雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

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迷走する新春編

アイドルライブ

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 土曜日。
 今日は夕方から、アイドルユニット“O.M.G.”のライブを見に行くことになっている。
 それまでは時間がたっぷりあるので、ちょっと余裕がある。

 なので、朝はゆっくり起きて、昨日もらったショートムービーの台本を読んでいた。
 内容は、雑司が谷高校が舞台の恋愛もの。
 恋愛ものなので、歯の浮くようなセリフが多い。
 セリフの数は、主役なので他の出演者と比べて相対的に多目だが、そもそも作品が短いので、絶対的には少ない。
 僕の撮影は3月になるということで、まだ2か月もあるから楽勝で覚えられそうだ。

 読み進めて、台本の最後の部分に差し掛かる。
 これ、キスシーンがあるじゃん…。
 ヒロイン役の雪乃とのキスが、また世間にさらされるということか…?
 雪乃はキスしているところを他人に見られるのは、全然抵抗ないみたいだけど、僕は演技とは言え抵抗ある。
 でも、今更、断れないだろうし、諦めることにする。
 誰も見ていないところだったら、いくらでもキスするんだけどな。

 そして、雪乃とキスしたいと思っても、彼女は他のムービーにも出演するということで、2~3月は放課後も、週末も撮影と練習でほとんど埋まってしまうという。
 彼女と会う機会は、(仮)で付き合っていた11月の時のように、グッと減ることになる。
 折角、気が変わってH なことを沢山やろうと思っていたのに、しばらくお預けになりそうだ。残念。
 なんか、うまくいかないなあ…。

 午後は、宿題したり、ちょっとだけVRゲームしたりして過ごす。
 そして、ライブを見るために出かけるので、それの準備を始める。
 今日のライブ会場は秋葉原らしい。

 と言いう訳で、家を出発。
 地下鉄の護国寺駅まで徒歩で移動し、飯田橋でJRに乗り換えて秋葉原まで。
 ライブハウスは秋葉原駅から徒歩7,8分にある。
 辺りは雑居ビルがひしめくところ。
 あるビルの地下にライブハウスはあった。

 階段で地下に降りてライブハウスの扉の前へ。
 静かなので、ライブはまだ始まっていないようだ。
 扉の横で待ち構えている受付のお姉さんに、自分の名前と“O.M.G.”の関係者だと言うと、すんなり中へ通してくれた。

 扉を開けると、観客50人程度でいっぱいになる、小さなライブハウスだった。
 会場はすでに、お客さんでいっぱいだった。
 今日のイベントは、いわゆる “対バンライブ” と言うらしくて、複数の出演者が15~20分ほどの持ち時間で、次々とパフォーマンスするというもの。
 ということで、“O.M.G.”以外にも多くのアイドルが出るらしい。

 ほどなくして、ライブが始まった。
 音楽が大音量で流されて、耳を刺激する。
 お客さんは最初から大盛り上がりで、掛け声を掛けたり(ミックスと言うらしい)、踊ったり(オタ芸)している。
 僕はそれに圧倒されながら、一番後ろの壁際に張り付いて見ていた。

 歌われる曲は、聞いたことのあるアニソンとか歌謡曲。あとは、それぞれのアイドルのオリジナル曲のようだ。
 各出演者の衣装はそれぞれ、フリル多めの可愛らしいものだったり、和服をアレンジしたようなものだったり、セーラー服とか色々特徴を出している。

 そして、いよいよトリで“O.M.G.”の登場。
 衣装は、以前学園祭の時と同じ、何とかっていうアニメの魔法少女衣装。
 曲も以前、パフォーマンスしていた曲で聞いたことがあった。
 持ち時間の20分はアッという間に終了。

 この後は、物販タイム。
 スタッフがテーブル出してきて、アイドルたちは、その上に自分たちの商品、グッズを並べる。
 アイドルはこの物販で、CDや写真などのグッズを売ったり、ファンとチェキを取ったりして交流する。
 これはファンを増やしたり、売り上げを活動資金にするために重要。
 と、先日、マックでいろいろレクチャー受けた時に教えてもらった。

 真帆は僕を見つけると大声で呼び掛けて来た。
「純ちゃん、こっち来て!」

 名前を呼ばれたので戸惑った。
「お、おう…」
 それでも、言われたとおりに歩み寄る。

「お願い、ちょっと手伝って」

「お、おう…」
 僕は戸惑いながらも、指示通りに物販を手伝う。
 物販に並ぶファンを捌いたり、チェキの写真を撮ったり、物販のお金のやり取りとか、やらされた。
 なんか、O.M.G.のスタッフみたいだ。
 ファンに世間話をされたりもして、かなり戸惑う。
 そして、ファンの年齢層、結構高いな…。

 1時間もして物販はなんとか無事終了。
 どっと疲れた。

 これで、イベントは完全に終了。アイドル達は帰り支度をするらしい。
 僕は真帆の指示で、近くの喫茶店で待つように言われたのでその通りにする。
 ライブハウスを出て行こうとしたところで、後ろから声を掛けられた。
 振り明けると、さっき出演していた和服をアレンジした衣装を着ていた小柄なアイドルが立っていた。

「O.M.G.さんのプロデューサーさんですか?」

「え…、ま、まあ…、そうです」
 もう、知られているのか?

