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第20話:義輝出陣!!
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悲しみに包まれる沢城。
高山飛騨守友照の葬儀が行われていた。
堺から招いたキリスト教宣教師のガスパル・ヴィレラが祈りを捧げている。
高山家に洗礼を授けた高名な宣教師だ。
泣き止まない重友を慰める美佳と岳人。
マリアを抱き寄せる朋美。
もし、私が死んだらどうなるのだろう・・・答えは一つ。
まだ、死ぬわけにはいかない・・・生き抜くのだ。
私は強く決意した。
その後、沢城の大広間にて評定が行われた。
友照の遺言である高山家が私の下につくということが決定した。
「是非、山田殿にはジュスト様をお助けいただきたい!!」
高山家家臣の神谷与五郎久高以下家臣団は頭を下げる。
やれる限りのことはしますぞ・・・友照殿。
私は天に召されたであろう友照に誓った。
こうして沢城城主として重友が高山家を継ぐこととなった。
「私は父の敵を討とうとは思わない。」
重友が落ち着いた口調で家臣団に言う。
「いつも平和を願っていた父の意思を継いでいくだけだ。だからみんなの力を貸してくれ・・・」
「殿ォー!!」
高山家はまとまっている。
私はただその様子を見てうなずくだけだった。
その頃、
「九ちゃん、なんで早馬で帰るの?」
美佳を後ろに乗せた九兵衛は山田へと向かっていた。
しかし気がつくと森の中に入っていた。
「多分、道が違うよ・・・抜け道なの?」
そのとき九兵衛は馬を止めて降りる。
「美佳様、降りてください。」
美佳は九兵衛の手を握り馬から降りた。
「芳野殿とはどのような関係なのですか?」
「え?」
美佳は突然のことに驚いている。
九兵衛はじりじりと美佳に詰め寄っていく。
「なんか・・・九ちゃん怖いんだけど・・・。」
「あのようなお二人の姿を見て、普通じゃおられませぬ!!」
九兵衛が語気を強める。
「一馬のこと好きよ・・・。」
美佳は言う。
「・・・やはり・・・」
「でもね、そういう意味じゃないの。九ちゃんも好きだし・・・オジサマも好きだし・・・」
「・・・」
「よくわからない・・・じゃダメかな・・・キャッ!?」
言いかけた美佳を九兵衛が押し倒す。
「私は・・・私は美佳様をお慕い申し上げております!!」
そのまま九兵衛は美佳の唇を奪おうとする。
すると美佳は目を閉じた。
「!?」
涙を流している美佳を見て九兵衛は我に返る。
「申し訳ございませぬ・・・なんという無礼なことを・・・」
「だって・・・よくわからないんだよ。誰とも付き合ったことないし・・・。この時代にきてから、突然こんな風になって・・・。」
美佳は寝ころんだまま、袖で目を隠す。
「九兵衛の気持ちに私はどうすればいいのか・・・。」
すると九兵衛は美佳の身体を優しく抱きおこした。
「やっと九兵衛と言っていただけました。」
そう言うと笑顔になる。
「九ちゃんから九兵衛になったということは、少しは認めていただけたということ・・・。」
「認めているって、ずっと前から!!」
美佳は言い返すも
「次は勝秀と呼んでいただけるように精進します。」
九兵衛は平伏した。
友照の葬儀から3日が過ぎた。
私たちは吐山へと進軍を開始した。
義輝を総大将とし一馬と義成を副将にした500の軍勢である。
待ちではなく攻める、松永の勢力の排除のために心を鬼にした。
そんな私は城で留守番である。
景兼は井足城で六兵衛と共に秋山・十市を警戒している。
「サスケ・・・あれを見てどう思う?」
私は複雑な気分である。
「わふ?」
城の大広間の端で美佳と九兵衛が仲良さそうに話をしているのだ。
いや・・・九兵衛は良い男だ。
イケメン、背も高い、剣の腕もあるし何より心根が優しい。
でもね・・・美佳に彼氏はまだ早いと思うのね。
だってセブンのティーンということだもんね。
でも・・・邪魔するのも野暮だよな。
というか、別にそういう関係ではないかもしれないしな。
