369 / 418
暁を覚えない春眠編
ホワイトデー~その1
しおりを挟む
3月14日。
ホワイトデー、今日も昨日に引き続き色々とやらないといけないことがある。
面倒だが登校する。
校舎に入り、下駄箱付近。
登校してきた何人もの生徒が上履きに履き替えている。
近くでは新聞部員が間隔を開けて4、5人ほどが立っていた。
彼らは、"P"が手紙を誰かの下駄箱に入れるかもしれないということで、監視をしているのだ。
その中に小梁川さんがいるのを見つけた。
僕も上履きに履き替えると、彼女に話しかける。
「小梁川さん、おはよう」
小梁川さんは下駄箱の方から目線を外さずに挨拶を返した。
「おはよう。武田君」
「どう? “P”は居たかい?」
「今のところは、下駄箱にバレンタインデーのチョコのお返しを入れる者が数名確認できたわ。彼らが“P”かどうかは、明日以降に改めて調査する予定よ」
「そうか…、じゃあ、頑張って」
僕はそういうと、下駄箱を離れた。
下駄箱付近に片倉部長は居なかったが、彼は他に考えていることがあると言っていたような。
まあ、いいや。
放課後までは、“P”のことは新聞部にお任せして、自分のやることをクリアしていかないといけない。
昼休み。
毛利さんと一緒に昼食を早々に食べ終えると、2年D組の鍋島さんにクッキーを渡しに行くため教室を出た。
2年生のフロアは1階上で、普段は用もないのでほとんど行かない。
ちょっと緊張するな。
階段を登り、2年生のフロアの廊下を進む。
すると、よく知った声で呼ばれた。
「キミィ!」
この声は上杉先輩。
僕は聞こえないふりして廊下を進む。
「ちょっと! 無視しないでよ!」
上杉先輩は後ろから僕の背中を叩いた。
「あっ! 上杉先輩! 全然、気が付きませんでした」
「しらじらしいなー」
上杉先輩は怪訝そうな表情で僕を睨みつけた。
「2年生の階に何しに来たの?」
「ホワイトデーのクッキーを渡しに」
「誰に?」
「2年D組の鍋島さんって人です」
「ふーん。知らないなあ」
上杉先輩、ギャルのくせに陰キャだから交友関係が無くて、他の生徒のことは良く知らないのだろう。彼女には友達は伊達先輩ぐらいしかないのだ。
「折角だから、恵梨香にも挨拶していったら?」
上杉先輩は教室の中を指した。
「いや、いいです」
「遠慮しないでよ」
そう言って、無理やり彼女たちの2年B組の教室に引きずり込まれた。
教室内の2年生たちの目線が僕に集まる。1年生が教室に来るのは珍しいのだろう。
それに僕は不本意ながら学校一の有名人だからな。
僕は上杉先輩に伊達先輩のがいる席へと連れていかれた。
窓際の一番後ろ。いわゆる“主人公席”だ。
伊達先輩は何やら資料を読んでいた。
「恵梨香。武田君が来たよ」
上杉先輩が話しかけると伊達先輩は顔を上げた。
「あら、武田君。何か用?」
「え? いや、伊達先輩に用があったわけではないのですが…」
「廊下で武田君を見かけたから、恵梨香に挨拶させようと思って連れて来た」
上杉先輩が説明すると、伊達先輩が尋ねた。
「どうして2年生のフロアにいるのかしら?」
「ホワイトデーのクッキーを渡しに来たんですよ」
「2年生からも、もらっていたのね」
伊達先輩は感心したように言う。
「ええ、片倉先輩に聞いたら2年D組の人だと教えてくれたので」
などと話をしていると、別の男子生徒が近づいてきて話しかけられた。
「やあ、武田君」
僕は、そちらのほうを向いた。
眼鏡を掛けた七三分けの真面目そうな男子…。
以前会ったことあるよな…、でも誰だっけ?
僕は誤魔化すように挨拶をする。
「こ、こんにちは…」
七三分け眼鏡男子は話を始める。
「今日の放課後は、上杉さんをお借りするからね」
「え? お借りする? 上杉先輩を?」
何の話か見えなくて僕は混乱する。
「なんの話ですか?」
「え? 聞いてないのかい?」
七三分け眼鏡男子は、ちょっと驚いたようだが詳細を説明してくれる。
「新聞部の片倉君から、上杉さんが将棋をやっているという話を聞いて、ウチの成田に将棋対決させることにしたんだよ。その様子をYouTubeにアップしようっていう、将棋部と新聞部の共同企画だよ」
上杉先輩と成田さんの対決って、勝負にならないだろう。
成田さんの圧勝でしょ?
でも七三分け眼鏡男子、将棋部の部員ということか…。
思い出した! 将棋部の部長の十河《そごう》先輩だ。
「そうですか…、初耳でした」
上杉先輩が何をしようと僕は興味がない。
「キミが部室に全然来ないからでしょ?!」
僕の答えに、上杉先輩は少々怒ったように文句を言う。
「昨日、僕と片倉君が歴史研の部室に行って、この話をしたんだよ」
七三分け眼鏡男子は、微笑みながら話す。
「急な話に関わらず、上杉さんに色よい返事がもらえたから良かったよ」
「という訳で、今日の放課後は将棋部の部室に行くよ」
上杉先輩は、今度はドヤ顔で言う。
何でドヤ顔?
