上 下
1,484 / 1,906
イダラマの同志編

1467.二つの世界の理

しおりを挟む
「てめぇ、俺を舐めてんのか?」

「あくまで我が今回試したかったのは『アレルバレル』世界の『ことわり』でしか使えなかった『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』を本家の『レパート』の世界の『ことわり』に近づけてみたいという謂わば新たな試みでしかなかったのだ」

「じゃあ『妖魔召士』とかいう連中が扱う『捉術』とかいう奴は『ことわり』を用いないんだろうから、結局『魔力』を吸収できないんじゃねぇのかよ?」

「いや『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』自体の効果は、この世界でも間違いなく機能しておるよ」

 再びヌーはソフィの言っている事が理解出来ずに眉を寄せるのだった。

「何で言い切れるんだ? さっき『効力』が明確に変わったか聞いたときは分からねぇって言いやがっただろうが」

「お主も知っての通り、我は『旅籠町』の『予備群』の屯所全域に『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』を張っていたが、どうやら『アレルバレル』の『ことわり』を用いた時の従来の『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』では、あの場所で『魔法』を使用した場合は、直ぐに我にその使用した『魔力』に加えてその相手の情報等も全て我の元に入ってくるのだがな、今回あの『旅籠町』に施している『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』では、確かに微量ではあるが『魔力』を吸収している感覚はあるが『魔力探知』や『魔力感知』などの効力などが失っているようなのだ。入ってきている『魔力』も殺傷能力がある程のモノではなく、ほんの僅かなモノである為に、何かの間違いで『魔力』を使用した者が『予備群』の中に居たのだろうくらいにしか思ってはいなかったのだ」

「何だそりゃ……。つまりお前の別世界の『ことわり』を組み合わせた新たな『死の結界』とやらは『魔力』を使った『技法』に対して、お前に全て奪われるってのは変わらねぇんだな?」

「ああ。それは間違いない。しかし新たな『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』では奪った相手の情報は分からぬし、もう少し色々と実際に使ってみなければ何が変わっているのか詳しくは分からぬという事だ」

「どっちにしろ、従来の『死の結界アブソ・マギア・フィールド』も新たに生み出した『死の結界アブソ・マギア・フィールド』にしても『死の結界アブソ・マギア・フィールド』は『死の結界アブソ・マギア・フィールド』のままって考えでいいわけだな?」

「そういう事になるな。フルーフかエルシスが居ればもっと分かることもあるだろうが、今はひとまず相手の『魔力』を使った『ありとあらゆる手段』を全て遮断させられる事だけ分かっていればそれでよいと思っている。まぁ我の『魔力』を上回る程の存在が居れば、我の『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』の効力ごと掻き消されてしまうだろうが、そこまでされれば流石に相手の魔力を探知出来るだろうしな」

 ソフィはそう言って最後に『レパート』の『ことわり』を用いていた右手の『魔力』を消すと、静かに息を整えるのであった。

「しかし……、同じ『魔法』を使う為に別世界の『ことわり』を組み合わせるか……。そんな発想はなかったな」

 そう言って『結界』の張っている部屋からヌーは出ていき廊下に立つと、先程のソフィと同じように別世界の『ことわり』を用いて何やら『極大魔法』を発動させようと『スタック』を始めるのだった。

「おい、お主……」

「分かっている。実際に放つ気はねぇよ。そもそもこの場でお前らの居る場所に放ったところで『魔神』の『結界』に妨げられるだろうし、それにそこまで本気で『魔力』を使う気はねぇしな」

 どうやらソフィの話と実際に二つの世界の『ことわり』を用いた『技法』を見たヌーは、実際に自分でも試してみたくなったのだろう。

 この場に来た目的を忘れたように、自分のやりたい事を優先し始めた。

「そういう意味ではないのだが……、まぁよいか」

 何やらこの後に確実に起きる事を予見したソフィが、ヌーの行いに待ったをかけようとしたが、どうやら自分で理解した方がいいだろうと思い直して、伸ばしかけた手を引っ込めるのであった。

「まさかこういった方法を思いつくとはな。だが、てめぇと違って俺は『アレルバレル』の世界と『リラリオ』の世界だけではなく、あらゆる世界を回ってきている。てめぇ如きに出来て俺に出来ない事はねぇはずだ」

 ほくそ笑みながらヌーは『スタック』させた『魔力』を用いて、先程のソフィがして見せた事と同様に、それぞれ違う二つの『世界』の『ことわり』を用いて『発動羅列』を浮かび上がらせようとした。

 ――その瞬間であった。

「!?」

 大魔王『ヌー』の『スタック』していた『魔力』が『魔法陣』に吸い込まれた瞬間に制御が出来なくなり、あっという間に暴発を引き起こしそうになる。

「――!?」(ヌー!?)

 慌てて『死神』の『テア』がヌーに駆け寄ろうとしたが、暴発に巻き込まれないようにヌーは手で制止をして『テア』をそれ以上に近づけなくしながら、自身は懸命に『魔力コントロール』に意識を注ぐ。

 流石は『三色併用』や、新たに『紅』を用いてその『三色併用』の『短縮』という『技法』を編み出せるだけのポテンシャルを秘めている『ヌー』だけあって、二つの『ことわり』を混ぜ合わせる事で生じた弊害には、現在の自分ではまだ到底制御がしきれないと判断出来て、直ぐにその場を収める為に対処を開始した。

 これが『戦力値』だけに意識を向けているような『魔王』であったならば、今頃はこの場で『魔力暴発』を引き起こして大爆発を生じさせていたであろう。

 ――下手をすればかもしれない。

 しかしそこは『魔神級』に足を踏み入れているだけあって、彼は自身が引き起こした失敗に対して上手く対処を行い、無事に事なきを得たのであった。

 だが、そのヌーの表情は曇っていて、ソフィに出来た事が出来ない自分に納得いかず、不満そうな表情を浮かべていた。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...