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旅籠編
1008.礼儀を知らぬ
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「へっ、どうやら『妖魔召士』の組織を抜けた今でも、エイジ殿の『捉術』の力は変わっていなさそうだな……」
空の上の『式』に乗りながら使役した『紫刃虎』達が、どこかへ飛ばされていったのを見ながらキネツグは忌々しそうにそう告げた。
「そりゃあそうでしょうよ。前時代の厳しい組織の中で上から数えた方が早いところに位置されていたのだし。それよりもどうする? 本気でエイジ殿と戦うなら二人で相手しないとだけど、優先すべきは任務であの後ろに居る連中よ?」
チアキがそう言うと『キネツグ』は『エイジ』からソフィ達に視線を向けた。やがて何か考える素振りを見せたが、どうやら結論が出たようでチアキに告げる。
「鬼を数体出して俺がエイジ殿を引き付ける。お前は標的二人を速攻で仕留めた後、背後からエイジを挟撃してくれ」
「分かった……。でも最低五分は持たせられる奴を出してよ、あの二人と周りに居る連中や『予備群』も私一人でやるならそれくらい時間が要るわ」
「ランク『4.5』以上の妖魔を相手にするワケでもないのにお前にしては、えらく弱気な事を言うじゃないか」
「さっきのあの背の高い男の力を見たでしょ? ランク『4』どころか、ランク『4.5』の妖魔と同等以上の力は有している筈よ」
(※この世界の妖魔のランク基準:ランク『4』=戦力値2000~2700億相当。ランク『4.5』=戦力値2800~3700億相当。ランク『5』=戦力値3800億~4500億前後)
(※ランク『4』相当=『金色大賢者エルシス』『大魔王ヌー』。ランク『4.5』相当=『代替身体レキ』『大賢者ミラ』。ランク『5』相当=『魔神級シス』『代替身体三色併用レキ』『混合二色エルシス』)
「まぁ、そっちも頑張れや。俺が相手をするエイジ殿の方がきついんだからよ」
前時代『妖魔召士』の組織でその存在感を大きく示した『サイヨウ』の弟子にして、若い時から天才と騒がれた『妖魔召士』の『エイジ』。
「そうね。私も惜しみなく『式』を使うから、五分くらいは持たせなさいよ? キネツグ」
「へっ、俺も『妖魔召士』だぞ? 舐めるんじゃねぇよ」
そう言ってキネツグは再び上空から式の紙を放り投げるのであった。
それを見たチアキは、乗っている鳥類の妖魔に指示を出して、大空を高速で移動しながらソフィ達の前に向かっていくのであった。
…………
チアキが標的の元へ向かっていくのを見届けた後、キネツグは妖魔の上から飛び降りて、地面に着地する。そしてそのままエイジの前に立つと、鳥類の『式』の妖魔を『式札』へと戻した後、懐にしまい込むのだった。
「チアキはソフィ殿達の元に向かったようだが、お主一人で小生と戦うつもりなのか?」
怒りを抑え込みながらエイジは、傍目には冷静に見えるような口調で空から降りて来たキネツグに、そう口を開くのだった。
「まさか! さっきはああ言ったが、最強の『妖魔召士』様から認められた『サイヨウ』様の一番弟子にして、天才と若い時から称されていたアンタに、俺一人で勝てるとは思ってねぇよ」
無言で先を促すように睨んで来ているエイジに、首をポキポキと鳴らしながらキネツグは再び口を開いた。
「とりあえず俺の仕事は、チアキが奴らを葬るまでの時間稼ぎだ。だが、覚悟しろよ? 奴らを処理した後は、俺とチアキはアンタを殺すつもりだ」
これまで同じ『妖魔召士』での殺し合いは過去にも前例がなかった。一時的に仲違いをするような事はあっても同じ『妖魔召士』は同志であり、ひとたび恐ろしい妖魔が出現すれば、妖魔召士同士一枚岩となり、有事の際には力を合わせて困難を乗り越える。
それこそが『妖魔召士』の長『シギン』の元に集った前時代の『妖魔召士』達であった。
しかしその『妖魔召士』の『シギン』の時代は過ぎ去り、革新派である『ゲンロク』が暫定の長となってからは、組織は一枚岩とはいえなくなってしまった。
変わってしまった今の『妖魔召士』の組織は、かつてのように有事の際には協力し合うという気概も薄れてしまっている。だからこそ、同じ『妖魔召士』であったエイジにさえ、キネツグは簡単にこんな事を口にしてしまう。
こういった者達が出て来る事は禁術を堂々と流布し『妖魔召士』ですら無い退魔士達にも覚えさせた『ゲンロク』が、暫定とはいえ組織の長となった時点で予測できた。