美佳はフランクな性格だから一馬や義成とも仲良いしな・・・。
頭を抱える私の袴の裾をサスケがグイグイと引っ張りはじめた。
「わふ・・・わんわん(そんなことより散歩に連れていけ!!)」
「わかったよ、サスケ♪」
私はサスケを連れて大広間を出て行った。
「ウルァッ!!」
清興は槍を突きまくり、敵兵の中を突破していく。
義輝の軍の出陣と合わせて檜牧の清興が戒場城を攻めていた。
「なんだ・・・あれは・・・」
清興のあまりに強さに戒場城城主戒場範家は恐れおののく。
門を打ち破り島の軍勢は城内になだれ込む。
「使えん槍め!!」
清興は槍が折れると馬から飛び降りて刀を抜いた。
「いくぞォ!!」
物凄い勢いで戒場の兵を斬り倒していく。
「吐山殿は何をしておるのじゃ・・・。」
その範家の目の前に
「ビンゴってヤツだな・・・美佳様風に言えば。」
清興が現れた。
その背後では戒場の家臣たちが倒れていた。
「戒場殿・・・喧嘩を売る相手を間違えましたな♪」
清興は刀を範家の首に突きつける。
「ま・・・待て!!」
「山田殿の軍には俺より強いのがいるのだぞ。」
清興の脳裏には義輝と景兼の姿が浮かんでいる。
「も・・・申し訳ございませぬ、し・・・島殿。」
「ただ・・・俺より容赦のないヤツはいないけどな。」
清興は刀を一閃させた。
しばらくして戒場城の付近を義輝の軍が通過すると清興が合流してきた。
「もう戒場を落としたのか・・・さすがだな。」
義輝の言葉に
「そのお言葉、恐悦至極に存じます。」
清興は平伏する。
その姿を見ている義成は一馬に聞く
「義輝様は本当に殿の義弟なのか?」
「わからん・・・でも・・・景兼様より強いらしい・・・。」
「なんと・・・あの天下に轟く疋田豊五郎景兼よりも強いと・・・。」
二人は義輝を見る。
「ん? どうした? 若いの二人が俺のことを見つめて・・・そっちの趣味はないぞ♪」
「申し訳ございません。」
義輝の言葉に義成と一馬は平伏する。
「まあ・・・清興も含め、堅苦しいことはなしということだ。義兄上はそういうことを嫌うしな。」
義輝は笑顔を見せた。
義輝の軍は香酔峠にさしかかった、その時だ。
前方で吐山の軍が待ち構えていた。
「やはり峠の上で・・・」
「やるか・・・。」
義成と一馬は顔を見合わせると義輝に声をかけようとした。
「!?」
なんと義輝は単騎で吐山の軍に突撃していく。
「遅れるな、お前ら♪」
清興も後に続く。
吐山の軍は200の兵で待ち構えていた。
指揮するのは吐山家家臣吐山七郎。
「山田軍から武者が単騎で攻めてきております。」
「愚かな・・・。」
その報告を受けて吐山七郎は呆れ顔。
「さあ・・・久しぶりに滾るわァ!!」
義輝は矢の嵐をかいくぐると刀を抜いて馬から飛び降りた。
「なんだ・・・あの男は・・・ゲッ!?」
次々と吐山軍の兵が倒れていく。
血飛沫さえ飛ばない・・・あまりの剣の速さに斬られたことさえ兵たちはわからないまま絶命していく。
一騎当千とはまさしくこのことだな・・・。
後ろから続く清興はあまりの義輝の強さに鳥肌が立っていた。
1人突き進む義輝の前に鉄砲隊が現れた。その数は15名。
「嫌な時代になったな・・・。」
義輝がつぶやいたとき
「ギャッ!!」 「ぐおっあ!?」
鉄砲隊の兵に次々と矢が刺さる。
「ほお・・・とんでもない腕前だな・・・」
義輝の視線の先には義成がいた。
なんと3連射を繰り返して縄に火をつけようとしていた鉄砲隊を全滅させた。
更に義輝の前に一馬が現れた。
「道を開きます。」
槍を両手に持ち、吐山軍に突撃していく。
変幻自在の槍は攻防一体であり吐山軍の兵たちは次々と倒れていった。
「何が起こっておるのじゃ!?」
吐山七郎が取り乱していると、その視線の先に
「こういうことが起きているんだよ・・・。」
吐山家の家臣たちを瞬時に斬り倒して義輝が現れた。
「なにが・・・ッ!?」
吐山七郎の首を斬り飛ばすと義輝は後ろを振り返る。
「この者たち・・・恐ろしい腕前だな・・・」
義輝はつぶやく。
視線の先で義成と一馬は笑顔でハイタッチしていた。
