゆっくり休めそうだ。

僕が持っていた古ぼけた写真を写真たてに飾ってくれて、白い布がかけられた祭壇にお母さんの骨壷と共に並べる。

ようやく落ち着いた気がして、僕はふっと意識を失った。


目を覚ますと、広いベッドに寝かされていた。

「ここ……」

「ああ、目が覚めた?」

「あの、僕……」

「お母さんが亡くなってからずっと一人で気が張っていたのね。よく眠れていなかったんじゃない?」

「はい……」

「気がつかなくてごめんなさいね」

「そんなこと……っ。僕、お父さんが来てくれてすごく安心したんです」

「それならよかった。あのね、私……子どもが生まれたら、ママと呼んでもらうのが夢だったの。お腹の子どもにはもちろんそう呼んでもらうつもりだけど、赤ちゃんってね……周りから聞こえる言葉で勉強するのよ。だから、一帆くんが私をママだと呼んでくれたら、お腹の赤ちゃんも自然とママと呼ぶようになるはずなのよ。だからね、お母さんは夏帆さんで、私をママと呼ぶのはどうかしら?」

雪乃さんのそれが、僕とお母さんのことを考えて言ってくれたということがよくわかって、僕は嬉しくてたまらなかった。

お母さんが好きになった人はとっても優しい人で、その人が選んだ人もものすごく優しい人だったよ。
そう心の中でお母さんに告げながら、僕はゆっくりと口を開いた。

「ママ……」

「――っ、一帆くん!!」

ギュッと抱きしめてくれる温もりはお母さんと同じくらい優しくて胸があったかくなった。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...