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愛娘を探して編

634.同胞を想う気持ちと矜持

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 エイネはこちらに向かってくる龍族達の群れの元に向かいながら『念話テレパシー』でフルーフに事情が出来た事を伝える。

(※『念話テレパシー』は魔族が好んで使う連絡方法で波長の合う相手に言葉を送る連絡手段である。但し波長が合わなければ、言葉を伝えることは出来ない)。

(うむ。お主がそう決めたのならば満足するまで好きにするがよい。ワシの方もまだレアの魔力を探しきれておらぬのだ)

(ありがとうございます。自分自身の告げた言葉を撤回するような真似をしてしまい、恥ずかしい事ではありますが、やはり私には同胞たちを切り捨てるような真似は出来ないようです)

(カッカッカッ! 良いではないか。ソフィの奴もお主のそういうところを気に入っておるだろうよ。ワシが断言してやろう)

(そ、それではやり残したことを済ませてきますので。こ、これで!)

 エイネは顔を真っ赤にしながら慌てて『念話テレパシー』を打ち切るのだった。

 ――『フルーフ』は『ソフィ』と親友とも呼べる間柄の大魔王である。

 そんなフルーフがエイネの尊敬するソフィが自分の事を気に入っているだろうと、断言してくれたのである。エイネは尊敬するソフィが自分に対してそう告げたらと想像してしまい、照れてしまったのだった。

(ソフィ様が私を気に入ってくれている。ああ目の前でそんな事を言われたら私は……)

 エイネは照れと嬉しさのあまり満面の笑みを浮かべながら空を『高速転移』で移動をするのだった。

 もしこの場にリーシャが居れば、あの子はニヤニヤしながら私をからかってきていただろう。小さい頃からあの子はレアさんの言葉遣いや、オシャレに至るまでレアさんの真似ばかりしていた。

 そしてあの子は今でもレアさんの幻影を追い続けている。
 一言で言えば『』とも呼べる状態だった。

「流石に性格まではレアさんの真似をしなくてよかったのに……」

 そう言いながらもエイネはリーシャの事を思い出してしまい、早く会いたいと思いながら泣きそうになっていく。

(……いけない。今はこの世界の同胞達の為に動くと決めたのだ)

 エイネは自分にそう言い聞かすと、この場に近づいている龍族達にグングンと距離を縮めていくのだった。

 ……
 ……
 ……

「何だ? こちらに何かが向かってきている?」

 イルベキア軍の龍族を従えているヴァルーザ龍王は、自分達が向かっている魔人族の大陸の方角からこちらに向かってくる存在を感知した。

 まだ少し距離がある為に、他の兵達は気づいてはいないが、彼らとは比較にもならない程の強さを持つ『ヴァルーザ』龍王は別であった。

 ヴァルーザは『念話テレパシー』で『イーサ』龍王に確認をとろうかとも思ったが、既に襲撃命令が出ている。そんな中でつまらない事に確認をとるのもどうかと悩み始める。

(こちらに向かってくる者の魔力はそこまで高くはない。精霊族か魔人族かまでは分からないが、視界に入った瞬間に潰してしまえばよかろう)

 ヴァルーザはこの世界で『最強の種族』であるという事を自負している。既に魔人達と全面戦争をする事は決定事項なのである。

 相手が魔人族の軍に所属していようがいまいが関係が無い。どちらにしても戦争中の相手国の兵士であるならば、むしろ撃ち落としてしまってもいいだろうと考えるのだった。

 もしかしたら魔人族の軍からの『使者』なのかもしれないが、ヴァルーザにとってはそれすらも関係がないようであった。

 イルベキア国の王『ヴァルーザ』龍王は、ハイウルキア国の王ガウルに比べて紳士的な態度を常に振る舞ってはいるが、本当の性格は狡猾で残忍な性格をしていた。

 例えばではあるが、魔人族側が龍族と全面戦争をする事を知った為、なんとか戦争を回避しようと降伏を申し出る為に『使者』を送ってきたのだとしてもヴァルーザ龍王は、一切それを認めるつもりはないのである。

 むしろ『イーサ』や『ガウル』に気づかれる前にそういった『使者』を葬り、作戦通りに魔人族を攻撃するつもりであった。

(龍族こそが世界最強の種族なのだ。少しばかり抵抗をしてみせたようだが、思い上がるなよ魔人共!)

 高慢な龍族の典型ともいえる性格をしているヴァルーザは、龍族に対して攻撃を仕掛けようとする魔人族を許すつもりは無かったようである。

(素直に平伏せていればいいものを……! 逆らおうとするから滅亡する事になるのだ!)

 ヴァルーザは魔人族達をどう八つ裂きにしてやろうかと考えながら、残忍な笑みを浮かべるのであった。

 ……
 ……
 ……
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