吐山の残兵たちはただ散り散りに逃げていく。
おいおい・・・その若さでこの強さはヤバいだろう。
清興は義成と一馬を見て感嘆のため息をもらす。
そして、それよりも義輝様・・・あれでまだ本気ではない・・・
清興は義輝と目が合った。
「吐山の残した酒があるぞ♪ 清興、飲むか?」
なるほどこの調子・・・山田殿と気が合うのだな、義輝様は。
「義輝様、酒飲んでる場合じゃないでしょうが!!」
清興の口調が変わった。
その声を聞いて義輝は笑顔で酒を一気に飲み干した。
「清興!! それでいいぞ。俺は山田義輝だ!!」
義輝の声が峠に響き渡った。
吐山城にて
吐山家当主吐山光政は完全に怖気づいていた。
しかし、その傍らには幻柳斎がいる。
「ワシはどうすればいいのじゃ、降伏したくてもおぬしがさせてくれんじゃろ。」
光政は震えながら幻柳斎を見る。
「死にたくなくば多田に頼るが良い。」
「多田は長年の怨敵じゃ・・・。」
「秋山と十市は互いに協力しあっておるぞ。」
「くっ・・・」
「ワシに任せておけ・・・話をつけてくる。」
幻柳斎は姿を消した。
光正はただ頭を抱え震えているだけであった。
その後、義輝の軍は吐山城を取り囲んだ。
籠城する吐山軍。
しかしここで流れが変わることになる。
都祁の貝那木山城の多田家が動き出したのだ。
当主の多田延実は筒井の配下であり、松永傘下の吐山家とは敵対していた。
「多田の軍勢・・・およそ500ほどか。」
義輝は遠くで陣を構えている多田の軍を見つめていた。
「筒井の配下の多田延実が我らを討つとは思いませぬが。」
義成が言うも
「この乱世では何が起こっても不思議じゃない、我が殿を除けばな。」
清興は義輝を見た。
「常に臨戦態勢をとっておけ・・・」
義輝の眼光が鋭くなった。
そして動き出した・・・多田軍が動き出す。
義輝の軍へと向かってきている。
「おお・・・多田め。我を助けると言うのか。」
吐山城から多田軍の動きを見ていた光政は喜びのあまり小躍りを始める。
「よし、皆の者。多田を殲滅するぞ!!」
義輝の軍も動き出す。
大和の国都祁にて大きな戦いが始まろうとしていた。
高山飛騨守友照の葬儀が行われていた。
堺から招いたキリスト教宣教師のガスパル・ヴィレラが祈りを捧げている。
高山家に洗礼を授けた高名な宣教師だ。
泣き止まない重友を慰める美佳と岳人。
マリアを抱き寄せる朋美。
もし、私が死んだらどうなるのだろう・・・答えは一つ。
まだ、死ぬわけにはいかない・・・生き抜くのだ。
私は強く決意した。
その後、沢城の大広間にて評定が行われた。
友照の遺言である高山家が私の下につくということが決定した。
「是非、山田殿にはジュスト様をお助けいただきたい!!」
高山家家臣の神谷与五郎久高以下家臣団は頭を下げる。
やれる限りのことはしますぞ・・・友照殿。
私は天に召されたであろう友照に誓った。
こうして沢城城主として重友が高山家を継ぐこととなった。
「私は父の敵を討とうとは思わない。」
重友が落ち着いた口調で家臣団に言う。
「いつも平和を願っていた父の意思を継いでいくだけだ。だからみんなの力を貸してくれ・・・」
「殿ォー!!」
高山家はまとまっている。
私はただその様子を見てうなずくだけだった。
その頃、
「九ちゃん、なんで早馬で帰るの?」
美佳を後ろに乗せた九兵衛は山田へと向かっていた。
しかし気がつくと森の中に入っていた。
「多分、道が違うよ・・・抜け道なの?」
そのとき九兵衛は馬を止めて降りる。
「美佳様、降りてください。」
美佳は九兵衛の手を握り馬から降りた。
「芳野殿とはどのような関係なのですか?」
「え?」
美佳は突然のことに驚いている。
九兵衛はじりじりと美佳に詰め寄っていく。
「なんか・・・九ちゃん怖いんだけど・・・。」
「あのようなお二人の姿を見て、普通じゃおられませぬ!!」
九兵衛が語気を強める。
「一馬のこと好きよ・・・。」
美佳は言う。
「・・・やはり・・・」
「でもね、そういう意味じゃないの。九ちゃんも好きだし・・・オジサマも好きだし・・・」
