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04 快楽に溺れたくて ★

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「変じゃないかな……」

 自室の姿見の前で、キリエはくるりと回ってみる。

 今日は、友人たちと出かける予定だ。
 キリエが選んだ服は、先週、涼介との買い物で選んだ服だった。

 可愛らしい白のブラウス。ショート丈のサロペットスカートを合わせていて――

 つまりは、涼介によるコーディネートそのものになってしまっている。それは癪なのだが、実際、センスの良さは認めざるを得なかった。

 美容院にも行ったばかり。
 いつもの美容師さんに髪を下ろしていることを伝えると、張り切ってカットに臨んでくれた。毛先を整えた程度ではあるが、以前より柔らかい雰囲気になったのではと自分では思っている。

「…………」

 新しい髪型に、新しい服。
 どちらも涼介が関係していることは、おおいに不服だ。しかし、今の姿も悪くはない――キリエはそう感じている。

(あいつの前では、もう着ないけどね)

 どうせまた、調子に乗ってキリエを茶化してくるに違いない。

 あれから涼介は、よくキリエに連絡を取ってくる。
 スマホにちょくちょくメッセージが届くのだが、そのほとんどが雑談だ。うざいので無視をすることも多いが、彼は懲りない。

 邪険に扱った翌日でも平気でまた雑談を仕掛けてくるし、学校でも普通に接してくる。メッセージを受け取るたびに彼の顔が浮かんでしまうし、声も思い出してしまう。

(もう、どうにかして欲しい……)

 しかも、油断していると不意に――

『俺たち付き合わない?』

 などと、ごく軽いノリで告白してくるのだ。
 付き合う訳がない。あんなタイプの男と交際するなど、まっぴらごめんだ。

 何より。
 直接会って伝えてくるのならまだしも、告白をメッセージひとつで済ませようという、その魂胆が気にくわない。

 だからキリエは、ごく短い言葉で、

『無理』

 とだけ返す。
 それでも涼介はまったくヘコたれることはない。

『そっかー』
『んでさ』……

 と、すぐに別の話題に切り替えてしまう。
 まったく、腹立たしい男だ。

 さらには、そんなやり取りをした翌日にも、また同じように交際を申し込むメッセージを送ってくる体たらくだ。

(ホントにあり得ない。絶対無理)

 そう憤慨するキリエだったが、涼介からのメッセージ受信を拒否することはなかった。どんな心理が働いているのか、彼女自身は分からない。

 そしてまた今日も、この出かける直前にスマホが振動した。
 涼介からだ。

『今日ヒマ?』
『遊び行かない?』

 キリエはため息をついてから返信する。

『行かない』
『友達と予定あるし』
『え』
『俺も行っていい?』
『いいわけないじゃん』
『無理』
『じゃあ来週ね』
『ひとりで』
『どうぞ』
『霧崎がつめてーよー』

 そこまで連続でやり取りをして、画面を落とす。
 キリエは苦笑して、

「バカ」

 小さくつぶやく。

 なぜ涼介は、ここまで自分に構うのだろう。あんな性格とルックスなら、いくらでも他の女子を捕まえられるだろうに。

 先週、キリエにしたようにデートに誘ってあげれば、喜ぶ女子はたくさんいそうなものなのに。

(…………)

 不思議な気分だった。
 先週の出来事が、とても鮮明に思い出せるような、それでいてぼんやりと夢を見ているかのような――そんな曖昧な感覚を伴って脳裏によみがえってくる。


 ――結局のところ、楽しかったのだろう。

 キリエは悔しさ混じりながらも、そう総括するようになっていた。

 女子同士で過ごすのとは、勝手がまったく違った。あんなに自分勝手に振り回すような友達は、身の回りにはいない。

 かといって、涼介はキリエのことを考えていないわけではなかった。むしろ、彼の行動目的はキリエが中心だった。

 その新鮮さが、キリエを楽しませていたのだろう。

 もしも――
 彼が、本気で自分のことを好きだったら? 涼介なら、キリエの知らないもっと楽しいことをいっぱい体験させてくれるのかもしれない。

 もしも彼と付き合ったら――

 あり得ないとは思いつつも、そんな仮定をしてみると、なんだか妙に浮ついた気分になる。良い気持ち――ではないが、嫌悪の感情でもない。

(――ま、そうだとしても、付き合うことは絶対ないけど)

