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番外編(後日談)
番外編3 なあ、シェリル ご機嫌直してくれねえかな?
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* * * * * * * * * *
その日、レオルドはシェリルとともに
街中をぶらぶら買い物デートしていた。
※1話完結のSSです
* * * * * * * * * *
ふわっと甘い花の香りがした。
ついその方向を目で追うと、豊かなウェーブの茶色い髪に、でっけえおっぱいを主張する形のワンピースを着た女がひとり。
観光客を呼び込むために昼間っから男どもに流し目をおくる店の売り子だということを悟る。
目があうとオレの方にパチンとウインクして、少し見ていかない? と声をかけてくる。……ったく、ちゃっかりしてるよなあ。
フォ=レナーゼは商業が盛んなだけあって、観光客もそれなりにやってくる。
ここから南、海沿いにかけてはリゾート地として富豪どもの別荘地になっているしな。このフォ=レナーゼの首都も、各地の珍しいモンが揃いやがる土地柄だからか、なかなか人気の観光スポットってわけだ。
デガンとは全然ちがって、街をあるけば新しいもの、珍しいものにどんどん出会えちまう。
港沿いや、ちょっと内地へ入ったところにある中央広場あたりは――まあ、そういう新しいモン好きな男女が行き交う、いわばデートスポットってわけなんだがな。
ああいう格好の女は……まあ、ちっとばかし開放的なこの土地柄、珍しいものではないのだろう。
女を主張してくるタイプの売り子に、脂下がる男はひとりやふたりじゃない。
こうして絡まれると、なんだか少し懐かしい気がして、なんとも言えない気持ちになる。
……まあ、正直なところ? 昔はオレも、ああいう女がタイプだった。
――むぎゅ。
……と。
ついつい昔の自分を懐かしんでいたら、俺の足が小さい足に容赦なく踏まれていた。
おそらく痛みを感じるようにやってるんだろうが。
(……悪いが、今の頑丈なオレのブーツじゃ、その重みもあんまり感じねえんだよな)
だがその自己主張が可愛くて踏まれた方向を見下ろす。
オレの腕をぎゅぎゅっとひっぱる華奢な手に、ついつい様相を崩してしまうのはしょうがないことだろう。
ぷっくりとふくれた頬は、ご機嫌斜めな証拠だ。
それがあまりに可愛くて、くくくと笑っちまったが、シェリルのヤツはますますぷっくりと頬を膨らませ、ぐいぐいとオレを引っ張っていく。
どうやらあの女と距離をとりたいらしい。
(なんだよ、オレが見とれたとでも思ったのか?)
まあ、でけえ胸を晒されて目で追うなっていうのは、さすがにちょっと難しい。
でもまあ、シェリルのヤツ、まったくわかってねえな。
オレが欲情するのは、世界でただひとり、お前だけなんだけどな?
「なんだよ、スネてんのか?」
「どうせ、お子様みたいだもん」
「ははっ」
「馬鹿にしないでよ。男の人なんだから、仕方ないんでしょ? 知ってるよ? でも、一緒に居るときは、やなんだもん。――それに、拗ねちゃう自分が嫌なだけ」
「くくくっ」
「情けないって思ってるんだから、笑わないでよ」
ぷりぷりと怒って、自己反省しているコイツが可愛らしい。真面目っこちゃんが一人前に嫉妬してやがる。
がしがしと頭を撫でると、ちょっとばつの悪そうな顔をしてシェリルの腕に力がこもる。
こうやって嫉妬されるのも、シェリルだから悪くない。つーか、むしろ、油断すると表情が緩みそうで困るな。
(早いところ帰って抱くか、今日は)
いや、今日もだな?
