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闘技場編
503.深き眠りから目覚めた者
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『トウジン』魔国の復興がほぼ終わり街に賑わいが戻ってきた頃、剣士リディアは闘技場が見える場所へと足を運んでいた。
「さて、アイツは何処まで強くなっているか」
前回会った時からだいぶ経っている。
願わくばかつての世界の覇者であった『龍族の王』とやらと戦う為のウォーミングアップ程度には強くなっていてもらいたいと、リディアは考えるのだった。
「貴様が他人を気に掛けるとは、珍しい事があるものだ」
そしてそんなリディアの背後から、音も無く影のように近づく男が一人。見た目は四十代に差し掛かろうかという年齢で、金色の髪はぼさぼさ。サイズの合っていない服を無理やり着ている男は、その見た目のせいで不審者極まりないが、周りに居る者達はその男を奇異な目で見る事もなかった。
何故なら傍からは男の姿が、見えていないからである。
「少しばかり気概がある奴でな。人間では俺の次にこの世界で強くなるだろうと思っている」
リディアが他人を認めるような口ぶりで告げた事で、リディアに声を掛けた男は感心をするように頷く。
「貴様と同じ人間がか。そいつは楽しみだ。だが分かっているだろうな? 俺がわざわざ貴様を鍛えてやったんだ。あっさり負けやがったら殺すぞ?」
「当然だ」
リディアはそう言い残して闘技場を後にするのだった。一人取り残された男は、左手で顎を擦りながら笑みを浮かべる。
「クククク。久しぶりに表に出てこられたんだ。力を取り戻すまでの間は今のこの世界を観察させてもらうとするか」
――その男の名は『レキ・ヴェイルゴーザ』。
始祖龍『キーリ』がまだこの世界の王となるより遥か昔。この世界に魔物達を生み出した『リラリオ』の世界を支配していた魔族である。
かつてこのレキは魔族以外の生物を多く殺して魂を喰い漁っていた。この世界から魔族と魔物以外の生物が居なくなるかと思われる程に殺し続けた結果、一つの世界の危機を感知した神である『魔神』がこの世界『リラリオ』にその姿を現した。
『魔神』はこれ以上『レキ』に他種族の命を奪わぬようにと告げたのだが、当然のように彼は逆らい『神』である『魔神』に対して攻撃を加えた。そのレキの一撃は『魔神』の逆鱗に触れてしまう。
…………
――レキは魔神と七日七夜戦い続けた末に敗北した。
魔神は二度と『神』に逆らう気を起こさせぬようにと、すでに死に体となっているレキの『魔力』を奪ってそのレキ身体をとある洞窟の奥底へと封じ込めたのであった。
それから気が遠くなる程の年月が過ぎた頃。自己研鑽を続けながら旅をしていた『リディア』が『ディアミール』大陸にある洞窟の奥底に封印されていた『レキ』の『身体』を見つけ出した事によって、再びこの魔族が現世にその姿を現してしまったのだった。
今のレキの本体は『魔神』の所為でほとんど『魔力』が無い状態である上に、更には魔族の天敵ともいえる病である『梗桎梏病』を長年患ってしまっていて、上手く魔力を練る事が出来ない状態である。
封印が解かれたばかりのレキは、人間であるリディアを殺して『代替身体』として扱ってやろうかと悩んだが、その時に偶然にも全身を甲冑で包まれた魔族が、ディアミール大陸を絶望に打ちひしがれた表情で通りがかった。
――その魔族の名は『ビラーノ』といった。
レアを亡き者にしようとしていた彼が『サイヨウ』の手によって『ミールガルド』大陸の『クッケ』の近くの山脈から『ディアミール』大陸に飛ばされた後に彼もまた『梗桎梏病』を患い始めていたが、レキの数千年以上もの間患っていた『梗桎梏病』に比べると大したことはなく、レキであれば『ビラーノ』の患う梗桎梏病程度であるならば、存分に動く事が可能だろうと決断を下した。
リディアの前で衰弱しきった身体のレキはあっさりとビラーノをその手で仕留めて体を乗っ取り『代替身体』として扱う事にした。
本体は安全な場所へ移したが、件の病が身体から抜けきるまでには、相当の年月がかかる事だろう。
――それまでにレキは新たな『代替身体』を手に入れる必要がある。
この身体でも本来のレキの力の十分の一程度は扱える為に、大半の『魔族』程度には負ける事はないだろうが『梗桎梏病』が進行すれば、この身体も使い道がなくなってしまうからである。
そして人間など餌に過ぎないと考えていたレキだが、リディアの素質を見抜き少しばかり興が湧いた。
『ビラーノ』の身体を奪ったレキは、肩慣らしと少しのきまぐれで『金色の体現』をしかかっていたリディアに、その力の使い方を教えてやった。そしてその代わりに今のこの世界の色々な情報をリディアから聞いて情報として得る事に成功する。
話の中でリディアには倒すべき目標とやらが居るという事を知った。
今のこの世界に生きる魔物達は、当然弱体化しているレキの影響を受けて弱くなっている筈であり、下手をすれば魔人程度にも劣るのかもしれない。
