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番外編(後日談)
番外編4 ねえ、レオルド わたしたち、絶体絶命だったはずだよね?−1 *
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* * * * * * * * * *
ふたりが結婚してから最初の冬。
とあるお仕事で、雪国へ向かったときのおはなし。
* * * * * * * * * *
何がいったいどうなって、こんなことになってるのかな……。
ぴったりとくっついている肌があったかい。
ちょっとでも離れたら、ひゅって冷たい空気が入るからってね? さっきからずっと、レオルドにぎゅうぎゅうに抱きしめられているわけで。
わたし――シェリル・アルメニオも、なんだか動くのが申し訳なくって、ぴっとりと彼にしがみつくと、彼が喉の奥で笑うのが聞こえた。
いやいや待ってよ、レオルド。
今、わたしたちって、一応、命の危険にさらされているんじゃないの?
なのにレオルドってば、なんだか余裕たっぷりだし、この状況楽しんでない!?
(絶体絶命のはずなんだけどなあ……)
おかしい。
レオルドといると、緊張感なんていうものとは完全に無縁になるわけで。
(わたしも、漠然とだけど、大丈夫って思えてきちゃうし……)
――そう。
わたしとレオルドはいま、お互い背中にコートをかけながらも、互いに裸で抱き合っている状況なわけで。
しかも。
雪山の。
洞窟で。
寝るな! 寝たら死ぬぞ!! って状況に追いこまれているわけでして……。
(こんな状況、物語で読むだけでお腹いっぱいだったんだけど)
なってしまったものは仕方ない。
それもこれも全部、今回受けた依頼で、ちょーっと事件に巻き込まれたからなんだけどね?
今回の依頼はとある雪国にある都市。
わたしの結びの魔法で、はやめに春を呼び込んでほしいっていう依頼だった。で、現地に向かおうとした最中――まさかの賊に襲われました。
っていうか、経由してきた途中の街でさ、ちょこーっとレオルドと一緒に捕りもののお手伝いしたことが引き金になったっぽくってね? ……多分、というか、完全に逆恨みです。
捕らえた賊たちの仲間に待ち伏せされました。
……まあ、それはいいの。結構よくあることだし。
レオルドがいれば大抵のことは片づいちゃうから、最近はキースもアンナも出番がないってぼやいているくらい。
でもね?
これまたちょこーっと力加減をあやまっちゃったレオルドのせいで、なぜか雪崩に巻き込まれて、わたしたちふたりだけ流されて来ちゃいましたとさ。めでたしめでたし。
「……はぁ」
がっくりとうな垂れながら、わたしは回想を終了した。
アンナやキースや、案内の人たちが巻き込まれなかったのは本当に良かったと思う。……んだけど、多分、すっごく心配させてるだろうし、もしかしたら暗くなった今も必死で探してくれているかもしれない。
レオルドがいるから、大丈夫だって信じて待っててくれるならいいんだけど、暗くなったときに捜索とか危ないことしていないか、わたしも不安になるわけで。
(でも、レオルドもわたしも、ピンピンしてるんだよね……)
絶体絶命だったはずだし、なんなら今だってけっこうなピンチだと思うのだけれど、悲壮感はゼロ。
むしろレオルドなんか、鼻歌でも歌い出しそうなくらいご機嫌な気がするんだけど、なんでだろうね?
えっと? ここは雪山ですよ? 一応雪は凌げる洞窟見つけて入ったといっても、極寒の地ですよ? 油断したら凍死まっしぐらですよ? どうしてそんな楽しそうな――――って、ああ。
……裸で抱き合っているからこそ、わたしはすぐに気がついてしまった。
雪崩に巻き込まれ、そこから脱出するときもそうだったし、なんだったら野盗に襲われたときもそう。……レオルドってば、全力で魔力を使っていたわけで。
「ねえ、レオルド」
「ん?」
「こんなときに……」
「んー? 何の話だあ?」
ニヤニヤとしている彼の表情は、下心満載というか、ぜんっぜん隠す気なんてない。
わたしは彼の膝のうえに腰かけてるんだけどさ? その……太腿のところにね? 当たっているわけで。彼の、モノが。
「…………」
「仕方ねえだろ? あんだけ全力で魔法ぶっぱなしてやったんだからよ」
「その結果が、今の状況なんですけど」
「くくっ! ちっとばかし、やりすぎちまったな」
「笑ってる状況じゃないでしょ……」
はぁ。
わざとらしく溜め息をついたけど、レオルドってばどこ吹く風。わたしの顎をとって上向きにさせたと思うと、ゆっくりと唇を押しつけてきた。
「…………唇、つめたい」
「じゃ、お前が温めてくれ。な?」
ふたりが結婚してから最初の冬。
とあるお仕事で、雪国へ向かったときのおはなし。
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何がいったいどうなって、こんなことになってるのかな……。
ぴったりとくっついている肌があったかい。
ちょっとでも離れたら、ひゅって冷たい空気が入るからってね? さっきからずっと、レオルドにぎゅうぎゅうに抱きしめられているわけで。
わたし――シェリル・アルメニオも、なんだか動くのが申し訳なくって、ぴっとりと彼にしがみつくと、彼が喉の奥で笑うのが聞こえた。
いやいや待ってよ、レオルド。
今、わたしたちって、一応、命の危険にさらされているんじゃないの?
なのにレオルドってば、なんだか余裕たっぷりだし、この状況楽しんでない!?
(絶体絶命のはずなんだけどなあ……)
おかしい。
レオルドといると、緊張感なんていうものとは完全に無縁になるわけで。
(わたしも、漠然とだけど、大丈夫って思えてきちゃうし……)
――そう。
わたしとレオルドはいま、お互い背中にコートをかけながらも、互いに裸で抱き合っている状況なわけで。
しかも。
雪山の。
洞窟で。
寝るな! 寝たら死ぬぞ!! って状況に追いこまれているわけでして……。
(こんな状況、物語で読むだけでお腹いっぱいだったんだけど)
なってしまったものは仕方ない。
それもこれも全部、今回受けた依頼で、ちょーっと事件に巻き込まれたからなんだけどね?
今回の依頼はとある雪国にある都市。
わたしの結びの魔法で、はやめに春を呼び込んでほしいっていう依頼だった。で、現地に向かおうとした最中――まさかの賊に襲われました。
っていうか、経由してきた途中の街でさ、ちょこーっとレオルドと一緒に捕りもののお手伝いしたことが引き金になったっぽくってね? ……多分、というか、完全に逆恨みです。
捕らえた賊たちの仲間に待ち伏せされました。
……まあ、それはいいの。結構よくあることだし。
レオルドがいれば大抵のことは片づいちゃうから、最近はキースもアンナも出番がないってぼやいているくらい。
でもね?
これまたちょこーっと力加減をあやまっちゃったレオルドのせいで、なぜか雪崩に巻き込まれて、わたしたちふたりだけ流されて来ちゃいましたとさ。めでたしめでたし。
「……はぁ」
がっくりとうな垂れながら、わたしは回想を終了した。
アンナやキースや、案内の人たちが巻き込まれなかったのは本当に良かったと思う。……んだけど、多分、すっごく心配させてるだろうし、もしかしたら暗くなった今も必死で探してくれているかもしれない。
レオルドがいるから、大丈夫だって信じて待っててくれるならいいんだけど、暗くなったときに捜索とか危ないことしていないか、わたしも不安になるわけで。
(でも、レオルドもわたしも、ピンピンしてるんだよね……)
絶体絶命だったはずだし、なんなら今だってけっこうなピンチだと思うのだけれど、悲壮感はゼロ。
むしろレオルドなんか、鼻歌でも歌い出しそうなくらいご機嫌な気がするんだけど、なんでだろうね?
えっと? ここは雪山ですよ? 一応雪は凌げる洞窟見つけて入ったといっても、極寒の地ですよ? 油断したら凍死まっしぐらですよ? どうしてそんな楽しそうな――――って、ああ。
……裸で抱き合っているからこそ、わたしはすぐに気がついてしまった。
雪崩に巻き込まれ、そこから脱出するときもそうだったし、なんだったら野盗に襲われたときもそう。……レオルドってば、全力で魔力を使っていたわけで。
「ねえ、レオルド」
「ん?」
「こんなときに……」
「んー? 何の話だあ?」
ニヤニヤとしている彼の表情は、下心満載というか、ぜんっぜん隠す気なんてない。
わたしは彼の膝のうえに腰かけてるんだけどさ? その……太腿のところにね? 当たっているわけで。彼の、モノが。
「…………」
「仕方ねえだろ? あんだけ全力で魔法ぶっぱなしてやったんだからよ」
「その結果が、今の状況なんですけど」
「くくっ! ちっとばかし、やりすぎちまったな」
「笑ってる状況じゃないでしょ……」
はぁ。
わざとらしく溜め息をついたけど、レオルドってばどこ吹く風。わたしの顎をとって上向きにさせたと思うと、ゆっくりと唇を押しつけてきた。
「…………唇、つめたい」
「じゃ、お前が温めてくれ。な?」
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