1,218 / 1,915
サカダイ編
1201.新たな門出の前に
しおりを挟む
ゲンロクの里に居るソフィ達は、今回のコウゾウ達の襲撃犯がヒュウガ達であるという確認をしっかりと取った後に、彼らが何処に向かうかという話をゲンロクやエイジ達を交えて話し合い、そしてその中でゲンロクとエイジの間にあった確執も綺麗に取り除かれて、今後についての話も擦り合わせる事が出来た。
今回ソフィ達がここに訪れた事でエイジ達妖魔召士組織にとっては大きくプラスへと働いた事になったが、その対立している組織である『妖魔退魔師』にとっては、エイジという存在を『妖魔召士』組織へと戻すような展開へと進めてしまった事になる。
だが、本来であればそれを良しとは考えない筈の妖魔退魔師の副総長であるミスズは、むしろこの展開こそを望んでいたような節がソフィには、あの場で感じ取る事が出来たのであった。
(やはりこのミスズという者は考え方が我に似ている。結果を重視するという点では少しばかり我とは違うが、その結論に至るまでの過程の持っていき方に関しては、我も共感出来ることが今回の場においても多くあった)
ミスズがソフィを観察していたように、ソフィもまたミスズに自身と共感を得ている部分を省みて、今回観察を行っていた。そしてその出した結論はやはり、ミスズの考えは自分に近しいと確信を得たのであった。
そしてソフィがそんな事を考えている横でミスズは、伝え忘れていた事である『妖魔山』の調査にソフィ達を伴ってもいいかという質問がなされていて、当然エイジもゲンロクもソフィの事情を理解している為に、これに賛成の意を示すのであった。
「それでは今回のヒュウガ殿の一件が済み次第、前回の会合の通りにお願いします」
「ああ、分かったミスズ殿。先程お主はヒュウガの一件に手を出さないでくれと申していたが、こちらはいつでも手を貸す準備は出来ている。気が変わったらいつでも申してくれ」
どうやら今回の話合いで吹っ切れた様子のエイジがそう言うと、ミスズが少しの間手を顎に当てながら逡巡していたが、にこりと笑って頷くのであった。
ミスズがそう判断した理由の一つには、今のエイジはここに来た当初の時とは違うと理解した為だろう。
「それではソフィ殿」
「うむ……。だが、本当にお主の息子に会いに戻らなくてもよいのか? 我は『ケイノト』に一度立ち寄っている。お主がその気であれば共に連れて行ってやれるのだが」
「本当ならソフィ殿の言葉に頷きたいところではあるのだが、小生は先程のミスズ殿の言葉で目が覚めたのでな。この横に居るゲンロクにこれまでの借りを返すまでは、妖魔召士達の為に寄り添うと心を決めたのだ。それに『ゲイン』の事は『シュウ』に任せてあるしな」
我慢をしているようでもなく本当に心の底から妖魔召士組織の為に、エイジが真剣に考えている様子だと判断したソフィは静かに頷いた。
「そうか。お主がそう決めたのであれば、もうこれ以上は何も言うまい」
「ヒュウガとやらを捕縛したら必ずお主達にも連絡をする。その時までしばし待っておいてくれ」
ソフィはそう言って立ち上がると、他の者達も同じように立ち上がるのだった。
「ああ、分かった。色々と気にかけてもらって感謝するぞソフィ殿」
ソフィがエイジに笑みを向けて頷く。
「それとミスズ殿。お主の言葉は小生の胸に響いた。もう今後は『妖魔召士』の組織を侮らせはせぬから、楽しみにしておいて欲しい」
そう言ってエイジはミスズの前に立つと、ゆっくりと自分の右手を差し出した。
「……ふふっ、ゲンロク殿だけではうちとしても張り合いがなさ過ぎましたから」
そう言ってミスズはちらりとゲンロクの方を一瞥すると、ゲンロクは苦笑いを浮かべながらも怒るような真似はせずに顔を逸らしながら小さく息を吐いていた。
「えっ」
ミスズがゲンロクの態度を見て薄く笑っていると、いつの間にか握手を求めてきていたエイジがミスズの手を掴んで強引に握手をするのだった。
「小生はお主ら妖魔退魔師を少しばかり誤解していたようだ。お主のような者が組織の上の立場に居る事に妖魔退魔師組織を羨ましく思う。だが、小生が妖魔召士に戻らせた以上は、これまでのようにお主の好きにはさせぬ! これからは互いを高め合えるような、そんな相手になってくれミスズ殿」
やる気に満ち溢れているエイジに手を強く握られたミスズは、目を瞑りながら何かを考えている様子だった。やがてその目が見開かれたかと思うと、不敵に笑い始める。
「望むところですよエイジ殿、それにゲンロク殿。これ以上は私に失望させないで下さいね? 前時代の恐れられていた妖魔召士組織に戻って頂ける事を期待していますよ」