「・・・」
「よくわからない・・・じゃダメかな・・・キャッ!?」
言いかけた美佳を九兵衛が押し倒す。
「私は・・・私は美佳様をお慕い申し上げております!!」
そのまま九兵衛は美佳の唇を奪おうとする。
すると美佳は目を閉じた。
「!?」
涙を流している美佳を見て九兵衛は我に返る。
「申し訳ございませぬ・・・なんという無礼なことを・・・」
「だって・・・よくわからないんだよ。誰とも付き合ったことないし・・・。この時代にきてから、突然こんな風になって・・・。」
美佳は寝ころんだまま、袖で目を隠す。
「九兵衛の気持ちに私はどうすればいいのか・・・。」
すると九兵衛は美佳の身体を優しく抱きおこした。
「やっと九兵衛と言っていただけました。」
そう言うと笑顔になる。
「九ちゃんから九兵衛になったということは、少しは認めていただけたということ・・・。」
「認めているって、ずっと前から!!」
美佳は言い返すも
「次は勝秀と呼んでいただけるように精進します。」
九兵衛は平伏した。
友照の葬儀から3日が過ぎた。
私たちは吐山へと進軍を開始した。
義輝を総大将とし一馬と義成を副将にした500の軍勢である。
待ちではなく攻める、松永の勢力の排除のために心を鬼にした。
そんな私は城で留守番である。
景兼は井足城で六兵衛と共に秋山・十市を警戒している。
「サスケ・・・あれを見てどう思う?」
私は複雑な気分である。
「わふ?」
城の大広間の端で美佳と九兵衛が仲良さそうに話をしているのだ。
いや・・・九兵衛は良い男だ。
イケメン、背も高い、剣の腕もあるし何より心根が優しい。
でもね・・・美佳に彼氏はまだ早いと思うのね。
だってセブンのティーンということだもんね。
でも・・・邪魔するのも野暮だよな。
というか、別にそういう関係ではないかもしれないしな。
美佳はフランクな性格だから一馬や義成とも仲良いしな・・・。
頭を抱える私の袴の裾をサスケがグイグイと引っ張りはじめた。
「わふ・・・わんわん(そんなことより散歩に連れていけ!!)」
「わかったよ、サスケ♪」
私はサスケを連れて大広間を出て行った。
「ウルァッ!!」
清興は槍を突きまくり、敵兵の中を突破していく。
義輝の軍の出陣と合わせて檜牧の清興が戒場城を攻めていた。
「なんだ・・・あれは・・・」
清興のあまりに強さに戒場城城主戒場範家は恐れおののく。
門を打ち破り島の軍勢は城内になだれ込む。
「使えん槍め!!」
清興は槍が折れると馬から飛び降りて刀を抜いた。
「いくぞォ!!」
物凄い勢いで戒場の兵を斬り倒していく。
「吐山殿は何をしておるのじゃ・・・。」
その範家の目の前に
「ビンゴってヤツだな・・・美佳様風に言えば。」
清興が現れた。
その背後では戒場の家臣たちが倒れていた。
「戒場殿・・・喧嘩を売る相手を間違えましたな♪」
清興は刀を範家の首に突きつける。
「ま・・・待て!!」
「山田殿の軍には俺より強いのがいるのだぞ。」
清興の脳裏には義輝と景兼の姿が浮かんでいる。
「も・・・申し訳ございませぬ、し・・・島殿。」
「ただ・・・俺より容赦のないヤツはいないけどな。」
清興は刀を一閃させた。
しばらくして戒場城の付近を義輝の軍が通過すると清興が合流してきた。
「もう戒場を落としたのか・・・さすがだな。」
義輝の言葉に
「そのお言葉、恐悦至極に存じます。」
清興は平伏する。
その姿を見ている義成は一馬に聞く
「義輝様は本当に殿の義弟なのか?」
「わからん・・・でも・・・景兼様より強いらしい・・・。」
「なんと・・・あの天下に轟く疋田豊五郎景兼よりも強いと・・・。」
二人は義輝を見る。
「ん? どうした? 若いの二人が俺のことを見つめて・・・そっちの趣味はないぞ♪」
「申し訳ございません。」
義輝の言葉に義成と一馬は平伏する。
「まあ・・・清興も含め、堅苦しいことはなしということだ。義兄上はそういうことを嫌うしな。」
義輝は笑顔を見せた。
義輝の軍は香酔峠にさしかかった、その時だ。
前方で吐山の軍が待ち構えていた。