オレの身体は正直だから、愛情を伝えようとすると抱きたくなっちまって困る。
まだ真っ昼間で、街のど真ん中だから我慢をしなきゃなんねえけど、ぷっくりふくれたご機嫌斜めなほっぺたをつつきながら、オレは進行方向を変えることにした。
その日、レオルドはシェリルとともに
街中をぶらぶら買い物デートしていた。
※1話完結のSSです
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ふわっと甘い花の香りがした。
ついその方向を目で追うと、豊かなウェーブの茶色い髪に、でっけえおっぱいを主張する形のワンピースを着た女がひとり。
観光客を呼び込むために昼間っから男どもに流し目をおくる店の売り子だということを悟る。
目があうとオレの方にパチンとウインクして、少し見ていかない? と声をかけてくる。……ったく、ちゃっかりしてるよなあ。
フォ=レナーゼは商業が盛んなだけあって、観光客もそれなりにやってくる。
ここから南、海沿いにかけてはリゾート地として富豪どもの別荘地になっているしな。このフォ=レナーゼの首都も、各地の珍しいモンが揃いやがる土地柄だからか、なかなか人気の観光スポットってわけだ。
デガンとは全然ちがって、街をあるけば新しいもの、珍しいものにどんどん出会えちまう。
港沿いや、ちょっと内地へ入ったところにある中央広場あたりは――まあ、そういう新しいモン好きな男女が行き交う、いわばデートスポットってわけなんだがな。
ああいう格好の女は……まあ、ちっとばかし開放的なこの土地柄、珍しいものではないのだろう。
女を主張してくるタイプの売り子に、脂下がる男はひとりやふたりじゃない。
こうして絡まれると、なんだか少し懐かしい気がして、なんとも言えない気持ちになる。
……まあ、正直なところ? 昔はオレも、ああいう女がタイプだった。
――むぎゅ。
……と。
ついつい昔の自分を懐かしんでいたら、俺の足が小さい足に容赦なく踏まれていた。
おそらく痛みを感じるようにやってるんだろうが。
(……悪いが、今の頑丈なオレのブーツじゃ、その重みもあんまり感じねえんだよな)
だがその自己主張が可愛くて踏まれた方向を見下ろす。
オレの腕をぎゅぎゅっとひっぱる華奢な手に、ついつい様相を崩してしまうのはしょうがないことだろう。
ぷっくりとふくれた頬は、ご機嫌斜めな証拠だ。
それがあまりに可愛くて、くくくと笑っちまったが、シェリルのヤツはますますぷっくりと頬を膨らませ、ぐいぐいとオレを引っ張っていく。
どうやらあの女と距離をとりたいらしい。
(なんだよ、オレが見とれたとでも思ったのか?)
まあ、でけえ胸を晒されて目で追うなっていうのは、さすがにちょっと難しい。
でもまあ、シェリルのヤツ、まったくわかってねえな。
オレが欲情するのは、世界でただひとり、お前だけなんだけどな?
「なんだよ、スネてんのか?」
「どうせ、お子様みたいだもん」
「ははっ」
「馬鹿にしないでよ。男の人なんだから、仕方ないんでしょ? 知ってるよ? でも、一緒に居るときは、やなんだもん。――それに、拗ねちゃう自分が嫌なだけ」
「くくくっ」
「情けないって思ってるんだから、笑わないでよ」
ぷりぷりと怒って、自己反省しているコイツが可愛らしい。真面目っこちゃんが一人前に嫉妬してやがる。
がしがしと頭を撫でると、ちょっとばつの悪そうな顔をしてシェリルの腕に力がこもる。
こうやって嫉妬されるのも、シェリルだから悪くない。つーか、むしろ、油断すると表情が緩みそうで困るな。
(早いところ帰って抱くか、今日は)
いや、今日もだな?
オレの身体は正直だから、愛情を伝えようとすると抱きたくなっちまって困る。
まだ真っ昼間で、街のど真ん中だから我慢をしなきゃなんねえけど、ぷっくりふくれたご機嫌斜めなほっぺたをつつきながら、オレは進行方向を変えることにした。
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