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星川の手を引き、「ね」と畳み掛けるように彼を見上げる。あざといだろうか。デカい男がやっても可愛くとも何ともないだろうけど(それでも星川よりは小さいし)、星川も安堵したように微笑んでくれた。
「よかった。遠田さんに、嫌われたらどうしようかと……」
「ええ?」
なぜそんな心配を? 怪訝に思っていると、星川は気まずそうに視線をさまよわせた。
「あの日の朝……遠田さん、動揺してたみたいだし、連絡もなかったので……」
つまり、あの晩の出来事が伊織にとって不本意な……あるいは不愉快な行為であったのではないか気を揉んでいたようだ。伊織は申し訳なくて、しどろもどろに白状した。
「あの、俺、実はあの日のこと、あんまり、というか断片的にしか覚えてなくて……」
その瞬間、星川の顔色が目に見えて悪くなる。
「よく考えたら遠田さん、結構酔ってましたし……俺、酔ってる遠田さんに無理矢理したんですね」
「いや、違う! それは絶対違うから! ……あんまり覚えてないけど、嫌なことなんてひとつもなかったですよ」
むしろ俺から積極的に襲いにいって引かれたんじゃないかって、心配していたくらいですよ――とは言わなかったけれど。
星川は盛大に溜め息を吐いて、それから伊織をぎゅっと抱き締めた。驚いたけれど、額を肩に乗せて擦りつけられるのは嫌いじゃない。大型犬が甘えているようで可愛かった。
「安心したら腹減ってきました」
その言葉に伊織もふと笑みを零した。
「じゃあ、張り切って作ります」
「よかった。遠田さんに、嫌われたらどうしようかと……」
「ええ?」
なぜそんな心配を? 怪訝に思っていると、星川は気まずそうに視線をさまよわせた。
「あの日の朝……遠田さん、動揺してたみたいだし、連絡もなかったので……」
つまり、あの晩の出来事が伊織にとって不本意な……あるいは不愉快な行為であったのではないか気を揉んでいたようだ。伊織は申し訳なくて、しどろもどろに白状した。
「あの、俺、実はあの日のこと、あんまり、というか断片的にしか覚えてなくて……」
その瞬間、星川の顔色が目に見えて悪くなる。
「よく考えたら遠田さん、結構酔ってましたし……俺、酔ってる遠田さんに無理矢理したんですね」
「いや、違う! それは絶対違うから! ……あんまり覚えてないけど、嫌なことなんてひとつもなかったですよ」
むしろ俺から積極的に襲いにいって引かれたんじゃないかって、心配していたくらいですよ――とは言わなかったけれど。
星川は盛大に溜め息を吐いて、それから伊織をぎゅっと抱き締めた。驚いたけれど、額を肩に乗せて擦りつけられるのは嫌いじゃない。大型犬が甘えているようで可愛かった。
「安心したら腹減ってきました」
その言葉に伊織もふと笑みを零した。
「じゃあ、張り切って作ります」
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