 服と一緒に買ったポーチを肩に掛けて、キリエは家を出た。外は今日も夏の快晴だった。


  + + +


 すると。

「あ」

 ばったりと、和樹に出くわしてしまった。

 家がすぐ近所なのだから、タイミングによっては仕方がない。

「き、キリエ――」


 キリエもそうだったが、和樹も相当に狼狽してた。

 あのときのような強気な態度ではなく、キリエがよく知っている、ちょっとオドオドした少年の顔つきだった。


 ただし、外見はいつもと様子が違った。手慣れていないヘアセット。真新しい上下の服。

 ……例の彼女と、デートなのかもしれない。

 そう思うと、キリエの臓腑がずんと重くなる。
 あんなふうに傷ついたあとなのに、まだ彼への想いは途切れていない。十年来の片思いなのだ。そう簡単に踏ん切りが付くものではなかった。

 それに――

 今の、イメージチェンジした自分なら、和樹の心も揺り動かせるかも、という期待があった。

 彼の好みとは違うかもしれないが、髪を下ろして、服の雰囲気も変えて。少しは、可愛らしい感じになっているかもしれない。あの子のように……。

「和樹……」

 彼はひるんだように身を引くが、しかし、急に何かを思い出したかのように――そう、自分には可愛い恋人がいるのだ、という自負を取り戻したかのように、すっと顔色を変えた。

 さっきまでの弱気はなりを潜め、妙な強気を表情に浮かべて、

「ごめん。僕、急いでるから。これから図書館で愛花とデートなんだ」

 それだけ言い捨てると、キリエを置いてさっさと歩いていってしまった。

「…………なによ、バカ」

 さっきまで明るかった心が、急に曇りきってしまった。みじめで泣きたい気分。

「はぁ……」

 和樹に追いついてしまわないよう時間を空けてから、キリエは友人との待ち合わせ場所に向かった。


 ■ ■ ■


「キリちゃんってさ、最近雰囲気変わったよね」
「……そう?」
「そうだよ、絶対そう」

 待ち合わせていたクラスメイトとはそれなりに気の置けない間柄ではあるが、キリエは、和樹への恋心については話したことがない。
 自分の恋愛について誰かに打ち明けて、愚痴を聞いてもらったり、解決策を授けてもらったりという行為が、どうしても苦手なのだ。

「髪下ろしてるのも革命だしさー。服もなんか、印象違うって」
「別に――」
「すっごい似合ってる」
「…………」

 あんまり嬉しくない。
 つい、そんな顔をしてしまう。

「素直じゃないなぁ、キリちゃんは」
「そんなこと、ないでしょ」
「あるある。自覚はないかもだけど、キリちゃん、いろいろ変わってきてるんだと思うなー。いい出会いがあったんだよ、きっと」

 ふと、あの男の顔が浮かんでしまって、苦い顔になる。

「――ないから。ない」

 そんなキリエを見て、友人はふふっと笑う。
  
「なによ」
「ううん。そういうストレートな顔するのも、実はキリちゃん的にはレアなんだよ?」
「なにそれ、どういう意味?」
「いっつも素直じゃないから。でも、素直になれる人が見つかったんじゃないかなぁ、って」
「だから、意味わかんない」

 キリエは不服に思うが、友人は気にせず肩に抱きついてきて、

「相手が私じゃないのが残念だけどねー」
「――はいはい。他の子も待ってるし、早く行きましょう」
「はーい」

 和樹に会って暗くなっていた心が、友人のおかげで少し明るくなった。

 そして……今さらながら、髪型や服を褒められたことが素直に嬉しく感じられた。
 
(素直な自分、か……)