そう言ってエイジに握られていた手を今度は、ミスズの方から強く握り返すのであった。
――そして三者三様に、視線を交わしながら頷き合うのであった。
今回ソフィ達がここに訪れた事でエイジ達妖魔召士組織にとっては大きくプラスへと働いた事になったが、その対立している組織である『妖魔退魔師』にとっては、エイジという存在を『妖魔召士』組織へと戻すような展開へと進めてしまった事になる。
だが、本来であればそれを良しとは考えない筈の妖魔退魔師の副総長であるミスズは、むしろこの展開こそを望んでいたような節がソフィには、あの場で感じ取る事が出来たのであった。
(やはりこのミスズという者は考え方が我に似ている。結果を重視するという点では少しばかり我とは違うが、その結論に至るまでの過程の持っていき方に関しては、我も共感出来ることが今回の場においても多くあった)
ミスズがソフィを観察していたように、ソフィもまたミスズに自身と共感を得ている部分を省みて、今回観察を行っていた。そしてその出した結論はやはり、ミスズの考えは自分に近しいと確信を得たのであった。
そしてソフィがそんな事を考えている横でミスズは、伝え忘れていた事である『妖魔山』の調査にソフィ達を伴ってもいいかという質問がなされていて、当然エイジもゲンロクもソフィの事情を理解している為に、これに賛成の意を示すのであった。
「それでは今回のヒュウガ殿の一件が済み次第、前回の会合の通りにお願いします」
「ああ、分かったミスズ殿。先程お主はヒュウガの一件に手を出さないでくれと申していたが、こちらはいつでも手を貸す準備は出来ている。気が変わったらいつでも申してくれ」
どうやら今回の話合いで吹っ切れた様子のエイジがそう言うと、ミスズが少しの間手を顎に当てながら逡巡していたが、にこりと笑って頷くのであった。
ミスズがそう判断した理由の一つには、今のエイジはここに来た当初の時とは違うと理解した為だろう。
「それではソフィ殿」
「うむ……。だが、本当にお主の息子に会いに戻らなくてもよいのか? 我は『ケイノト』に一度立ち寄っている。お主がその気であれば共に連れて行ってやれるのだが」
「本当ならソフィ殿の言葉に頷きたいところではあるのだが、小生は先程のミスズ殿の言葉で目が覚めたのでな。この横に居るゲンロクにこれまでの借りを返すまでは、妖魔召士達の為に寄り添うと心を決めたのだ。それに『ゲイン』の事は『シュウ』に任せてあるしな」
我慢をしているようでもなく本当に心の底から妖魔召士組織の為に、エイジが真剣に考えている様子だと判断したソフィは静かに頷いた。
「そうか。お主がそう決めたのであれば、もうこれ以上は何も言うまい」
「ヒュウガとやらを捕縛したら必ずお主達にも連絡をする。その時までしばし待っておいてくれ」
ソフィはそう言って立ち上がると、他の者達も同じように立ち上がるのだった。
「ああ、分かった。色々と気にかけてもらって感謝するぞソフィ殿」
ソフィがエイジに笑みを向けて頷く。
「それとミスズ殿。お主の言葉は小生の胸に響いた。もう今後は『妖魔召士』の組織を侮らせはせぬから、楽しみにしておいて欲しい」
そう言ってエイジはミスズの前に立つと、ゆっくりと自分の右手を差し出した。
「……ふふっ、ゲンロク殿だけではうちとしても張り合いがなさ過ぎましたから」
そう言ってミスズはちらりとゲンロクの方を一瞥すると、ゲンロクは苦笑いを浮かべながらも怒るような真似はせずに顔を逸らしながら小さく息を吐いていた。
「えっ」
ミスズがゲンロクの態度を見て薄く笑っていると、いつの間にか握手を求めてきていたエイジがミスズの手を掴んで強引に握手をするのだった。
「小生はお主ら妖魔退魔師を少しばかり誤解していたようだ。お主のような者が組織の上の立場に居る事に妖魔退魔師組織を羨ましく思う。だが、小生が妖魔召士に戻らせた以上は、これまでのようにお主の好きにはさせぬ! これからは互いを高め合えるような、そんな相手になってくれミスズ殿」
やる気に満ち溢れているエイジに手を強く握られたミスズは、目を瞑りながら何かを考えている様子だった。やがてその目が見開かれたかと思うと、不敵に笑い始める。
「望むところですよエイジ殿、それにゲンロク殿。これ以上は私に失望させないで下さいね? 前時代の恐れられていた妖魔召士組織に戻って頂ける事を期待していますよ」
そう言ってエイジに握られていた手を今度は、ミスズの方から強く握り返すのであった。
――そして三者三様に、視線を交わしながら頷き合うのであった。
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる