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第1部 私の推しくんを返せ

第6話 著作

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「my wish
I want you
何十何百何千何万のうちのたった1人
貴方だけが欲しい

目を閉じれば映る暗闇は鏡
太陽の闇と月の光が調和して
永遠に忘れられない
赤い薔薇の花弁がふわり 散る

my wish
I want you
何十何百何千何万のうちのたった1人
貴方が欲しい
貴方だけが私の愛を知ってる

目を開けても貴方以外見えない
銀の飛竜の羽が目の前を横切る
永遠にこのままで
離れて欲しくない貴方の袖を引く

my heart
I want you
砂漠の砂粒の中に落ちたうちのたった1欠片
貴方が欲しい
貴方だけが私の心を知ってる

暗闇の中で貴方しか見えない
手が届かない
触れるだけでよかったのに…

In just one world
get be higher
get be dear
I have only you…

my heart
I want you
砂漠の砂粒の中に落ちたうちのたった1欠片
貴方が欲しい
貴方だけが私の心を知ってる

my wish
I want you
何十何百何千何万のうちのたった1人
貴方が欲しい
貴方だけが私の愛を知ってる」

……うわなんだコイツ、急に歌い出したぞ こわ(予定調和)

夏はやっぱり変な人が湧くな……とづまりすとこ

「ふーん、結構上手いじゃない」

『そ、そうかな?』

よく聞いてたら如月が歌ってた曲は原作アニメのEDだった。作品内の全てのCPにおける汎用イメソンだ。ボーカルの声も綺麗だし私この曲大好き。

……って思ったけど、これ駄作者野郎が曲の歌詞 サイトかどっかからコピペしやがったな。もう許さねぇからなあ!  通報した

私に歌声を褒められた如月はといえば普通に照れてた。

『あ、そろそろ教室に戻らなくちゃ』

「……そうね」

結局私あんだけドキドキしといて如月の歌聞いただけじゃん。これならとっとと教室戻って肝子と毒子と雑談、という名の情報収集してた方がマシだった。

とはいえ私だけ先に如月だけ置いて戻ったら、一味の残りに萌亜璃どこやっただのなにかしたのかだの問い詰められるに決まってるからもうかんがえるのやーめたっ



成り代わり2日目です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

イベント以外のシーン全部スキップされてるはずなのに無駄に密度のあった昨日と同じく早めに学校にやってきた。

……やっぱり朝はまだ眠いな。昨日の夜は色々と考察しててよく眠れなかったし。ちょい寝るかー……


サトーくんの夢が見れたらいいのになー……なーんて……




 き ゃ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ っ ! ! 

「うわ!!」

がばっ!

占ツク夢小説特有のクソ長肺活量おばけ絶叫で目が覚めた。何?怖! 

教室の中じゃなくて廊下の方から聞こえてきた叫び声は、広い廊下によく響く。何かあったのか。

この世界で起きるトラブルといえば原作イベント絡みのものと……夢主絡みのものしかない。嫌な予感しかしない。

何?この世界はほのぼのたまに桃色甘々系の夢小説じゃなかったの?眠い目を慌てて擦りながら私は教室を出た。

叫び声が聞こえてきたのは図書室の方角からだった気がするので図書室の方へ向かう。

……到着したけど結局野次馬が多すぎてなんも見えねぇ。悪子は身長が低い訳では無い(少なくとも160はある)けど、男子より大きい訳じゃないから。

がやがやとした空気の中で、微かに「大丈夫か!?」とかそんな感じのセリフが聞こえてきて余計に嫌な予感がする。

……まさかな……

「ごめん、ちょっと退いてッ!」

野次馬共を押しのけて無理やり前へ出る。何人かが眉を寄せて私を見てるのには気づいたけど今そんなことに構ってはいられない。

……見えたものは、白い制服を着て仁王立ちの男子生徒の回りに倒れた、まさに死屍累々とでも表現できそうなたくさんの女子生徒たちだった。(何故か全員赤面して胸元をおさえてる)

……なんか思ってたんと違う。

っていうかこの白制服の奴見たことあるぞ。原作キャラだし。

名前は神条京一郎かみじょうけいいちろう、通称けいサマ。

原作葉月に負けず劣らずの俺様で、原作でも何回か決闘とか色々してた。(尚毎回引き分けの模様)

……今度は別の意味で嫌な予感がしてきた。

「そこのお前!」

うげ!声かけられた!!見に来なきゃよかった!

