絶倫騎士さまが離してくれません!

浅岸 久

文字の大きさ
33 / 54
番外編(後日談)

番外編4 ねえ、レオルド わたしたち、絶体絶命だったはずだよね?−1 *

しおりを挟む
* * * * * * * * * *

ふたりが結婚してから最初の冬。
とあるお仕事で、雪国へ向かったときのおはなし。

* * * * * * * * * *


 何がいったいどうなって、こんなことになってるのかな……。

 ぴったりとくっついている肌があったかい。
 ちょっとでも離れたら、ひゅって冷たい空気が入るからってね? さっきからずっと、レオルドにぎゅうぎゅうに抱きしめられているわけで。
 わたし――シェリル・アルメニオも、なんだか動くのが申し訳なくって、ぴっとりと彼にしがみつくと、彼が喉の奥で笑うのが聞こえた。


 いやいや待ってよ、レオルド。
 今、わたしたちって、一応、命の危険にさらされているんじゃないの?
 なのにレオルドってば、なんだか余裕たっぷりだし、この状況楽しんでない!?

(絶体絶命のはずなんだけどなあ……)

 おかしい。
 レオルドといると、緊張感なんていうものとは完全に無縁になるわけで。

(わたしも、漠然とだけど、大丈夫って思えてきちゃうし……)

 ――そう。
 わたしとレオルドはいま、お互い背中にコートをかけながらも、互いに裸で抱き合っている状況なわけで。
 しかも。
 雪山の。
 洞窟で。
 寝るな! 寝たら死ぬぞ!! って状況に追いこまれているわけでして……。

(こんな状況、物語で読むだけでお腹いっぱいだったんだけど)

 なってしまったものは仕方ない。
 それもこれも全部、今回受けた依頼で、ちょーっと事件に巻き込まれたからなんだけどね?



 今回の依頼はとある雪国にある都市。
 わたしの結びの魔法で、はやめに春を呼び込んでほしいっていう依頼だった。で、現地に向かおうとした最中――まさかの賊に襲われました。

 っていうか、経由してきた途中の街でさ、ちょこーっとレオルドと一緒に捕りもののお手伝いしたことが引き金になったっぽくってね? ……多分、というか、完全に逆恨みです。

 捕らえた賊たちの仲間に待ち伏せされました。
 ……まあ、それはいいの。結構よくあることだし。
 レオルドがいれば大抵のことは片づいちゃうから、最近はキースもアンナも出番がないってぼやいているくらい。
 でもね?
 これまたちょこーっと力加減をあやまっちゃったレオルドのせいで、なぜか雪崩に巻き込まれて、わたしたちふたりだけ流されて来ちゃいましたとさ。めでたしめでたし。


「……はぁ」

 がっくりとうな垂れながら、わたしは回想を終了した。
 アンナやキースや、案内の人たちが巻き込まれなかったのは本当に良かったと思う。……んだけど、多分、すっごく心配させてるだろうし、もしかしたら暗くなった今も必死で探してくれているかもしれない。

 レオルドがいるから、大丈夫だって信じて待っててくれるならいいんだけど、暗くなったときに捜索とか危ないことしていないか、わたしも不安になるわけで。

(でも、レオルドもわたしも、ピンピンしてるんだよね……)

 絶体絶命だったはずだし、なんなら今だってけっこうなピンチだと思うのだけれど、悲壮感はゼロ。
 むしろレオルドなんか、鼻歌でも歌い出しそうなくらいご機嫌な気がするんだけど、なんでだろうね?

 えっと? ここは雪山ですよ? 一応雪は凌げる洞窟見つけて入ったといっても、極寒の地ですよ? 油断したら凍死まっしぐらですよ? どうしてそんな楽しそうな――――って、ああ。 

 ……裸で抱き合っているからこそ、わたしはすぐに気がついてしまった。
 雪崩に巻き込まれ、そこから脱出するときもそうだったし、なんだったら野盗に襲われたときもそう。……レオルドってば、全力で魔力を使っていたわけで。

「ねえ、レオルド」
「ん?」
「こんなときに……」
「んー? 何の話だあ?」

 ニヤニヤとしている彼の表情は、下心満載というか、ぜんっぜん隠す気なんてない。
 わたしは彼の膝のうえに腰かけてるんだけどさ? その……太腿のところにね? 当たっているわけで。彼の、モノが。

「…………」
「仕方ねえだろ? あんだけ全力で魔法ぶっぱなしてやったんだからよ」
「その結果が、今の状況なんですけど」
「くくっ! ちっとばかし、やりすぎちまったな」
「笑ってる状況じゃないでしょ……」

 はぁ。
 わざとらしく溜め息をついたけど、レオルドってばどこ吹く風。わたしの顎をとって上向きにさせたと思うと、ゆっくりと唇を押しつけてきた。

「…………唇、つめたい」
「じゃ、お前が温めてくれ。な?」
しおりを挟む
感想 150

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。