目先の戦力の増加に重点を置いて、伝統ある心得を伝える事をしなくなった所為である。
「礼儀を知らぬ若造が……。吐いた唾は呑めぬぞ」
……
……
……
空の上の『式』に乗りながら使役した『紫刃虎』達が、どこかへ飛ばされていったのを見ながらキネツグは忌々しそうにそう告げた。
「そりゃあそうでしょうよ。前時代の厳しい組織の中で上から数えた方が早いところに位置されていたのだし。それよりもどうする? 本気でエイジ殿と戦うなら二人で相手しないとだけど、優先すべきは任務であの後ろに居る連中よ?」
チアキがそう言うと『キネツグ』は『エイジ』からソフィ達に視線を向けた。やがて何か考える素振りを見せたが、どうやら結論が出たようでチアキに告げる。
「鬼を数体出して俺がエイジ殿を引き付ける。お前は標的二人を速攻で仕留めた後、背後からエイジを挟撃してくれ」
「分かった……。でも最低五分は持たせられる奴を出してよ、あの二人と周りに居る連中や『予備群』も私一人でやるならそれくらい時間が要るわ」
「ランク『4.5』以上の妖魔を相手にするワケでもないのにお前にしては、えらく弱気な事を言うじゃないか」
「さっきのあの背の高い男の力を見たでしょ? ランク『4』どころか、ランク『4.5』の妖魔と同等以上の力は有している筈よ」
(※この世界の妖魔のランク基準:ランク『4』=戦力値2000~2700億相当。ランク『4.5』=戦力値2800~3700億相当。ランク『5』=戦力値3800億~4500億前後)
(※ランク『4』相当=『金色大賢者エルシス』『大魔王ヌー』。ランク『4.5』相当=『代替身体レキ』『大賢者ミラ』。ランク『5』相当=『魔神級シス』『代替身体三色併用レキ』『混合二色エルシス』)
「まぁ、そっちも頑張れや。俺が相手をするエイジ殿の方がきついんだからよ」
前時代『妖魔召士』の組織でその存在感を大きく示した『サイヨウ』の弟子にして、若い時から天才と騒がれた『妖魔召士』の『エイジ』。
「そうね。私も惜しみなく『式』を使うから、五分くらいは持たせなさいよ? キネツグ」
「へっ、俺も『妖魔召士』だぞ? 舐めるんじゃねぇよ」
そう言ってキネツグは再び上空から式の紙を放り投げるのであった。
それを見たチアキは、乗っている鳥類の妖魔に指示を出して、大空を高速で移動しながらソフィ達の前に向かっていくのであった。
…………
チアキが標的の元へ向かっていくのを見届けた後、キネツグは妖魔の上から飛び降りて、地面に着地する。そしてそのままエイジの前に立つと、鳥類の『式』の妖魔を『式札』へと戻した後、懐にしまい込むのだった。
「チアキはソフィ殿達の元に向かったようだが、お主一人で小生と戦うつもりなのか?」
怒りを抑え込みながらエイジは、傍目には冷静に見えるような口調で空から降りて来たキネツグに、そう口を開くのだった。
「まさか! さっきはああ言ったが、最強の『妖魔召士』様から認められた『サイヨウ』様の一番弟子にして、天才と若い時から称されていたアンタに、俺一人で勝てるとは思ってねぇよ」
無言で先を促すように睨んで来ているエイジに、首をポキポキと鳴らしながらキネツグは再び口を開いた。
「とりあえず俺の仕事は、チアキが奴らを葬るまでの時間稼ぎだ。だが、覚悟しろよ? 奴らを処理した後は、俺とチアキはアンタを殺すつもりだ」
これまで同じ『妖魔召士』での殺し合いは過去にも前例がなかった。一時的に仲違いをするような事はあっても同じ『妖魔召士』は同志であり、ひとたび恐ろしい妖魔が出現すれば、妖魔召士同士一枚岩となり、有事の際には力を合わせて困難を乗り越える。
それこそが『妖魔召士』の長『シギン』の元に集った前時代の『妖魔召士』達であった。
しかしその『妖魔召士』の『シギン』の時代は過ぎ去り、革新派である『ゲンロク』が暫定の長となってからは、組織は一枚岩とはいえなくなってしまった。
変わってしまった今の『妖魔召士』の組織は、かつてのように有事の際には協力し合うという気概も薄れてしまっている。だからこそ、同じ『妖魔召士』であったエイジにさえ、キネツグは簡単にこんな事を口にしてしまう。
こういった者達が出て来る事は禁術を堂々と流布し『妖魔召士』ですら無い退魔士達にも覚えさせた『ゲンロク』が、暫定とはいえ組織の長となった時点で予測できた。
目先の戦力の増加に重点を置いて、伝統ある心得を伝える事をしなくなった所為である。
「礼儀を知らぬ若造が……。吐いた唾は呑めぬぞ」
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