「最近、真帆ちゃんにプロデューサーさんが出来たって聞きました! 私、こういう者です、O.M.G.さんにはよく一緒になるんですよ! 今後もよろしくお願いします!」

 といって、手渡してきたのは彼女のフライヤー。
 見ると彼女の名前は“春日局”、面白い芸名を付けるなあ…。
 そして、僕をなんか偉い人と勘違いしてるのでは?
 見ての通り、ただの高校生なんだけど。
 “春日局”とちょっとだけ話をして、ライブハウスを後にした。

 指定された喫茶店でコーヒーを飲みながら20分ほど待ったら、O.M.G.の3人が喫茶店にやって来た。
 3人それぞれ旅行に行くようなキャリーバッグを引いている。衣装や物販のグッズなのがあるので、荷物が多くなるんだそうな。

「純ちゃん、お待たせ―」

「や、やあ…」

 3人は僕と同じテーブルの席に座る。

「ライブどうだった?」
 横に座った真帆は感想を聞いて来る。

「なんか圧倒されたよ」

「あはは、すぐ慣れるよ」

「あと、物販の手伝い…、ああいうのは苦手だ」

「それも、慣れる慣れる」

 簡単に言うなあ…。
 てか、今後もやらされるのか?

「それで、私たちのライブをみて、何か改善点とかあるかな?」

 そうだった、オブザーバー的に何か意見を言わないといけないのだった。
 特にない。
 なんとか、質問を絞り出す。
「そうだな…、衣装はいつもあれなの?」

「最近、『たのまほ』の第2期が決まったので、今回はその魔法少女衣装にしたのよ。他にもいくつか衣装はあって、ローテーションしてる」

「そうか…」
 あんまり、指摘できることはないな…。

「純ちゃんは、どういう衣装が好き?」
 真帆が尋ねた。

「そうだな…。途中で出ててたアイドルで、フリル多めのものは可愛かったな。あれで、スカートが短いともっと良い」

「純ちゃん、エロいなー」
 真帆は笑った。
「でも、ライブ衣装のスカートの下は、みんな、見せパンとかだから、別に見えてもいいんだよ」

「そうなのか…。それで、衣装って自分たちで作るの?」

「私たちのは市販のもので、良さげなものを買ってる」

「じゃあ、お金かかるね」

「なるべく、安い物を選んでるよ。でも、私たちはそれなりにファンが居て、物販も売り上げもあるし、高校生で実家暮らしだから活動費は余裕があるほう」

「ほほう」
 たしかに、今日も物販でも現金が飛び交っていた。

「でも今日は、純ちゃんが物販スタッフやってくれて助かったよー」

「それは、お役に立ててよかったよ」

「で、今日のお礼」
 真帆は、茶封筒を手渡してきた。

「何これ?」

「今日のスタッフを手伝ってくれたお礼。少ないけど」

「えっ!? いいの?」
 まさかバイト代くれるとは。
 ライブを見て、物販を1時間程、手伝っただけなのに。

「いつも物販スタッフが居なかったから、結構大変だったけど、助かったよ。今後も、手伝ってね」

 実のところ、彼女たちはプロデューサーというより、お手伝いスタッフが欲しかったのでは?
 まあ、バイト代が出るなら、それでも良いかなと思い始めている。

 続いて、宇喜多さんが話を始めた。
「それで相談。今月末に遠征があるんだけど、純ちゃんも付いて来てくれないかな?」

「“遠征”ってなんだっけ?」

「地方のライブハウスに出るってこと。今月末に郡山のライブに出るんだけど、良かったら一緒に来てよ」

「郡山ってどこ?」

「福島県。東京から新幹線で1時間と少しで行けるよ。ライブは、土曜夜と日曜夕方にそれぞれ1回ずつ、合計2回。泊りになるけど良いかな?」

「まあ、暇だし、いいよ」
 泊まりは歴史研究部のお城巡りで何度もやっているので抵抗はない。
「それにしても新幹線で行けるとは、資金が潤沢なんだね」

「今回、私らの旅費は現地のイベンターさんが出してくれるんだよ。私らは動員力があるからね。純ちゃんの分は、私たちが持つよ」

「いいの?」

「なんとか大丈夫。郡山でも無茶苦茶売り上げるから」

「郡山にもファンがいるってこと? すごいね」

「郡山にも少し居るし、東京から追っかけが、それなりに来るから東京でやるのと同じぐらい売り上げがありそうなの」

 追っかけか。それはスゴイな。
 O.M.G.のファンの多さに感心しつつ、その後は、遠征の予定と他の日程のライブの予定の確認などをして別れた。
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