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弓弦と結婚しない場合も書いてみた
用務員編②
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年上の用務員さんを追い掛ける私の姿が、まるでご主人様に駆け寄る仔犬の様だと噂になっていました。
私が用務員さんを探していると、すれ違いざまに知らない上級生が居場所を教えてくれたり、目撃情報を先生方も教えてくれました。
「用務員さん」
下級生達が教えてくれて、私は中庭に走って行き、青いツナギの用務員さんに声をかけた。
「飽きないな」
「ふふふっ飽きません」
「………そうか」
なんだかんだ言っても、最後には少し嬉しそうに微笑んで、一緒いてくれるから、また会いたくなる。
「大丈夫か?」
「何がですか?」
「大杉先生だ。あの時………百合を困らせるなと言い争いになって”リリーはオレを好きに決まっている。妻とは別れてもいい”とか勝手な事を言い出したから、腹が立って殴た」
顔を腫らしていたのは、用務員さんに殴られたから。
私の為に話し合ってくれたんだ。
「結果的には逆上させて、百合を襲う切っ掛けを作ってしまって後悔している。まぁ相談した理事長の対応が早くて助かったけどな」
理事長先生からの電話は、偶然じゃなかった。
「俺の目の前で大杉先生を電話で呼び出した理事長に”嫌な予感がする”って言われて焦った。未遂とはいえ怖かっただろ?」
だから走って来てくれた。
同じ棟でも3階の一番奥の理事長室から、1階の保健室まで距離がある。
汗の匂いがする用務員さんに抱き締められた時の事を思い出し、嬉しくて泣きそうだった。
「ゴメンな?対応が遅くなった」
口を開くと泣いてしまいそうなので、首を横に振るのが精一杯だった。
無言で腕に抱きついて誤魔化す私の頭を反対側の手が撫でてくれる。
「もう後悔はしたくなかった。親友だと思っていた男が女子中学生を襲って死なせたって聞いて、それが百合だと知ってショックだった。あの可愛い子が死ぬなんて」
大きな手が、しがみつく私の手を包み込んだ。
「ゲームの中では………男の機能を失って、どこかホッとしていた。リリアーヌを襲わずに済むから。でも我慢できなくてキスしたけどな」
「今は?」
「……………………百合」
「今はキスをしたくならない?」
「ここは学校だぞ」
「学校じゃなかったら、キスしてくれますか?」
「答えられない」
「……………………スキデス」
「今はダメだ」
「やっぱりリリアーヌの方が好きですか?」
「違う!」
「リリアーヌも高校生でした」
「分かっている。だが………一度でもキスをしたら、襲ってしまいそうで怖いんだ。デズモンドの時は理性で制御できた上に、物理的に無理だった。今は違うんだ。俺もれっきとした成人男性なんだ」
「はい」
私が視線を外さずじーーーっと見詰めながら、用務員さんの表情の変化に気が付いた。
見下ろす目がギラッと光って見えた。
「………日曜日に予定は有るのか?」
「え?」
「デートをしようと言っている」
言ってません。
でも嬉しいのでツッコミません。
日曜日に外で待ち合わせて、デートする事になりました。
私が用務員さんを探していると、すれ違いざまに知らない上級生が居場所を教えてくれたり、目撃情報を先生方も教えてくれました。
「用務員さん」
下級生達が教えてくれて、私は中庭に走って行き、青いツナギの用務員さんに声をかけた。
「飽きないな」
「ふふふっ飽きません」
「………そうか」
なんだかんだ言っても、最後には少し嬉しそうに微笑んで、一緒いてくれるから、また会いたくなる。
「大丈夫か?」
「何がですか?」
「大杉先生だ。あの時………百合を困らせるなと言い争いになって”リリーはオレを好きに決まっている。妻とは別れてもいい”とか勝手な事を言い出したから、腹が立って殴た」
顔を腫らしていたのは、用務員さんに殴られたから。
私の為に話し合ってくれたんだ。
「結果的には逆上させて、百合を襲う切っ掛けを作ってしまって後悔している。まぁ相談した理事長の対応が早くて助かったけどな」
理事長先生からの電話は、偶然じゃなかった。
「俺の目の前で大杉先生を電話で呼び出した理事長に”嫌な予感がする”って言われて焦った。未遂とはいえ怖かっただろ?」
だから走って来てくれた。
同じ棟でも3階の一番奥の理事長室から、1階の保健室まで距離がある。
汗の匂いがする用務員さんに抱き締められた時の事を思い出し、嬉しくて泣きそうだった。
「ゴメンな?対応が遅くなった」
口を開くと泣いてしまいそうなので、首を横に振るのが精一杯だった。
無言で腕に抱きついて誤魔化す私の頭を反対側の手が撫でてくれる。
「もう後悔はしたくなかった。親友だと思っていた男が女子中学生を襲って死なせたって聞いて、それが百合だと知ってショックだった。あの可愛い子が死ぬなんて」
大きな手が、しがみつく私の手を包み込んだ。
「ゲームの中では………男の機能を失って、どこかホッとしていた。リリアーヌを襲わずに済むから。でも我慢できなくてキスしたけどな」
「今は?」
「……………………百合」
「今はキスをしたくならない?」
「ここは学校だぞ」
「学校じゃなかったら、キスしてくれますか?」
「答えられない」
「……………………スキデス」
「今はダメだ」
「やっぱりリリアーヌの方が好きですか?」
「違う!」
「リリアーヌも高校生でした」
「分かっている。だが………一度でもキスをしたら、襲ってしまいそうで怖いんだ。デズモンドの時は理性で制御できた上に、物理的に無理だった。今は違うんだ。俺もれっきとした成人男性なんだ」
「はい」
私が視線を外さずじーーーっと見詰めながら、用務員さんの表情の変化に気が付いた。
見下ろす目がギラッと光って見えた。
「………日曜日に予定は有るのか?」
「え?」
「デートをしようと言っている」
言ってません。
でも嬉しいのでツッコミません。
日曜日に外で待ち合わせて、デートする事になりました。
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