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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第218話 精霊花
しおりを挟む二人の前に現れた白く光る花。それは間違いなく求めていた由良の薬の材料になる物だった。
「あ、あったあった~、これよこれ。」
ミミルは花を根本から引っこ抜くと、腰に提げていた袋にそっとしまいこんだ。
「それがお母さんの薬になるんですか?」
「うん、これは精霊花っていう花で万病に効くって言われてる花なの。」
「すごいお花なんですね。」
「そうよ~。でも、そのぶん扱いが難しくて、これを薬にできるのは私達エルフの中でも二人だけなの。」
ミミル曰く、この精霊花を薬に加工できるのは彼女の友人であるカリンを含めて二人だけなのだという。
「これは鮮度が命なの、さぁ早く帰りましょ。」
「はいっ!!」
そして二人が踵を返そうとしたその時だった。
ズル……ズル……。
「……!!」
何かが地面を這いずるような音が二人の前から響いてきた。その音を聴いたミミルの顔が青ざめていく。
「キミ……絶対私の後ろから出ちゃダメよ。」
「ふぇっ?」
何が迫ってきているのか確信した様子のミミルは、弓に矢をつがえて構える。そして暗闇へと向かって放った。
しかし……。
「っ!!」
暗闇から這いずるようにして二人の前に現れたそれは、大きく裂けた口でミミルの放った矢を咥えていた。
「シュルルルルル……。」
「へ、ヘビっ!?」
二人の前に現れたのは、とんでもなく大きなヘビ型の魔物だった。
その魔物が咥えていた矢はいつの間にかドロドロに溶けて液状になり、地面にポタポタと滴り落ちていた。
「アシッドパイソン……この洞窟に住んでるって噂は聞いてたけど、本当だったみたいね。」
冷や汗を流しながらミミルは弓を地面に置くと、きれいな装飾が施された短剣を鞘から抜いた。
「弓矢は効かない……ならこれならどう?」
タン!!と地面を蹴り、アシッドパイソンへと向かったミミルは短剣を鱗の上から突き立てる。
そして切っ先が鱗に触れたその時……。
バキッ!!
「ウソッ……。」
勢いよく突き立てられた短剣は、バキッ……という鈍い音を立てて根本から折れてしまう。
そして呆然としているミミルの腹部に加速し、しなったアシッドパイソンの太い尻尾がめり込んだ。
「ふぐっ!?」
軽い彼女の体は大きく吹き飛ばされ、洞窟の壁に叩き付けられてしまう。
彼女に止めを刺すべく這い寄るアシッドパイソン。その前にルアが立ち塞がった。
「させない……。」
「だ、ダメ……逃げ……て。」
「シャアァァァァァッ!!」
大きな口を開けて飛びかかってきたアシッドパイソンに向かって、ルアは言葉を紡いだ。
「狐炎術 狐火!!」
ルアがそう口にした瞬間に、多数の炎の体の狐がアシッドパイソン目掛けて飛びかかっていく。
狐火がアシッドパイソンの体に当たると、ボン!!と大きな炎を巻き上げて爆発する。それが何度も何度も炸裂する。
そして最後の一匹が爆発すると、アシッドパイソンは口から煙を吐いて倒れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
アシッドパイソンが倒れたのを確認して、ルアはミミルのもとに駆け寄った。
「コフッ……た、倒しちゃった……の?」
「無理にしゃべっちゃダメです!!今回復魔法をかけますから!!」
口から少し血を流しているミミルにルアは必死に回復魔法をかける。
その甲斐あって、少しずつミミルの呼吸が整い始めた。
「ふぅ……はぁ~……ありがと。キミ回復魔法も使えたんだ。」
「お母さんに教えてもらったんです。ボクは戦うのは苦手で……こうやって傷ついた人を治せたらいいなって。」
「戦うのは苦手って……アシッドパイソンを倒した子が言う言葉じゃないと思うけど。」
そして回復魔法をかけ続けること数分……ミミルは完全回復する。
「うんうん、折れてたあばら骨もくっついてる。完璧ね、ありがとう。」
「えへへ、治ってよかったです。」
ポンポンとルアの頭を撫でていたミミルは、彼が喜ぶ表情を見てポッ……と顔を赤くした。
「~~~っ!!さ、さてっ……それじゃあ精霊花が萎れる前に帰りましょ。」
「はいっ!!」
そして二人は洞窟を抜け、エルフの集落へと帰路につくのだった。
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