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聖女様が現れた
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「災難だったね。どこも怪我はなかったかい?」
「はい、大丈夫です。お陰様で助かりました。」
翌日、私は殿下に昨夜の件のお礼を言った。
まさか身内に命を狙われると思っていなかったから私も甘い。
いつの間にか警備が敷かれていたという点だけは聖女候補になっていてよかった。
「気にする事は無いよ。大事な聖女候補に何かあったら大変だからね。」
「ありがとうございます。でも、知りませんでした。
いつの間にか私の住まいの使用人と警備の方が入れ替わっていたなんて。」
「そうだね。君は家族と没交渉だったからね。誰も伝えなかったのだろうね。」
殿下から私に前もって伝えても良かったのではとも思ったが、聞くのは止めた。
本人だけには知らせないで陰から聖女かどうか見極める為だったかもしれない。
だが普通は家族と同居している令嬢ばかりだし、隠し通せる訳がない気もする。
いずれにしろ私の考えが及ぶところではない。
私が気になったのはむしろ殿下の口に出した言葉だ。
殿下は今私の事を聖女候補と言った。
昨日年配の使用人が「聖女殺害容疑」と言った事がずっと気にかかっていたのだ。
しかし、殿下がこう言っているのだからどうやら私の聞き違いだった様だ。
安心した。
ドロテアは今日から取り調べを受けるらしい。
刑罰は確定していないが貴族令嬢としての命を絶たれたのは間違いない。
半分血が繋がっているはずの妹に対して冷たい言い方だがもう会いたくも無い。
父義母に関しては殿下のおかげもあり現在の生活で完全に接触点が無くなった。
腹立たしい気持ちがない訳ではないがどの道今の私の状況では出来る事は何も無い。
「他の聖女候補の方も同様に警護されているのですね。
ところで調査は進んでいるのでしょうか?」
「え、調査? ……ああ、うん。進んでいるよ。」
何か殿下の反応がおかしかった気がするが気のせいか。
案外特定できそうもなくて苦戦しているのかもしれない。いい傾向だ。
調査が進まない内に万が一に備えてやるべき事があった。
聖女の特定条件を自分からなるべく消しておく事である。
魔力の強弱に関してだが、回復魔法を転じた攻撃で魔獣を一撃で屠った事から
強いのは間違いないし誤魔化し様もない。
リオに関してはすまないけど私から離れて貰えばいい。寂しいけど。
前世の記憶は私が隠して惚けていればいいだけだ。
そうなると、問題はこの髪か。
実は私の金髪は最近色素が急激に抜けてきている様なのだ。
あの狩猟祭を切っ掛けに変色が激しくなってきた気がする。
魔獣と戦って神経を使ったから増えていた若白髪を進行させてしまったのだろう。
あれは普通の令嬢ではあり得ない経験だったから、絶対そうに違いない。
金髪のヘアカラーか……。
そんな物がこの世界にあるのだろうか。
見つけた所でいくらするのか。手持ちの現金は無いに等しい。
屋敷にまだ売れる物が無いか今一度探してみよう。
まず現金を工面する。そして早急にヘアカラーを探し、手に入れる。
これが今の私のすべき事だ。
しかし三日後、思いもかけない形でこの悩みが解決された。
聖女様が現れたのである。
教室で級友に囲まれているその令嬢を見て驚いた。
ドロテアの周りで回復魔法をかけていた令嬢のうちの一人だ。
確かこの子の髪は栗色だったはずだ。しかし見事な銀髪になっていた。
「イェレナ様! どうなさったの、その髪は!?」
「見事な銀髪ですわ! もしや、イェレナ様がそうなのですか!?」
「わからないのです。いきなり髪の色が変わってしまって……。」
周囲に群がり囃し立てる令嬢達にイェレナが答えているがまんざらでもない
感じに見える。
するとイェレナが私を見つけて突然話しかけて来た。
初めての事なのでびっくりする。
「フリーダ様、ごきげんよう。」
「お早うございます、イェレナ様。」
「先日の狩猟祭の時はあなたに私達も助けられたのに、お礼を言うのを忘れて
いましたわ。有難うございました。」
「いえ、そんな事。」
何を今更と思って真意を測りかねていたが、唐突に気が付いた。
要するにイェレナは私に対してけん制しているのだ。
狩猟祭では目に見える形で私が活躍して目立ったからだろう。
銀髪の自分こそが聖女だと私に認めさせる為だと思われる。
聖女の有力候補である私が認めれば周囲に対するアピールにもなるからだ。
私としては彼女が正真正銘の聖女だというならそれで全く構わない。
寧ろ非常にありがたい。
仮に偽物であってもそれはそれで構わない。
偽物の場合、髪を染めた筈だからその手段があるという訳だ。
もしかしたら金髪のヘアカラーを譲ってもらえる機会があるかもしれない。
つまり、どちらに転んでも私としては好都合だ。
イェレナが本物だろうと偽物だろうと、今後余計な誤解を招かない為には
私の髪は金髪にきっちり染めておいた方がいいに決まっている。
