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第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第195話 二人の堕天使

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 窓の外に見える光景を眺めるルアとルシファー。

「天使の数が、今までと全然違う。」

「それほどあちらも本気でルア様を狙ってくるということです。それこそこの場で命を奪いに来ているかもしれませんね。」

「ひっ……。」

 にこやかに微笑みながらサラリと恐ろしいことを口にしたルシファー。それに思わずルアは恐怖で身を震わせた。

「フフフ、怖がらせてしまって申し訳ありません。ですが、そのような結末になることはありませんのでご安心ください。」

 そう声をかけてルアのことをひとまず安心させると、ルシファーは彼にあるお願いを持ちかけた。

「さて、ガブリエルと相まみえる前にルア様に一つお願いがございます。」

「お願い……ですか?」

「はい、他の方々には説明したのですが……七大天使は他の天使とは違い、地上の穢れを防ぐ結界を体に纏っています。その結界を越えなければ七大天使の体に触れることすらできないのです。」

「えっ、そ、そんなのどうすれば。」

「七大天使の結界を破るには強い欲望が必要なのです。そして現在……ここにはそれを扱える者が私しかおりません。なので……」

「ルシファーさんにメタモルフォーゼすればいい……ってことですか?」

「聡明な頭脳で助かります。今ルア様が言った通り、私にメタモルフォーゼをしていただければ、ガブリエルの体に触れることができるようになり攻撃を通すことができるようになるのです。」

「えっと、それじゃあ……メタモルフォーゼ。」

 ルシファーの願い通りルアは彼女のことを思い浮かべてメタモルフォーゼと口にした。すると、今回は輝くような光ではなく、どこまでも底が見えないような暗い光が彼の体を包み込む。
 そしてその光がゆっくりとルアの体に取り込まれていくと、暗い光の中からルシファーと同じ漆黒の翼を携えたルアが姿を現した。

 自分と同じ堕天の証である黒い翼を生やしたルアを見て、ルシファーは微笑んだ。

「お見事でございますルア様。」

 そしてルアはゆっくりと目を開けると、自分の体に目を向けた。

「あれ?今度は翼が黒い?」

「ついこの間は天使であった私のことを模倣したので白い翼だったようですが、今回は堕天した後の私になっているようですね。今回は好都合です。」

 ルシファーがおもむろにルアへと自分の神器の明星を近づけると、ルアの体からふよふよと彼女と同じ明星が姿を現した。

「私が扱う明星は触れたものを消してしまう……という能力がありますが、実はこんな使い方もできるのです。」

 そして二人の明星がピトリとくっついたその時……。ルアは体にある違和感を感じた。その違和感とは、まるで自分が二人いるような……もっと詳しく表現するならば、心に自分以外の誰かが入ってきたような感覚。

「感じますか?今、私とルア様の心を繋げました。なので例えば…………。」

『こんな風に、ルア様の心の中に直接話しかけることも可能なのです。』

「わっ!?体の中でルシファーさんの声が……。」

 ルシファーが口を動かしていないのにも関わらず、突然体の中で反響するように聞こえてきた彼女の声に思わずルアは驚く。
 何度見ても新鮮なルアの反応にルシファーは笑みを浮かべると、今度は自らの口で言った。

「もう一人、明星を与えられた者が現れない限りこの能力を使う日は来ないと思っていましたが……フフフ、未来というものはわからないものですね。」

「あ、あの……ボクの中でルシファーさんの声が聞こえるようになったのはわかったんですけど、これは何に使うんですか?」

「この能力はあくまでもオマケに過ぎません。本当に使いたかったのはこっちです♪」

「ふえっ?」

 ルシファーがそう言って右手を上に上げると、その瞬間ルアの体に糸が通ったような感覚が走る。そして次の瞬間には彼もルシファーと鏡合わせになるように左手を上に上げていた。

「あ、あれ!?な、なんで?ボク手を動かしてないのに……。」

「フフフ、コレが明星の二つ目の能力です。これを使うことによって、仮にルア様にガブリエルが攻撃を仕掛けようとしたとしても、私が体を動かせば……攻撃を避けることが可能になります。そしてコレが最も役立つのが、ガブリエルの神器の対策ですね。彼女の神器の有効範囲を知る私がルア様を動かし、神器の力の発動を未然に防ぎます。」

 言わば、今のルアはルシファーの操り人形のような状態になってしまったのだ。そしてそれはルシファーも同様であり……。

「ちなみにこの能力はルア様も使うことができますよ?」

「ぼ、ボクもですか?」

「はい、私のことを強く意識して……体を動かしてみてください。」

 ルシファーに言われるがまま、ルアは彼女のことを意識しながら体を動かした。すると、ルシファーはルアとまったく同じ動きをして見せたのだ。

「ほ、ホントですね。」

「フフフ、そうですよ。ルア様がもっと私を意識をすれば……私の体を自由に動かすこともできるのです。そうすれば…………。」

 スッとルシファーはルアの耳元に顔を近づけると、そっと囁いた。

「あんなことや、こ~んなこともできるかも……しれませんね♪」

「~~~っ!?」

「フフフ冗談です。さて、ではルア様……行きましょう。」

 くすりと悪戯に笑うと、ルシファーはルアの手を引いて歩き出すのだった。
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