リディアの目標とやらの種族が何か分からないが、万が一魔族であったならば、リディアが倒した暁にはその身体を奪ってやろうとレキは考えるのだった。
「さて、アイツは何処まで強くなっているか」
前回会った時からだいぶ経っている。
願わくばかつての世界の覇者であった『龍族の王』とやらと戦う為のウォーミングアップ程度には強くなっていてもらいたいと、リディアは考えるのだった。
「貴様が他人を気に掛けるとは、珍しい事があるものだ」
そしてそんなリディアの背後から、音も無く影のように近づく男が一人。見た目は四十代に差し掛かろうかという年齢で、金色の髪はぼさぼさ。サイズの合っていない服を無理やり着ている男は、その見た目のせいで不審者極まりないが、周りに居る者達はその男を奇異な目で見る事もなかった。
何故なら傍からは男の姿が、見えていないからである。
「少しばかり気概がある奴でな。人間では俺の次にこの世界で強くなるだろうと思っている」
リディアが他人を認めるような口ぶりで告げた事で、リディアに声を掛けた男は感心をするように頷く。
「貴様と同じ人間がか。そいつは楽しみだ。だが分かっているだろうな? 俺がわざわざ貴様を鍛えてやったんだ。あっさり負けやがったら殺すぞ?」
「当然だ」
リディアはそう言い残して闘技場を後にするのだった。一人取り残された男は、左手で顎を擦りながら笑みを浮かべる。
「クククク。久しぶりに表に出てこられたんだ。力を取り戻すまでの間は今のこの世界を観察させてもらうとするか」
――その男の名は『レキ・ヴェイルゴーザ』。
始祖龍『キーリ』がまだこの世界の王となるより遥か昔。この世界に魔物達を生み出した『リラリオ』の世界を支配していた魔族である。
かつてこのレキは魔族以外の生物を多く殺して魂を喰い漁っていた。この世界から魔族と魔物以外の生物が居なくなるかと思われる程に殺し続けた結果、一つの世界の危機を感知した神である『魔神』がこの世界『リラリオ』にその姿を現した。
『魔神』はこれ以上『レキ』に他種族の命を奪わぬようにと告げたのだが、当然のように彼は逆らい『神』である『魔神』に対して攻撃を加えた。そのレキの一撃は『魔神』の逆鱗に触れてしまう。
…………
――レキは魔神と七日七夜戦い続けた末に敗北した。
魔神は二度と『神』に逆らう気を起こさせぬようにと、すでに死に体となっているレキの『魔力』を奪ってそのレキ身体をとある洞窟の奥底へと封じ込めたのであった。
それから気が遠くなる程の年月が過ぎた頃。自己研鑽を続けながら旅をしていた『リディア』が『ディアミール』大陸にある洞窟の奥底に封印されていた『レキ』の『身体』を見つけ出した事によって、再びこの魔族が現世にその姿を現してしまったのだった。
今のレキの本体は『魔神』の所為でほとんど『魔力』が無い状態である上に、更には魔族の天敵ともいえる病である『梗桎梏病』を長年患ってしまっていて、上手く魔力を練る事が出来ない状態である。
封印が解かれたばかりのレキは、人間であるリディアを殺して『代替身体』として扱ってやろうかと悩んだが、その時に偶然にも全身を甲冑で包まれた魔族が、ディアミール大陸を絶望に打ちひしがれた表情で通りがかった。
――その魔族の名は『ビラーノ』といった。
レアを亡き者にしようとしていた彼が『サイヨウ』の手によって『ミールガルド』大陸の『クッケ』の近くの山脈から『ディアミール』大陸に飛ばされた後に彼もまた『梗桎梏病』を患い始めていたが、レキの数千年以上もの間患っていた『梗桎梏病』に比べると大したことはなく、レキであれば『ビラーノ』の患う梗桎梏病程度であるならば、存分に動く事が可能だろうと決断を下した。
リディアの前で衰弱しきった身体のレキはあっさりとビラーノをその手で仕留めて体を乗っ取り『代替身体』として扱う事にした。
本体は安全な場所へ移したが、件の病が身体から抜けきるまでには、相当の年月がかかる事だろう。
――それまでにレキは新たな『代替身体』を手に入れる必要がある。
この身体でも本来のレキの力の十分の一程度は扱える為に、大半の『魔族』程度には負ける事はないだろうが『梗桎梏病』が進行すれば、この身体も使い道がなくなってしまうからである。
そして人間など餌に過ぎないと考えていたレキだが、リディアの素質を見抜き少しばかり興が湧いた。
『ビラーノ』の身体を奪ったレキは、肩慣らしと少しのきまぐれで『金色の体現』をしかかっていたリディアに、その力の使い方を教えてやった。そしてその代わりに今のこの世界の色々な情報をリディアから聞いて情報として得る事に成功する。
話の中でリディアには倒すべき目標とやらが居るという事を知った。
今のこの世界に生きる魔物達は、当然弱体化しているレキの影響を受けて弱くなっている筈であり、下手をすれば魔人程度にも劣るのかもしれない。
リディアの目標とやらの種族が何か分からないが、万が一魔族であったならば、リディアが倒した暁にはその身体を奪ってやろうとレキは考えるのだった。
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