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第1部 私の推しくんを返せ

第7話 憎悪

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「くやしい~~~~~~~~!!」

「めぁりのやっほんっとムカっくんだけどぉ~~!」

「えぇ……(困惑)」

教室に帰ってきてしばらくほっといたら2人は勝手に目を覚ました。そしてこれだ。京サマに壁ドンしてもらった如月が羨ましくて嫉妬に狂ってるらしい。

……言うてそんな初対面の相手に壁ドンされて嬉しいか?……あ、如月が転校生だから初対面だっただけで2人は去年から知ってるのか。私も原作とアニメ見てたし実質友達みたいなもんだろ(一方通行)

もしサトーくんに壁ドンしてもらえたら、で妄想してみたけど原作サトーくん基本熱血たまにヘタレ(??)だから違和感ありすぎて解釈違いですぐやめた

「京サマよりサトーくんの方がアタシはカッコイイと思うけど」

机に突っ伏してキレ散らかしていた2人が顔を上げる。そこからしばらく2人にサトーくんのカッコ良さ素晴らしさ可愛らしさ愛おしさについて滔々と語ってやったら、2人はしきりに首を傾げてた。

当然だ。私の大好きな原作設定とこの世界じゃあ見た目と名前以外に一致してる部分ほぼ無いんだから。



そうこうしてるうちにチャイムがなって、京サマにキュン死させられた女子生徒とか、如月の一味が教室へ帰ってきた。

その後、一時間目はまた体育だった。まだ体育大会の時期でもないのにやたらと体育が多くて正直キツいんじゃないかと思った。

今日の授業は屋外でサッカー……だったんだけど、気づいたらいつの間にか、葉月と京サマと風見と、あとサトーくんが如月を取り合って四人で勝負してた。

……如月、ほんとお前愛されてるな。ちっとも羨ましか無いが。

『みんなやめてよっ、喧嘩しないで……』 

如月は泣きそうな顔でおどおどしてる。その頭をユイが撫でる。

……っていうかクラスのイケメン男子がみんなこぞって如月に夢中なんで、今如月はクラス中の女子たちからヘイトを集めまくっている。スッゴイカワイソ

クラスの女子のカースト図を書くなら、一応頂点が私……悪子、んでそのしたに肝子と毒子、あとは描写すらしてもらえないモブたち……となる。

まだ権力で下々の者に言うこと聞かせられる立ち位置で良かった。今クラスでいじめとかは無いみたいだけど、いじめられッ子ポジとかだったら多分今以上にキツかったと思う。

……っていうかさっきから後ろの女子が『萌亜璃ウザイ』だの『萌亜璃ムカつく』だのうっおとしいことこの上ない。二度と口聞けねぇようにしてやろうか(過激派)



なかなか勝負が決まらず、1時間目が終わろうとしていた時……

『うっ……』

「!?……萌亜璃、どうしたの!?」

急に如月が貧血かなんかで倒れた。こいついっつも倒れてんな

また運搬役の取り合いになるのか……と悟ってたら、1人がすっと如月の前に現れた。

「よかったら私が運ぶよ」

「え、でも……」

突然如月の運搬を名乗り出た茶髪の女子生徒に、ユイも困惑気味。

「いいから……如月さん大丈夫?」

その女子生徒は如月に方を貸すと、半ば引きずるようにして校舎の方へと去っていった。

べらぼうに怪しい。

「肝子、毒子、アタシちょっと気持ち悪くなってきた……熱中症かも……」

「えぇ~~!?だいじょーぶ?!?」

「ほけんしっ、ぃったほぉがぃぃょぉ」

こいつらちょれぇ。知ってたけど。今日たまたま暑かったんで熱中症が言い訳に使えてよかった。……前になったことあるからわかるが、実際の熱中症はもっとキツい。吐き気すごかった。

