モビッチ****ビッチなモブの摘み食い

月夜の庭

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最弱にして不運のモブがモビッチになるまで

黒猫とデート

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「ふわぁ~っ魚がキラキラしててカッコイイ」


荷物を取られて連れてこられたのは水族館でした。


僕は、目の前の大きな水槽の中で背に光を受けてキラキラと泳ぐ魚達の姿に釘付けだった。


「はははっやっぱり水族館が好きそうな気がしたんだよ。それにしても仕草とか反応が、金魚鉢を見てソワソワしている子猫みたいで、とても愛らしいね」


「バカにしてる?」


ムッとして頬を膨らめて見上げると、長い指で押されて「ぷふっ」と音を立てて萎んでしまう。


「素直に可愛いと思っているんだよ。本当に…………ストライクゾーンのど真ん中を撃ち抜かれた感じだよ。これで顔も好みだったら会社に全力で囲い込んで飼いたいよ」


「会社?僕ってヤバイ会社で飼われちゃうの?」


「いやいや、ヤバイくないからね。モブ専門の派遣会社だから」


「へぇ~っ他のモブ達にも、こうして服買ったり水族館に連れて来たりしてるの?」


「ふふっデートは黒猫ちゃんが初めてかな」


「デ………僕、男だって言ってるのに」


「男だろうと、女であろうと可愛い子は可愛がりたいんだよ。私は男の子でも立つしね」


「立つ?」


「おいおい………ね」


水槽に張り付いていた僕の手を取り歩き出した男性の後ろを?いっぱいの頭で付いて行く。


なんか「可愛い」って言われると不思議と嬉しいし、特別扱いされてるみたいでソワソワしてしまう自分が暗い館内の水族館を鏡のようにして映し出されたモブ顔は、やっぱり目が合わないから上がりかけていたテンションは急降下してしまう。


握ってくれている手は大きくて少し骨ばって、長い脚はゆっくり歩いてくれて………あっ…僕の歩幅に………スピードに合わせてくれているんだ。


お土産コーナーでは大きな鯱のぬいぐるみを持たされると似合うからと買って貰って、夕飯をご馳走してくれると連れて来られた場所は有名な高級ホテルの最上階のレストランでフレンチのコース料理を食べた。


鯱のぬいぐるみは車の中に置いて行け言われて素直に従った。


だって買ってもらった物だしね。


メインを肉か魚か聞かれて「お魚」と即答すれば「聞くまでもなかったね」と笑われて不貞腐れていたけど、僕が好きな白身のお魚の料理が美味しくて夢中になっていた。


そういえば、なんで僕はデートしてるのかな?



デートなのかな?


「この……デート?はいつまで続くの?」


「そうだなぁ」


赤ワインを飲みながら、俯くように考え込む男性の睫毛が伏せられ少し影を作っている。


睫毛って長いと影が出来るんだなぁと関心しているとデザートに大好きなチーズケーキが来たから忘れてしまった。


食事を終えて連れてこられたのは……うん。なんとなく予想はしてた。でも本当に連れて来られるとは思って無かったんだよ。


1人で泊まるには広すぎる絨毯が敷き詰められた部屋にはガラスのローテーブルを囲むように白い革張りのソファセットか設置され、キッチンもないのにガラスのダイニングテーブルがあり上に僕の鞄と買ってもらった洋服が入った紙袋と鯱のぬいぐるみが置かれていて金のドアノブが付いた扉が幾つもある。


嵌め殺しのガラス窓からはネオンで彩られた夜景が一望できる。


まさかのスイートルーム。


「可愛い女の子ならキャーキャー言って喜ぶシュチュエーションなんだろうけど、なんで相手が僕なの?」


後ろから抱き締められると柑橘系の中に爽やかな植物の香りが混じった良い匂いに包まれた気がした。


「顔有りに進化する兆しが出ているモブは全員が童貞で処女なんだよ。個性が出始めでいるモブでも、黒猫ちゃんの可愛い仕草とかオジサンはメロメロにされちゃったよ。優しく気持ち良く処女を頂いて………可愛い顔を一番最初に見たい衝動に駆られてしまったんだ」


「しょ………しょ…………書状?」


「なんかニュアンスが違うのかな?心配しなくてもオジサンが気持ち良くしてあげるからね。黒猫ちゃんは流されやすいタイプなのは見て分かったから、このまま難しく考えずに流されちゃおうか」


驚き過ぎると猫は固まるらしいけど、僕も頭が追い付かなくてガチガチに固まっていると部屋の奥にある広過ぎる風呂に連れ込まれていまう。


白い大理石の壁と床のお風呂の窓からも夜景が見えており、真ん中にある丸いジャグジー見たいな赤いバスタブにはお湯が張ってあって泡風呂になっている。


「僕の秘書は優秀でね」


先回りして僕の荷物を置くと、時間を見計らって風呂に湯を張り、温度から下がりにくい泡風呂にして快適に入浴できるようにセッティングしたのが、あのグレーのスーツの男性なのかも知れない。


「泡風呂って初めて」


パニックだった頭が考えるのを放棄した瞬間に、楽しそうな泡風呂が目に飛び込んで来たから素直に感想を言えば、オジサンは大きな溜息をついて僕の髪の毛を揺らした。


「何も知らない幼い子供にイケナイ事をするみたいな気分だよ」


「痛いのは嫌だけど、僕はモブだから逃げられるとは思ってないよ。なら無駄な抵抗はしないで流れに身を任せる方が楽なんだよ」


「モブ故か」


大きな流れにモブは絶対に逆らえない。


どんなに抵抗しても、どんなに足掻いても、どんなに先回りして回避しようとしても、運命って奴はモブに厳しい。


あっさり殺されるし、簡単に傷付けられるし、軽く排除されてしまう。


いつの間にか俯いていた僕の顎に長い指が触れると、優しく持ち上げられると前髪が目の前から無くなっても光は顔に当たらずオジサンの顔が影を作っていた。


軽く触れるだけのキス。


嫌じゃなかった。



あぁ、僕って男性とキスできる人だったんだなと考えていた。


不快感はなく、目は少し薄い大きな唇を吸い寄せられ、今度は瞼の上に優しく押し付けられた。


チュッ


「ぁ………瞼の感覚がある?……僕にも…目……………あったんだね」


「あるよ。まだ軽く口付けただけだからボンヤリしてるけど、猫みたいに白目が少ないとても大きな緑色の瞳が可愛らしい美人さんだ。はぁ~っ顔もど真ん中ぶち抜かれたよ」


「緑色なんだね」


「こんなに大きな目をしていて美人って狡いよ。睫毛の長さも測らせて欲しいくらい長いね」


瞬きしてみるけど、よく分からん。


「ぐっ。小首を傾げる黒猫ちゃんが激カワ」


「よく分かんないけど、泡風呂に入ってもいいの?」


「そうだね。まずは服を脱いで………身体を洗わせてもらおうかな。ちゃんと隅々までね」


え?洗われちゃうの??
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