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三三五話
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「人類に勝利があらんことを……か」
最後の一文を俺はなんとなく読み上げた。
「勝利を、ということは、何かと戦っていたのは間違いないみたいだね」
と、いつの間にか隣に立ち、ホロディスプレを覗き込んでいたマレアがそんなことを言う。
「みたいだな。
それに、防衛居住区ってある以上、何かかから住民を守っていたってのも間違いないか。
ただ……
我が国に、とか、我々に、ではなく、人類に、ってところがなんか気になるな。
主語がデカ過ぎるというか……これだとまるで“人類以外の何か”と戦っていた様に読み取れるんだが……」
これではまるで……それこそ巨大怪獣とか、宇宙人的とか、そうした未知の存在と戦っていたようにも読み取れる。
「魔獣とか? そういう可能性はないかしら?
ほらっ! ベルヘモスの様な巨大魔獣が、昔はたくさんいたとか!」
と、そんな予想を楽し気にセレスが話す。
可能性はなくはないだろうな。だが……何か腑に落ちないというか、なんというか……
字面からは、自然の猛威、というより、もっと切迫した何かを感じる……ような気がするのだ。
文字、それも機械によって表示されているだけに、気のせいだといわれてしまえばそれまでだが……
「ねぇ? こんな最初の一つだけ見てあーだこーだ言ってないで、さっさと次見たらいいんじゃない?
もしかたら、この先に詳しく書いてあるかもよ?」
そんな感じでセレスと話していたら、横からマレアに至極まっとうな指摘を受けた。
「それもそうねっ! そうですねっ! スグミ、次っ! 次を見せて! いい? 一つ一つちゃんと写すのよ! 飛ばしたりしたらダメだからねっ!」
ついうっかりマレアに対してため口になってしまうくらい、フンスと鼻息荒く興奮するセレスに、へいへいと従いながら、次の報告、また次の報告と読み進めていく。
そうして、時間軸を遡りながら資料を確認していくうちに、当時、ここ、第一二六号防衛居住区で何があったのか、その全容が見えて来た。
結果からいえば、エネルギー資源が枯渇したことで、止む無くこの防衛居住区を放棄することになった、みたいだな。
というのも、まず、この巨大建造物……コロニーでは、エーテルという魔力の元となるエネルギー体を地中から組み上げ、それをエーテルリアクターという装置に通すことで魔力へと変換し、それを主なエネルギーとして利用していたようなのだ。
ざっくりいえば、掘った石油を燃やして電気を作って物を動かしてます、みたいなものだ。
しかし。
このエーテルがある時から採取出来なくなった。
原因は、エーテルストリームと呼ばれる、エーテルの川のようなものが大きく蛇行したことだ。
このエーテルストリームだが、俺の解釈では、所謂、龍脈や地脈など、大地を流れる霊的エネルギーの本流の様なものであると認識している。
が、その肝心要なエーテルストリームが、エーテルリアクターから大きく外れてしまったのがすべての不幸の始まりだった。
エーテルストリームからエーテルを抜き出すには、エーテルストリームのほぼ真上にエーテルリアクターを設置する必要があるようなのだが、エーテルストリームの大蛇行によりエーテルリアクターが機能不全を起こしてしまった、ということらしい。
当時の責任者も淡い期待を込めて、エーテルストリームが元の位置に戻ることを期待したが……
願いは通じず、備蓄していたエネルギーも底を突きそうになり、止む無く放棄を決断。
住民を別のコロニーへと非難させる決定を下した。
というのが、事の顛末のようだった。
余談だが、エーテルストリームはそもそもが実態を持たないエーテルの流れであるため、実際の川の様に同じところを流れ続けている、というものではないらしい。
毎日、微妙に流れる場所が変わるそうなので、それを踏まえた上で、最も適した場所にエーテルリアクターを建設していたようではかるが、この時の大蛇行は歴史的にも例を見たいほどに珍しい現象だったとかで、かなり世間に混乱をもたらしたのだと、報告書にはそう記されていた。
「で、このガラス壁の向こうに見えるバカデカい建造物が、そのエーテルリアクターだと……」
このサイズだからな……
流れが変わったから、じゃあエーテルリアクターを持って移動する、なんてことも出来なかったのだろう。
「壊れたってわけじゃないんなら、今でも動くんじゃないかな? これ」
そう言って、マレアが巨大建造物……エーテルリアクターを指差した。
「そうは言ってもなぁ……
止まっている原因が、資源の採取? 採掘? とにかく、獲得が出来なくなったことだからな……動くかどうかなんともな……」
エーテルストリームの蛇行が自然によるものだというなら、もしかしたら長い年月をかけて流れが元に戻っている可能性はなくはないが……
「でも、試してみる価値はあるんじゃないかしら?」
と、期待を込めた視線でセレスが俺を見上げて来た。
つまり、やれ、ということらしい。
正直な話し、このコロニーに残された報告書をざっくり見た感じでは、ぶっちゃけ俺が欲しい情報というのは、この施設にはなさそうだった。
残されていたのは、あくまでこのコロニーが出来てから放棄されるまでの期間の資料だけだったからな。
つまり、どうして俺がこの世界へとやって来たのか、その秘密を知る直接的な手掛かりになりそうな資料はない、ということだ。
となると、俺がこれ以上この遺跡に関わる意味はないのだが……
とはいえ、“あっ、自分もう興味ないんで帰りますぅ~”なんて言おうものなら、上司がブチキレそうで非常に怖いので、従順な犬は素直に従うしかないのである。わんわん。
もしかしてここは、意外とブラックな職場なのかもしれないな……
しかし、試すと言ってそう簡単に動かせるものでもない。
まずは起動マニュアルの確認をするのだが……これがまた複雑で小難しいのなんの……
結局、この日は起動マニュアルの確認で一日が終わってしまった。
また、あのクソ長階段を上って街まで戻るのも嫌だったので、この場で一泊することに。
場所はノーマルゴーレム格納庫から、十数体を回収して空間を確保し、そこに百貫百足を出すことで解決した。
ノーマルゴーレムに関しては、セレスから“ついでだから”と回収命令が下されたのだ。
完全に便利屋兼、荷物持ち扱いである。使えるわんこは辛いね……
そんなこんなで、今日は何かとどっと疲れる一日でした。わんわん。
最後の一文を俺はなんとなく読み上げた。
「勝利を、ということは、何かと戦っていたのは間違いないみたいだね」
と、いつの間にか隣に立ち、ホロディスプレを覗き込んでいたマレアがそんなことを言う。
「みたいだな。
それに、防衛居住区ってある以上、何かかから住民を守っていたってのも間違いないか。
ただ……
我が国に、とか、我々に、ではなく、人類に、ってところがなんか気になるな。
主語がデカ過ぎるというか……これだとまるで“人類以外の何か”と戦っていた様に読み取れるんだが……」
これではまるで……それこそ巨大怪獣とか、宇宙人的とか、そうした未知の存在と戦っていたようにも読み取れる。
「魔獣とか? そういう可能性はないかしら?
ほらっ! ベルヘモスの様な巨大魔獣が、昔はたくさんいたとか!」
と、そんな予想を楽し気にセレスが話す。
可能性はなくはないだろうな。だが……何か腑に落ちないというか、なんというか……
字面からは、自然の猛威、というより、もっと切迫した何かを感じる……ような気がするのだ。
文字、それも機械によって表示されているだけに、気のせいだといわれてしまえばそれまでだが……
「ねぇ? こんな最初の一つだけ見てあーだこーだ言ってないで、さっさと次見たらいいんじゃない?
もしかたら、この先に詳しく書いてあるかもよ?」
そんな感じでセレスと話していたら、横からマレアに至極まっとうな指摘を受けた。
「それもそうねっ! そうですねっ! スグミ、次っ! 次を見せて! いい? 一つ一つちゃんと写すのよ! 飛ばしたりしたらダメだからねっ!」
ついうっかりマレアに対してため口になってしまうくらい、フンスと鼻息荒く興奮するセレスに、へいへいと従いながら、次の報告、また次の報告と読み進めていく。
そうして、時間軸を遡りながら資料を確認していくうちに、当時、ここ、第一二六号防衛居住区で何があったのか、その全容が見えて来た。
結果からいえば、エネルギー資源が枯渇したことで、止む無くこの防衛居住区を放棄することになった、みたいだな。
というのも、まず、この巨大建造物……コロニーでは、エーテルという魔力の元となるエネルギー体を地中から組み上げ、それをエーテルリアクターという装置に通すことで魔力へと変換し、それを主なエネルギーとして利用していたようなのだ。
ざっくりいえば、掘った石油を燃やして電気を作って物を動かしてます、みたいなものだ。
しかし。
このエーテルがある時から採取出来なくなった。
原因は、エーテルストリームと呼ばれる、エーテルの川のようなものが大きく蛇行したことだ。
このエーテルストリームだが、俺の解釈では、所謂、龍脈や地脈など、大地を流れる霊的エネルギーの本流の様なものであると認識している。
が、その肝心要なエーテルストリームが、エーテルリアクターから大きく外れてしまったのがすべての不幸の始まりだった。
エーテルストリームからエーテルを抜き出すには、エーテルストリームのほぼ真上にエーテルリアクターを設置する必要があるようなのだが、エーテルストリームの大蛇行によりエーテルリアクターが機能不全を起こしてしまった、ということらしい。
当時の責任者も淡い期待を込めて、エーテルストリームが元の位置に戻ることを期待したが……
願いは通じず、備蓄していたエネルギーも底を突きそうになり、止む無く放棄を決断。
住民を別のコロニーへと非難させる決定を下した。
というのが、事の顛末のようだった。
余談だが、エーテルストリームはそもそもが実態を持たないエーテルの流れであるため、実際の川の様に同じところを流れ続けている、というものではないらしい。
毎日、微妙に流れる場所が変わるそうなので、それを踏まえた上で、最も適した場所にエーテルリアクターを建設していたようではかるが、この時の大蛇行は歴史的にも例を見たいほどに珍しい現象だったとかで、かなり世間に混乱をもたらしたのだと、報告書にはそう記されていた。
「で、このガラス壁の向こうに見えるバカデカい建造物が、そのエーテルリアクターだと……」
このサイズだからな……
流れが変わったから、じゃあエーテルリアクターを持って移動する、なんてことも出来なかったのだろう。
「壊れたってわけじゃないんなら、今でも動くんじゃないかな? これ」
そう言って、マレアが巨大建造物……エーテルリアクターを指差した。
「そうは言ってもなぁ……
止まっている原因が、資源の採取? 採掘? とにかく、獲得が出来なくなったことだからな……動くかどうかなんともな……」
エーテルストリームの蛇行が自然によるものだというなら、もしかしたら長い年月をかけて流れが元に戻っている可能性はなくはないが……
「でも、試してみる価値はあるんじゃないかしら?」
と、期待を込めた視線でセレスが俺を見上げて来た。
つまり、やれ、ということらしい。
正直な話し、このコロニーに残された報告書をざっくり見た感じでは、ぶっちゃけ俺が欲しい情報というのは、この施設にはなさそうだった。
残されていたのは、あくまでこのコロニーが出来てから放棄されるまでの期間の資料だけだったからな。
つまり、どうして俺がこの世界へとやって来たのか、その秘密を知る直接的な手掛かりになりそうな資料はない、ということだ。
となると、俺がこれ以上この遺跡に関わる意味はないのだが……
とはいえ、“あっ、自分もう興味ないんで帰りますぅ~”なんて言おうものなら、上司がブチキレそうで非常に怖いので、従順な犬は素直に従うしかないのである。わんわん。
もしかしてここは、意外とブラックな職場なのかもしれないな……
しかし、試すと言ってそう簡単に動かせるものでもない。
まずは起動マニュアルの確認をするのだが……これがまた複雑で小難しいのなんの……
結局、この日は起動マニュアルの確認で一日が終わってしまった。
また、あのクソ長階段を上って街まで戻るのも嫌だったので、この場で一泊することに。
場所はノーマルゴーレム格納庫から、十数体を回収して空間を確保し、そこに百貫百足を出すことで解決した。
ノーマルゴーレムに関しては、セレスから“ついでだから”と回収命令が下されたのだ。
完全に便利屋兼、荷物持ち扱いである。使えるわんこは辛いね……
そんなこんなで、今日は何かとどっと疲れる一日でした。わんわん。
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