とにかくこれで授業をフケられるので、私は校舎の方に向かって……さっきのモブ女子生徒と夢主を追っていくのだった。

校舎のなかに入ってからは誰にみられることも無いんでできるだけ足音を立てずダッシュ。すぐに二人に追い付いた。

見つからないように、わざと二人より遅れて保健室に入る……と見せかけて、入り口すぐ横の壁に背をつけて中の様子をちらりと伺ってみる。

『……ひ、平野さん……?』

どうやら茶髪の女子生徒は平野と言う名前らしい。

平野はいきなり如月を乱暴に突き飛ばした。

『きゃあっ!』

「あんたねぇ!たいして可愛くもないくせにみんなからちやほやちやほやされてムカつくのよっ!」

……ちやほやしてるやつよりも憎んでるやつの方が多いと思うんですけど

あっ待て最強夢主のはずの如月が何故かクソザコモブ女に手も足も出ないまま始末されちゃう止めなきゃ

ここでハイキックとかのめっちゃかっこいい技で、モブ女の振り上げた手を防いだりしたら痺あこなんだろうけど、そんなことできないので……

慌てて保健室に入ると、そのまま振り上げられたモブ女の手首を掴んでぐるっと捻ってみる。私でもできるじゃんこいつ非力すぎ。なんで如月負けてんの??

「なにしてんの?」

「……ヒッ!?悪子!?」

めっちゃビビるやん。そんなに私が怖いのか……今までに悪子は一体どれだけのことしてきたんだろう。

「如月はアタシの(仲間になってくれるかもしれない女)よ。……余計なことはしないでくれる?」

私が低めの声でそう言って脅してみると平野はめちゃくちゃビビって私の手を振り払うと、ダッシュで保健室を出て行った。

……さて早くみんなのとこに戻りましょうそうしましょう。

『待って!』

うげ、案の定如月に袖つかまれた……

「……なによ」

『……なんでもない』

マジで何こいつ。『またさっきみたいなことが起こったら怖いから一緒にいて欲しい』ってんならはっきり言えばいいのに。そういうとこだぞ

「……アタシ暇じゃないの。邪魔しないでくれる?」

『でも多田野さんさっき……』

「…………何よ」

立ち去ろうとしたらまた袖を引かれた。イライラ。そんなこと考えてたら如月は急に頬を染め出した。

『……多田野さん、『如月は私のよ』って……』

………………………………そういやそんなこと言ったっけ?

鈍感キラキラぽっと出神寵愛受夢主の癖になんでそういう余計なことばっかり覚えてんの?滅ぼされたいの?

「…………………………だから何よ、早く戻らないと私の内申下がるでしょ。アタシはアンタと馴れ合うつもりはないの」

『は、はい……ごめんなさい……』

私がジト目で睨んで言い切ったら、如月は大人しく引き下がった。ヨシ!

……っていうかこのまま悪女連中にちょっかい出される如月をいちいち助けてたら百合√入っちゃうんでは?やだなーこれ。そんなんならジェネリックサトーくん監禁してケツ掘ってる方がマシじゃん

『あっ、ちょっちょっとまって!』

「な゛に゛よ゛!?!!」

あかん音割れする。如月はまたまた私の袖を掴んでくる。うっとおしいことこの上ない。

『は、葉月くんたちにはこの事言わないで!心配させたくないの……』

来ました来たよ占ツク夢主特有の自己犠牲精神~~~~めんど!!!

そんなんなら私に頼らずあいつらに助けてもらうか自分で何とかしろ。と思ったがわざわざ告げ口してやるのも面倒だって気づいた。

「わかったからとっとと離しなさいよ!っていうかアンタ貧血じゃなかったの??!!!!」

『あ』

『あ』じゃねえええええ!!!!!と内心私はブチ切れた。また如月倒れてるしふざけんな

あとで囲い連中にいちゃもん付けられるのも面倒だと思った私は、ご丁寧に如月をベッドまで運んで布団を掛けてやってから校庭に戻った。
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