 そんなものはあるんだろうか。自分自身ですら、自分の心が判然としないのに。恋慕を寄せる相手には、むしろチグハグな反応をしてしまうくらいなのに。

 もしも、素直な自分などというものが存在して、それを見せられる相手がどこかにいるのだとしたら、それは――。



 ■ ■ ■



「あっ、あっ、あんッ――」

 夕刻。
 涼介は愛花の腰をがしっと掴んで、その体の奥深くへと、自身を刻み付けていた。

「んッ、ぁあっ! 涼介くんっ、好きっ、すきっ――!!」

 愛花は、着衣からこぼれた丸い乳房を振り乱し、汗で髪を顔に貼り付けながら、与えられる快楽に酔いしれている。正常位だと、こちらの顔がよく見えて好ましいらしい。

「あっ、あ、すごいのっ、涼介くんの、私の中で暴れてるっ――、ひっ、ぅ、ぁんッ!!」

 昼間、他の男とデートをしてきたばかりだというのに、愛花は一心不乱に涼介のことを全力で受け止め、その快感を自身に焼き付けようとしていた。

「好き、ってさ――あいつにも言ってたんじゃないの? 今日、楽しかったんだろ?」
「――ッ、だ、だからそれはっ!!」

 彼女は今、少し優しくしただけの相手に好意を持たれて、そのアタックを断り切れずに、その男と交際めいたことを続けている。

 今日は仲良く、図書館で勉強会をしてきたらしい。手もつながず、もちろんキスに至ることもなく。

 相手の男――和樹はもっと愛花と過ごしたくて公園デートを提案したらしいが、愛花は用事があるからと、やんわり断ったらしい。

 ――そういうときには断れるのだ、この少女は。

 早く涼介に会いたくて、抱いて欲しくて。つまりは、そういう快楽のためであれば、彼女は流されることなく決然と振る舞える。

 ある意味、正直な女の子だと言えた。
 涼介は、愛花のそんな部分を気に入っている。
 
 快楽のためならば、どんなに卑怯にも、冷徹にもなれる。そういうところが、自分に似ていると思った。

 もっとも。
 性的嗜好は真逆で――だからこそ、相性が良くもあるのだが。

「早くあいつをラブホに連れ込んで、童貞奪ってやれよ」

 涼介が言葉でなじると、愛花は目にいっぱい涙をにじませて、

「いやっ、いやっ――涼介くん以外の人とのセックスなんて、考えられないっ!」
「ふぅん。じゃあアイツのこと、好きじゃないんだ?」
「だから――っ」

 強く否定しようとした愛花の目に、ふいに、背徳的な色が浮かんだ。

 彼女は知っている。知ってしまったのだ。涼介が求めることを。彼を興奮させるのに、最も適した振る舞い方を。本能で気づいてしまった。
 
「……嫌い、じゃない。た、頼りないけど、私には優しいし、それに」
「それに? なに?」

 涼介が冷たいまなざしで見下ろしてやると、彼女は怯えた顔をしながらも、甘美な快感に肌を震わせた。

「それにっ、涼介くんみたいに、酷いことしないからっ――だ、だから、ほんのちょっとだけ……」
「好きになりそう、ってこと?」
「ッ――――」

 涼介の声が低く冷たくなるほど、男性器を咥え込む彼女の膣穴は、きゅぅっと切なく締まる。

 すべては、彼女自身が気持ち良くなるための演技なのだ。涼介に怒って欲しくて、叱って欲しくて、酷くいじめて欲しい。そんな、浅ましくてはしたない欲望が、彼女を駆り立てている。

「――へぇ」

 ならば、お望みどおりにしてやろう。
 涼介は腰を引いて、ずるりとペニスを引き抜いた。

「えっ、やっ!? やだっ、抜かないでっ!」

 予想と違った涼介の行動に、愛花が狼狽する。

 ――こんな女が学校では清楚な美少女として通っているのだから、笑ってしまう。結局、彼女の本質を見抜いているのは涼介だけなのだ。

 涼介は愛花のことを鼻で笑いながら、彼女の胸の上にまたがった。
 愛花の膣で愛撫され、限界まで屹立した肉の竿。その異様を眼前に突きつけられた愛花の顔が、ぐにゃりと惨めに歪む。

「あっ、あぁっ――」
「あいつは、こんな酷いことはしないんだよな?」

 言って肉棒をつかみ、愛花の横っ面を、べちべちと音を立てて叩いてやる。

「やッ、ンっ――」

 目をつぶり顔を背けるようにしているが、愛花の興奮が高まっていくのが手に取るように分かる。

「なに逃げてんの。ほら、しゃぶって」
「――――ッ、っ、はいっ」

 絶望的な顔をしているくせに、目の奥では妙に嬉しそうに笑っている。つくづく、欲望に弱い人間だ。

「れ、うっ――」

 またがった涼介の足で両手も固定されているため、彼女は苦しげに首を持ち上げ、鼻をこすりつけるようにして、竿の裏側を愛おしそうに舐め上げる。

 涼介が、右手でペニスの角度を変えてやると、愛花はためらいひとつなく、その先端にぱくりとかぶりついた。

「――ぁ、むっ。んぐっ、んぐッ」

 彼女の小さな口に、膨張した亀頭はあまりに大きすぎる。それでも、頭を前後に激しく振って、愛しい人に快感を与えようと努力する。

「あグっ、んぐッッ、ぇっ、うっ、くぽ、がぽっ――」

 体勢が体勢だけに、上顎の粘膜を亀頭がこすってしまうため、何度も嘔吐きそうになっていた。それでも懸命に、そして何より喜悦に満ちた様子で口愛撫に没頭する。
 
「ふん、ついさっきまで自分の穴に入ってたのに。それでも、そんな美味しそうにしゃぶれるんだ」
「んぶっ、――やっ、そんなこと、言わないでっ……あっ、んむっ、ぢゅるるっ、ぢゅぱっ、ぢゅぼっ。んっ――んぐッ!? うっ、ぉぶっ、くぷ、くぷっ、ぐぷっ――んぶぅっ……!!」

 涼介は、愛花の口粘膜を堪能しながら、腰をひねって、右手を彼女の陰部に差しのばす。

 直前まで男性器を挿入していた蜜の穴。牝の肉が熱く蕩けていて、2本くらい指は軽く呑み込まれてしまう。

 第二関節まで柔肉に埋まったところで、軽く折り曲げ、濡れそぼった肉壁を、ずりずりとこすって刺激する。ぐち、ぐち、と淫らな水音。

「んグっ!? ふっ、ふゃぁっ!! あっ、あっ、指、指っ、あっ、やぁっ」
「ほら、口が止まってる」
「――っ、ご、ごめんなさっ、ごめんなひゃっ、んぐっ、んっぐ、んぶッ! ふっ、ぅっ、んむッ――」

 希望どおりに責められて、愛花は歓喜の涙をこぼしながら夢中になっている。

 指に伝わる膣壁の柔らかさ。その淫らなぬめり。うごめき。彼女が、どれだけ性的興奮を覚えているのかが感じられる。

 涼介は指愛撫のペースを上げて、彼女が耐えられるギリギリの快感を流し込む。そうしながら、愛花の胸の上で自分の腰を前後させ、彼女の口性器をたっぷりと犯す。

 先端が、喉の入り口のヌメヌメした粘膜に当たって気持ちがいい。
「おぶッッ!? がぽッ!! ごぼッッ!!」
「こんな酷いこと、彼はしてくれないんだよな?」
「ングっ、んっ、ふッ、ぐぶっ――!! んっ、ぐ……」

 相当に息苦しいはずなのに愛花は、律儀にもコクコクと小刻みにうなずく。
 それでまた喉粘膜に亀頭がこすられて、涼介の射精感も高められる。

 股の下で感じる、愛花の高い体温。じっとりとした汗。柔らかな乳房の感触。

 涼介は射精に向けて、愛花の身体を仕上げにかかる。

 指で、膣壁のこりっとした部分を的確に捉えると、ハイペースで、しかし一定のリズムを崩すことなく強く振動を与えていく。

「ッ、んっく、んくっ――、んぶっ、ぅうッッ~~っ!! ぢゅる、ぢゅぷッッ」

 愛花の身体が、激しくのたうつ。

 それでも頑としてペニスに吸いついて離れないのは、奉仕の心のためか、それとも、これから与えられる最高の快楽を、決して口の外に逃さないためなのか。

「ぢゅぼっ、ぢゅぼッ! んグぅっ、お、ぐぶっ、ぐぷっ――!!」

 涼介の快感も最高潮に高まる。陰嚢から押し出された精液がどくどくと肉幹をのぼり詰めていき、堰を切ってあふれ出す。

 涼介は、愛花の喉奥めがけて激しく吐精した。

「んブッ――!?」

 白濁の塊を叩きつけられてもなお、愛花は、むしろより深くペニスを咥え込み、窒息しそうになりながらも嚥下していく。

「ごぶッ、うぶッッ、んぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅぶっ、ンぅうッ、――――ッ!!!! ……っっっっ!?」

 ガクガクっと愛花の肢体が激しく痙攣した。

「マジか、喉に射精されながら、イったの?」
「はぶっ、んぐっ、ぉぐっ――、っ、ッッッ……」

 射精を終えて涼介がペニスを口から引き抜くと、愛花は、顔中を体液でびしょびしょにして、荒い息を吐き出しながら――

 それでも、とても幸せそうに顔を歪めていた。
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