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どうなっているのでしょうか

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 あの狩猟祭から毎日、女子は皆落ち着かない日々を過ごしていた。
もし聖女と認定されたら上級貴族・下級貴族・平民などの身分は関係ない。
平民から王族になる事だってあるのだ。文字通りのシンデレラストーリーである。

 イェレナ様はそれを体現するかの様な平民階級であり貴族ではない。
優秀な成績で王立学園に入学した平民の内の一人である。
ある意味、実にわかりやすい人がわかりやすい形で有力な聖女候補として出てきた。
私としては真偽はどうでもいい。自分勝手な目的の為に追従する事にした。


「私こそイェレナ様にお礼を言い忘れていましたわ。
 あなたの力で妹を救って下さったのですね? ありがとうございます。」

「いえ、そんな。私など……。」


 イェレナ様は聖女の力で妹を救ってくれた人、と私は言外に匂わせた。
ドロテアに対し回復魔法を使っていた一人だからおかしくはない。

 ちなみにドロテアの逮捕の件はまだ世間には詳しく伝わっていない。
単に一人の生徒が学園に来なくなった程度の認知である。
最近のドロテアの学園での立場と私自身が聖女と認定されていないからだろう。
もし認定されていたら大々的に世間に知れ渡っていたと思われる。
そういう点からしてもイェレナ様が有力な聖女候補として目立ってくれるのは非常に
時期的に良かった。


「妹は瀕死の重傷だったと聞いております。まさに奇跡! すばらしいですわ!」  

「ありがとうございます。フリーダ様こそ……。
 噂なんてあてになりませんわね。いい人だったんですね。」

(それはどうかしら。単なる利害の一致。貴方に聖女になってもらいたいだけよ。)


 そんな本音は露ほども見せずに私はにこにこと微笑んでいた。

 ところがその日以降もイェレナ様に関しては何も表立った動きは無かった。
学生の間では不思議に思う者も出てきた。私も同様である。
聖女らしい聖女候補が出たというのに国はスルー。
本来なら王国からの使者なり誰かがイェレナ様の元に来ている筈なのに。

 狩猟祭の時に居た場所や状況、そして髪の色。
聖女は聖獣を従えているという部分がネックになっているのだろうか。
少なくともそれ以外は問題ないはずだ。
何か王家から反応があっていいはずなのに何故だろう。

 内心、早く認定されてほしい。
そういう気持ちを持っていた私は直接探りを入れる事にした。
幸い生徒会に所属しているのでこういう時には役に立つ。
私はいつもの昼食時にさりげなく話を皆様に振ってみた。


「そう言えば聖女候補の方々の調査はどうなっているのでしょうか?」

「ああ。その件はもう終わったよ。」


 私の疑問に殿下があっさりと答えた。
えっ? 周囲を見るとそんな感じじゃないんだけど。
誰が聖女だとか世間に公表されていないし、その気配も全く無い。
そもそも調査が終わったどころか何も始まってない気がする。
私、何もされてないし。
まぁ私に関してはそれでいいんだけど。
 

「イェレナ様が聖女ではないかという噂を聞きますが……。」

「彼女は違う。」


 間髪入れずにヴァルター様が断言した。


「えっ?」

「私が近くで見ていますわ。ドロテア様の回復は彼女がした事ではありません。」

「そ、そうですか。」


 クラーラ様も断言する。
私の近くに居たクラーラ様は一番近くであの現象を見ていた一人だ。
最も近くでドロテアの事も見ていたのだろう。


「僕達生徒会メンバーは殿下の元で聖女に関する学内の調査をしていました。
 重要と思しき生徒達の証言は既に精査済みです。
 その結果、彼女は違うとの結論が既に出ています。」

「! そうなのですか?」


 マルセル様の言葉に驚く。
私も生徒会のメンバーの筈だけど聞いてないんですが。
聖女候補のクラーラ様も知っていたのに。仲間外れにされていたのかな……。


「まあ、別の意味での調査は続いているがな。」

「?」


 ヴォルフ様が良く分からない事を言った。
聖女候補に関する以外の調査って何だろう。
いずれにしても生徒会の中で私だけ何も知らないのは間違いなかった。

 何か寂しい気がする。
昼食を同席させて頂いてから仲間の一員になれた気がしていたから。
ぼっちの私にとっていつしかこの生徒会は居心地のいい場所になっていた。
 

「まあ、そんな事はどうでもいいだろう。それより、どうかな今日の食事は。」


 聖女調査の件をそんな事と言い切った殿下は私に料理の感想を聞いた。
毎度食堂に出てくるメニューとはレベルが違う。
同じ学生と言っても全然違うというのを実感する。
学園内では身分を忘れよなんていう校則があるけど、やはり建前の部分も大きい。
ここに居る方々は殿下の側近と言ってもいい方達だから慣れているだろうけど。


「とてもおいしいです、今日も。
 私がここに居て毎日こんなにおいしいものを頂いていいのかと思っています。」

「勿論、いいに決まっているよ。」

 
 殿下も他の方も微笑んで私を見ている。
先程感じた疎外感が少しだけ薄れてきて私は美味しく昼食を頂いた。

 その数日後、イェレナ様がされた。
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