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第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第163話 再びの来襲

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 ドンッ………!!

 ルアのいるところから離れたところで何かがぶつかり合ったような大きな衝撃音が鳴る。それによって森にいた鳥たちが一斉に身の危険を感じどこかへと羽ばたいていってしまう。

「……今の音は?」

 突然鳴り響いた轟音に首を傾げたルア。彼がその音の正体を知る前にドレスが反応した。

『強大な衝撃波を検知、防御壁展開します。』

「えっ?」

 そうドレスから声が響くとルアの体を覆うように黒いオーラがドレスから溢れ出した。その次の瞬間……自生している木をなぎ倒すほどの衝撃波がルアを襲った。

「わぁっ!?」

 その衝撃波がようやく収まると、ルアを覆っていた黒いオーラがドレスへと吸収されていく。そしてルアが目を開いたとき、辺りの光景は一変していた。

「いったい……何が起こったの?」

 先ほどまで青々と生い茂っていた辺りの木々は、無惨にも薙ぎ倒され、すっかり見通しが良くなってしまっていた。

 様変わりしてしまった辺りを見渡していると、遠くの方に二人の人影が見えた。

「あれって……ロレットさんと、ミリアさん?」

 ルアの目にはお互いに剣と鎌をぶつけ合ったまま立ち止まっているロレットとミリアの姿が映った。

「あ、あはは……これは……予想外だったよ。」

「フフ……フ、ようやく……完成した……な。」

 二人はポツリとそう呟くと前のめりに同時に倒れ伏した。
 そこにルアが駆けつける。

「ろ、ロレットさん、ミリアさん!!だ、大丈夫ですか?」

「「…………。」」

 ルアが声をかけるが、二人は反応しない。

『状態を解析…………………解析完了。魔力切れによる気絶と断定。生命に異常なし。』

 ルアの心を悟ってか、ドレスはロレットとミリアの状態を解析し、命に別状がないことを告げた。

「そ、そうなんだ……よかった。」

 ドレスから響いた言葉にルアがホッと安心していると、ルアの前にアルが姿を現した。

「ふむふむ、これで残るは三人……か。」

「あ、アルさん?」

「この子達はちゃんと向こうで治療しとくから。君は今に集中しなさい?」

 アルは二人のことを抱き抱えると、チラリと辺りの惨状を見てため息を吐いた。

「まったく……自然は壊しちゃダメでしょ。」

 そして彼女がパチンと指を鳴らすと、折れた木から新芽が伸び、あっという間に辺りにもとの景色が戻った。 

「これでよし。それじゃあねっ!!」

「あ、ちょっとまっ…………。」

 ルアの制止の声が届く前にアルは目の前から姿を消した。

「あぁ……行っちゃった。」

 ロレット、ミリア相討ちにより脱落 残り3名。











 ロレットとミリアがアルによって回収されてから、ルアは特に行くあてもなく森のなかをさ迷っていた。そしてあることを考えていた。

「う~ん、さっきアルさん……残り三人って言ってたよね。お母さんと、東雲さんはわかるけど……後は誰?クロロさんは最初に木にぶつかってたし、真琴さんはモフッたし……エナさんはあそこでずっと待ってるはずだし、ロレットさんとミリアさんはさっきアルさんが連れてっちゃったし……そうなると残ってるのはお母さんと東雲さんだけなはずなんだけどなぁ。」

 ルアは今まで出会い制圧してきたことを振り返るが、やはり残っているのは三人ではなく由良と東雲の二人という結論にたどり着く。

「う~ん……。」

 ルアが悩みうなり声をあげていると、今まで喋らなかったドレスから言葉が響いた。

『急速に迫ってくる生体反応を確認。対処にあたります。』

「えっ……?」

 ドレスから声が響いたかと思うと、ルアの体が突然宙を舞った。ドレスがルアを操り、宙へと飛び上がったのだ。
 そして先ほどまでルアがいた場所にある人物が走り込んできた。

「にししし……♪よ~やく追い付いたよルアちゃん!!」

「く、クロロさん!?な、なんで……さっき木にぶつかってたはずじゃ……。」

「あのぐらいじゃ私は諦めないよ~?特にルアちゃんの初めてを貰えるなら……ねっ!!」

 宙に浮いていたルアへと向かってクロロは一直線に飛びかかる。

 しかし、ドレスによって体を操作されているルアは彼女の突進を空中であっさりと回避した。

「んにゃっ!?避けるね~……でも空中で動けるのはルアちゃんだけじゃないんだよ?」

 クロロは一瞬驚いた表情を浮かべるが、すぐにニヤリと笑うと、空中で体を翻し、
 そして再びルアへと向かってつかみかかる。そうしてルアに手が届く寸前だった。

『軌道の解析終了。これより無力化を開始します。』

「んにゃっ!?消え…………ふみっ!?」

 クロロの前から姿を消したルアは、次の瞬間クロロの背後に周り、フェザータッチで背中を撫でた。すると、クロロの体がふるふると震え、尻尾がピンと立った。
 それを見計らってか、ルアは背中を撫でた手を尻尾へと向かって動かし、そっとクロロの尻尾を掴んだ。

「にゃ……にゃはは……ざ、残念尻尾の弱点は克服済……みぃっ!?」

 クロロがそう言い終える前にルアは余った片方の手でクロロの尻尾の付け根をトントンとリズミカルに叩く。

「おっ!?な、なにっ……これっ!?お腹の下がキュンキュンするぅ♥️」

 トントン……トントン……トントン。

「あ、あ……だ、だめっ……これっ、だめぇぇぇぇっ!!」

 最後に大きくクロロは体を反らせると、ルアの手の中でぐったりとしてしまう。

 クロロ脱落 残り2名。
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