……多分さっきの『大丈夫か!』って声は倒れた女子生徒たちを気遣ってのものだろうし、倒れた原因は多分京サマにキュン死させられたとかそんなんだろう。

……っつーかよくみたら肝子と毒子も倒れてるし。お前らもやられたんかい

てっきり廊下で夢主に対するカッターキャーでも起こったのかと思って心配したけど、杞憂だったらしい。

……いやでもまさか京サマがもう来てるとは思わないじゃん。

原作では19話辺りまでお家の事情で休学してたとかそういう設定だったんだけど。

なんで季節的に8話辺りの時期にもう京サマが来てるんですか(半ギレ)作者なんも考えてないだろ。頭わるわるー(創造主に反旗を翻すレジスタンスの鑑)

ここで私が京サマにたいして『知りません興味ありませんさよなら』的な態度を取ったら、多分『面白いやつだ』みたいな感じになるんだろう。

……私悪女だからそうならない可能性もあるけど。

だがそれは夢主の役目だ。私がここでやるべきことはただひとつ。

「何をそこで突っ立っている?よもや俺の名前を知らないとでも言うんじゃないだろうな」

「そんなわけないじゃあないですかヤダー。京サマすってきー(棒)」

私はそのまま卒倒した。

正確には卒倒するふりをした。

「ああ、またやってしまった……俺の素晴らしさは隠そうとしても滲み出てしまうものなのだな……」

……かわいいな京サマ。

京サマは原作では登場から数話くらいでひとつ上の女の先輩に惚れることになるけど、多分ここの夢小説では『フッおも(ryで夢主に即落ちなんだろう。

そんなことを考えながら京サマが立ち去るまで倒れたまま待ってようと思ってたら、囲いを連れた如月が向こうの廊下から歩いてくるのが見えた。

と思ったら京サマが急に如月に向かっててくてく歩きだした。

そしていきなりの壁ドン。脳バグっちゃうー

『ふえっ!?』

如月は当然びっくりしてる。

「お前……見ない顔だな、転校生か?」

『な、なんなんですかっ!』

転校生の如月からしたら、京サマの方が『見ない顔』だろう。……っていうか如月転校生だったのね。来て直ぐ悪女連中にちょっかい掛けられなかったか私心配。

そんな事考えてたら、如月の囲いのうちの一人(原作キャラなのに既に扱いが悪い)、葉月がいきなり京サマの肩を掴んだ。

「なんだ貴様」

「お前こそなんなんだ」

京サマは肩を掴んでいる葉月の手を振り払うと、葉月を睨み返す。

「こいつは俺のだ。手を触れるんじゃない」

『ふえぇっ!?///////』

「なっ!いつ萌亜璃はお前のになったってんだよ!」

「そうです!適当なことを言うのはやめてもらいましょうか!」

サトーくんと風見が慌てて葉月に反論してる。……というか私はそんなことよりユイがレズになってなかったのが安心した。彼女原作だと一応想い人♂がいるノンケだから。

如月は如月で困惑するように葉月と京サマを見比べたあと……初対面の京サマに壁ドンされたままでいるくらいなら見知った葉月(この夢小説だとただのバカだが顔だけはいいから)のほうがマシだったんだろう、葉月にひし、と抱きついた。

サトーくんと風見がショックを受けたように崩れ落ちてる横で、京サマが如月にきろりと目線をやる。

「……俺に靡かないとは……フッ、面白い奴だ」

で、出たーーーーー!!!!夢小説に出てくる出てこない問わず俺様キャラ定番セリフ『フッ、面白い奴だ』ーーーー!!!!!

……あ、はしゃいでる場合じゃねえ。もうすぐチャイム鳴るじゃん。

私は京サマが如月一味に気を取られてる間に、肝子と毒子を引きずってこっそり教室に帰った。
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