お近づきになっておいた方がいい様だ。
私の中にそんな邪な考えが浮かんできた。
「はい、大丈夫です。お陰様で助かりました。」
翌日、私は殿下に昨夜の件のお礼を言った。
まさか身内に命を狙われると思っていなかったから私も甘い。
いつの間にか警備が敷かれていたという点だけは聖女候補になっていてよかった。
「気にする事は無いよ。大事な聖女候補に何かあったら大変だからね。」
「ありがとうございます。でも、知りませんでした。
いつの間にか私の住まいの使用人と警備の方が入れ替わっていたなんて。」
「そうだね。君は家族と没交渉だったからね。誰も伝えなかったのだろうね。」
殿下から私に前もって伝えても良かったのではとも思ったが、聞くのは止めた。
本人だけには知らせないで陰から聖女かどうか見極める為だったかもしれない。
だが普通は家族と同居している令嬢ばかりだし、隠し通せる訳がない気もする。
いずれにしろ私の考えが及ぶところではない。
私が気になったのはむしろ殿下の口に出した言葉だ。
殿下は今私の事を聖女候補と言った。
昨日年配の使用人が「聖女殺害容疑」と言った事がずっと気にかかっていたのだ。
しかし、殿下がこう言っているのだからどうやら私の聞き違いだった様だ。
安心した。
ドロテアは今日から取り調べを受けるらしい。
刑罰は確定していないが貴族令嬢としての命を絶たれたのは間違いない。
半分血が繋がっているはずの妹に対して冷たい言い方だがもう会いたくも無い。
父義母に関しては殿下のおかげもあり現在の生活で完全に接触点が無くなった。
腹立たしい気持ちがない訳ではないがどの道今の私の状況では出来る事は何も無い。
「他の聖女候補の方も同様に警護されているのですね。
ところで調査は進んでいるのでしょうか?」
「え、調査? ……ああ、うん。進んでいるよ。」
何か殿下の反応がおかしかった気がするが気のせいか。
案外特定できそうもなくて苦戦しているのかもしれない。いい傾向だ。
調査が進まない内に万が一に備えてやるべき事があった。
聖女の特定条件を自分からなるべく消しておく事である。
魔力の強弱に関してだが、回復魔法を転じた攻撃で魔獣を一撃で屠った事から
強いのは間違いないし誤魔化し様もない。
リオに関してはすまないけど私から離れて貰えばいい。寂しいけど。
前世の記憶は私が隠して惚けていればいいだけだ。
そうなると、問題はこの髪か。
実は私の金髪は最近色素が急激に抜けてきている様なのだ。
あの狩猟祭を切っ掛けに変色が激しくなってきた気がする。
魔獣と戦って神経を使ったから増えていた若白髪を進行させてしまったのだろう。
あれは普通の令嬢ではあり得ない経験だったから、絶対そうに違いない。
金髪のヘアカラーか……。
そんな物がこの世界にあるのだろうか。
見つけた所でいくらするのか。手持ちの現金は無いに等しい。
屋敷にまだ売れる物が無いか今一度探してみよう。
まず現金を工面する。そして早急にヘアカラーを探し、手に入れる。
これが今の私のすべき事だ。
しかし三日後、思いもかけない形でこの悩みが解決された。
聖女様が現れたのである。
教室で級友に囲まれているその令嬢を見て驚いた。
ドロテアの周りで回復魔法をかけていた令嬢のうちの一人だ。
確かこの子の髪は栗色だったはずだ。しかし見事な銀髪になっていた。
「イェレナ様! どうなさったの、その髪は!?」
「見事な銀髪ですわ! もしや、イェレナ様がそうなのですか!?」
「わからないのです。いきなり髪の色が変わってしまって……。」
周囲に群がり囃し立てる令嬢達にイェレナが答えているがまんざらでもない
感じに見える。
するとイェレナが私を見つけて突然話しかけて来た。
初めての事なのでびっくりする。
「フリーダ様、ごきげんよう。」
「お早うございます、イェレナ様。」
「先日の狩猟祭の時はあなたに私達も助けられたのに、お礼を言うのを忘れて
いましたわ。有難うございました。」
「いえ、そんな事。」
何を今更と思って真意を測りかねていたが、唐突に気が付いた。
要するにイェレナは私に対してけん制しているのだ。
狩猟祭では目に見える形で私が活躍して目立ったからだろう。
銀髪の自分こそが聖女だと私に認めさせる為だと思われる。
聖女の有力候補である私が認めれば周囲に対するアピールにもなるからだ。
私としては彼女が正真正銘の聖女だというならそれで全く構わない。
寧ろ非常にありがたい。
仮に偽物であってもそれはそれで構わない。
偽物の場合、髪を染めた筈だからその手段があるという訳だ。
もしかしたら金髪のヘアカラーを譲ってもらえる機会があるかもしれない。
つまり、どちらに転んでも私としては好都合だ。
イェレナが本物だろうと偽物だろうと、今後余計な誤解を招かない為には
私の髪は金髪にきっちり染めておいた方がいいに決まっている。
お近づきになっておいた方がいい様だ。
私の中にそんな邪な考えが浮かんできた。
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