「やはり峠の上で・・・」
「やるか・・・。」
義成と一馬は顔を見合わせると義輝に声をかけようとした。
「!?」
なんと義輝は単騎で吐山の軍に突撃していく。
「遅れるな、お前ら♪」
清興も後に続く。
吐山の軍は200の兵で待ち構えていた。
指揮するのは吐山家家臣吐山七郎。
「山田軍から武者が単騎で攻めてきております。」
「愚かな・・・。」
その報告を受けて吐山七郎は呆れ顔。
「さあ・・・久しぶりに滾るわァ!!」
義輝は矢の嵐をかいくぐると刀を抜いて馬から飛び降りた。
「なんだ・・・あの男は・・・ゲッ!?」
次々と吐山軍の兵が倒れていく。
血飛沫さえ飛ばない・・・あまりの剣の速さに斬られたことさえ兵たちはわからないまま絶命していく。
一騎当千とはまさしくこのことだな・・・。
後ろから続く清興はあまりの義輝の強さに鳥肌が立っていた。
1人突き進む義輝の前に鉄砲隊が現れた。その数は15名。
「嫌な時代になったな・・・。」
義輝がつぶやいたとき
「ギャッ!!」 「ぐおっあ!?」
鉄砲隊の兵に次々と矢が刺さる。
「ほお・・・とんでもない腕前だな・・・」
義輝の視線の先には義成がいた。
なんと3連射を繰り返して縄に火をつけようとしていた鉄砲隊を全滅させた。
更に義輝の前に一馬が現れた。
「道を開きます。」
槍を両手に持ち、吐山軍に突撃していく。
変幻自在の槍は攻防一体であり吐山軍の兵たちは次々と倒れていった。
「何が起こっておるのじゃ!?」
吐山七郎が取り乱していると、その視線の先に
「こういうことが起きているんだよ・・・。」
吐山家の家臣たちを瞬時に斬り倒して義輝が現れた。
「なにが・・・ッ!?」
吐山七郎の首を斬り飛ばすと義輝は後ろを振り返る。
「この者たち・・・恐ろしい腕前だな・・・」
義輝はつぶやく。
視線の先で義成と一馬は笑顔でハイタッチしていた。
吐山の残兵たちはただ散り散りに逃げていく。
おいおい・・・その若さでこの強さはヤバいだろう。
清興は義成と一馬を見て感嘆のため息をもらす。
そして、それよりも義輝様・・・あれでまだ本気ではない・・・
清興は義輝と目が合った。
「吐山の残した酒があるぞ♪ 清興、飲むか?」
なるほどこの調子・・・山田殿と気が合うのだな、義輝様は。
「義輝様、酒飲んでる場合じゃないでしょうが!!」
清興の口調が変わった。
その声を聞いて義輝は笑顔で酒を一気に飲み干した。
「清興!! それでいいぞ。俺は山田義輝だ!!」
義輝の声が峠に響き渡った。
吐山城にて
吐山家当主吐山光政は完全に怖気づいていた。
しかし、その傍らには幻柳斎がいる。
「ワシはどうすればいいのじゃ、降伏したくてもおぬしがさせてくれんじゃろ。」
光政は震えながら幻柳斎を見る。
「死にたくなくば多田に頼るが良い。」
「多田は長年の怨敵じゃ・・・。」
「秋山と十市は互いに協力しあっておるぞ。」
「くっ・・・」
「ワシに任せておけ・・・話をつけてくる。」
幻柳斎は姿を消した。
光正はただ頭を抱え震えているだけであった。
その後、義輝の軍は吐山城を取り囲んだ。
籠城する吐山軍。
しかしここで流れが変わることになる。
都祁の貝那木山城の多田家が動き出したのだ。
当主の多田延実は筒井の配下であり、松永傘下の吐山家とは敵対していた。
「多田の軍勢・・・およそ500ほどか。」
義輝は遠くで陣を構えている多田の軍を見つめていた。
「筒井の配下の多田延実が我らを討つとは思いませぬが。」
義成が言うも
「この乱世では何が起こっても不思議じゃない、我が殿を除けばな。」
清興は義輝を見た。
「常に臨戦態勢をとっておけ・・・」
義輝の眼光が鋭くなった。
そして動き出した・・・多田軍が動き出す。
義輝の軍へと向かってきている。
「おお・・・多田め。我を助けると言うのか。」
吐山城から多田軍の動きを見ていた光政は喜びのあまり小躍りを始める。
「よし、皆の者。多田を殲滅するぞ!!」
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