将棋部でも囲碁部でも好きに行けばいい。
「えーっと…。ホワイトデーのクッキーを渡しに行きたいので、もういいですか?」
会話が一区切りついたので僕は言った。
「うん。呼び止めて悪かったね」
上杉先輩は笑いながらそう言うと僕を解放してくれた。
余計な時間を使ってしまったな。
僕は廊下に戻ると、2年D組を目指す。
ホワイトデー、今日も昨日に引き続き色々とやらないといけないことがある。
面倒だが登校する。
校舎に入り、下駄箱付近。
登校してきた何人もの生徒が上履きに履き替えている。
近くでは新聞部員が間隔を開けて4、5人ほどが立っていた。
彼らは、"P"が手紙を誰かの下駄箱に入れるかもしれないということで、監視をしているのだ。
その中に小梁川さんがいるのを見つけた。
僕も上履きに履き替えると、彼女に話しかける。
「小梁川さん、おはよう」
小梁川さんは下駄箱の方から目線を外さずに挨拶を返した。
「おはよう。武田君」
「どう? “P”は居たかい?」
「今のところは、下駄箱にバレンタインデーのチョコのお返しを入れる者が数名確認できたわ。彼らが“P”かどうかは、明日以降に改めて調査する予定よ」
「そうか…、じゃあ、頑張って」
僕はそういうと、下駄箱を離れた。
下駄箱付近に片倉部長は居なかったが、彼は他に考えていることがあると言っていたような。
まあ、いいや。
放課後までは、“P”のことは新聞部にお任せして、自分のやることをクリアしていかないといけない。
昼休み。
毛利さんと一緒に昼食を早々に食べ終えると、2年D組の鍋島さんにクッキーを渡しに行くため教室を出た。
2年生のフロアは1階上で、普段は用もないのでほとんど行かない。
ちょっと緊張するな。
階段を登り、2年生のフロアの廊下を進む。
すると、よく知った声で呼ばれた。
「キミィ!」
この声は上杉先輩。
僕は聞こえないふりして廊下を進む。
「ちょっと! 無視しないでよ!」
上杉先輩は後ろから僕の背中を叩いた。
「あっ! 上杉先輩! 全然、気が付きませんでした」
「しらじらしいなー」
上杉先輩は怪訝そうな表情で僕を睨みつけた。
「2年生の階に何しに来たの?」
「ホワイトデーのクッキーを渡しに」
「誰に?」
「2年D組の鍋島さんって人です」
「ふーん。知らないなあ」
上杉先輩、ギャルのくせに陰キャだから交友関係が無くて、他の生徒のことは良く知らないのだろう。彼女には友達は伊達先輩ぐらいしかないのだ。
「折角だから、恵梨香にも挨拶していったら?」
上杉先輩は教室の中を指した。
「いや、いいです」
「遠慮しないでよ」
そう言って、無理やり彼女たちの2年B組の教室に引きずり込まれた。
教室内の2年生たちの目線が僕に集まる。1年生が教室に来るのは珍しいのだろう。
それに僕は不本意ながら学校一の有名人だからな。
僕は上杉先輩に伊達先輩のがいる席へと連れていかれた。
窓際の一番後ろ。いわゆる“主人公席”だ。
伊達先輩は何やら資料を読んでいた。
「恵梨香。武田君が来たよ」
上杉先輩が話しかけると伊達先輩は顔を上げた。
「あら、武田君。何か用?」
「え? いや、伊達先輩に用があったわけではないのですが…」
「廊下で武田君を見かけたから、恵梨香に挨拶させようと思って連れて来た」
上杉先輩が説明すると、伊達先輩が尋ねた。
「どうして2年生のフロアにいるのかしら?」
「ホワイトデーのクッキーを渡しに来たんですよ」
「2年生からも、もらっていたのね」
伊達先輩は感心したように言う。
「ええ、片倉先輩に聞いたら2年D組の人だと教えてくれたので」
などと話をしていると、別の男子生徒が近づいてきて話しかけられた。
「やあ、武田君」
僕は、そちらのほうを向いた。
眼鏡を掛けた七三分けの真面目そうな男子…。
以前会ったことあるよな…、でも誰だっけ?
僕は誤魔化すように挨拶をする。
「こ、こんにちは…」
七三分け眼鏡男子は話を始める。
「今日の放課後は、上杉さんをお借りするからね」
「え? お借りする? 上杉先輩を?」
何の話か見えなくて僕は混乱する。
「なんの話ですか?」
「え? 聞いてないのかい?」
七三分け眼鏡男子は、ちょっと驚いたようだが詳細を説明してくれる。
「新聞部の片倉君から、上杉さんが将棋をやっているという話を聞いて、ウチの成田に将棋対決させることにしたんだよ。その様子をYouTubeにアップしようっていう、将棋部と新聞部の共同企画だよ」
上杉先輩と成田さんの対決って、勝負にならないだろう。
成田さんの圧勝でしょ?
でも七三分け眼鏡男子、将棋部の部員ということか…。
思い出した! 将棋部の部長の十河《そごう》先輩だ。
「そうですか…、初耳でした」
上杉先輩が何をしようと僕は興味がない。
「キミが部室に全然来ないからでしょ?!」
僕の答えに、上杉先輩は少々怒ったように文句を言う。
「昨日、僕と片倉君が歴史研の部室に行って、この話をしたんだよ」
七三分け眼鏡男子は、微笑みながら話す。
「急な話に関わらず、上杉さんに色よい返事がもらえたから良かったよ」
「という訳で、今日の放課後は将棋部の部室に行くよ」
上杉先輩は、今度はドヤ顔で言う。
何でドヤ顔?
将棋部でも囲碁部でも好きに行けばいい。
「えーっと…。ホワイトデーのクッキーを渡しに行きたいので、もういいですか?」
会話が一区切りついたので僕は言った。
「うん。呼び止めて悪かったね」
上杉先輩は笑いながらそう言うと僕を解放してくれた。
余計な時間を使ってしまったな。
僕は廊下に戻ると、2年D組を目指す。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる