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10章

母の確信

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「ですが、レオンのある技をきっかけに状況が変わりつつあるの」

「ある技?」

「あの子は『魔剣術・断閃』と呼んでいたわ」

 断閃……私の魔剣術と前に戦ったモーブという男が使っていた魔法を元にレオンさんが編み出した技だったかな。
 レオンさんのノーチェと私の白風は魔含鉄と呼ばれる魔力を纏う特殊な金属でできた剣だ。剣の表面に纏った魔力を刃状に形成してレオンさんの剣速で放つ強力な技。

「その技がいったい何になるんですか?」

「……抜剣術は元々、対人に特化した剣術です。その剣は他の流派の剣を置き去りにし、その剣を見るものは死の直前のみと言われるほどに。ですが、対魔物となると話は別です。魔物相手ではどんなに剣を磨こうと斬れるものに限界がある」

「そうですけど……あっ」

 私はクリスティ様が言いたいことを理解して、それを察したのかクリスティ様もうなづいた。
 対人なら最強。でも今の王家の動きとしてはリベリオンの召還魔物軍団を問題視してるってパパが言ってた。剣術と魔術、どちらもこなせてしまうレオンさんを評価してしまうのもうなづける。
 つまり……。

「レオンを支持する者たちは、現状において新たなクロードとしての道を作るのはレオンである、ということを主張しているわけです」

 なるほど……ん?

「それとさっきのこととどういう関係が?」

 私が聞くとクリスティ様は咳払いを一つしてから口を開く。

「……レガールにはメイリーがいますが、レオンには今まで懇意にしている女性がいたことはない。しかし、最近はあなたに随分と熱が入っていると情報が入りました。貴族家というのは血を重んじる人間が多い。つまり、あのレオンが興味を持つ女性はいずれクロードに……ということも考えられますから」

 つ、つまり……これは息子の未来の嫁候補を見定めるための試練ということですね⁉︎

「クロードに迎え入れるのであれば……半端な者はいらないのです」

 クリスティ様から背筋が凍るようなプレッシャーを感じた。
 でも、私に圧をかけるようなものではなく多分これは……この人から自然と漏れ出ているんだろうな……さすが公爵家。

「えっと……」

「実力を見る意味でレガールにお願いしましたが……予想外でした」

「えっ⁉︎」

「あぁいい意味で、ですよ」

 一瞬驚いたけど、いい意味ならよかった。
 これで「あなたはクロードにふさわしくない」なんて言われたらショックで気絶するよ⁉︎

「試すようなことをしてしまいすみませんでした。魔術師としての実力はこれまでの功績が裏付けしてくれますが、近接戦闘の技量も見ておきたかったのです。それを見て確信しました」

「確信?」

 さっきまでのプレッシャーが消え、優しい笑顔になってクリスティ様は私の頭を撫でた。

「レオンの近くにいる娘があなたでよかった」

「え、えっと……」

「最後、剣を弾き飛ばした後に相打ちになってでも私を守ろうとしましたね」

「そんなことわかるんですか⁉︎」

「わかりますよ。拳を打ちつける瞬間に一瞬視線を感じましたので」

 剣の達人……恐るべし……。

「太刀筋や所作を見ればわかります。あなたは自分ではない誰かを守れる優しい人ということがよくわかりました。これからもレオンと仲良くしてあげてください」

「……はい!」

 なんか大変だったけど、クリスティ様に好印象を持ってもらえたならよかったぁ!
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