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第二章 呪われた運命
第138話 東雲とリリィ
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突如として姿を消した東雲とリリィはどこに行ったかと言うと……。
「くくくくく、まさか一日で言葉を話せるようになっただけでなく……よもや妾に覚醒の指南をねだってくるとはな。」
鬱蒼とした森の中を歩く東雲は、くつくつと笑いながら後ろを振り返る。彼女の後ろには、リリィの姿があった。
「なぜそこまで覚醒にこだわる?今現在不自由しているというわけではないだろう?」
「……不自由……してる。」
リリィは自分の下半身の自在に動く足がわりの根っこを忌々しそうに眺める。
「なるほど、その下半身に不満がある……ということか。」
「ルアがアルラウネになったとき……ルアは足があった。……でも、普通の……アルラウネ足……無い。」
「ほぅ……アルラウネに変身したルアには足があった……ということか。」
リリィの説明に東雲は少し考えるような仕草を見せると、くつくつと笑い始めた。
「くくくくく、なるほど……なるほどなるほど。お前は、自分が覚醒した姿を見せつけたルアに嫉妬したということだな?」
「嫉妬……違う。リリィも……皆と同じがいい。それだけ。」
「…………皆と同じがいい……か。確かにそれは嫉妬ではないな。」
ピタリと歩みを止めた東雲はリリィに向かって歩み寄ると言った。
「それはお前が自分に嫌気がさしている証拠だ。」
「……っ!!違う、リリィは…………っ。」
「何も違わん。空を飛べぬ者が空を自由に飛べる者を羨むのと同じだ。」
「…………っ。」
東雲の言葉にリリィは何も言い返すことはできなかった。うつむく彼女に東雲は再びクスリと笑うとある言葉をかけた。
「……だが、今の自分を変えたい……そう思う気持ちは大事だ。向上心に繋がる。」
そう語りながら東雲はリリィの周りをくるくると歩き回る。そして彼女の眼前でピタリと歩みを止めると、リリィの瞳の奥を見据えながら言った。
「お前は今の自分を捨てる覚悟はあるか?」
「…………ある。」
「くくくくく、迷わずに答えるその姿勢……良い。ならば、もがけ、もがいて、もがいて、死に物狂いでもがき抜け。今の自分を捨てるために……な。」
「わかってる……早く始めて。リリィは……もう準備できてる。」
「威勢も良いな若造め。」
「樹齢を含めたら……東雲よりリリィのほうが年上。若造じゃ……ない。」
「くくくくく、言ってくれるわ。では、早速始めるか。」
すると、突然東雲はリリィの前から姿を消した。そして森の中に反響するように東雲の声が響く。
「最初の試練は妾を見つけること……だ。ここはお前の生まれた森だ……見つけるのは容易いだろう?」
「……わかった。」
リリィが答えると東雲の言葉は一切聞こえなくなった。彼女はふぅ……と一つ息を吐き出すと、下半身の根を強く地面に差し込んだ。
そして瞳を閉じた……。
すると、リリィの頭の中に森の木々から見た視界が共有される。
これはアルラウネ特有の能力で、自身の根と繋がった植物から視覚を得ることができるのだ。
「…………いない?」
しかし、周囲の木々から視界を得てもどこにも東雲の姿は見当たらない。
「どこ……この森のどこかにいるはず。」
さらに根を伸ばして索敵範囲を広げるが、一向に東雲の姿は見当たらない。その現状に思わずリリィは首をかしげた。
「……どうして……どこにもいない。……まさかもうこの森の中にはいない?」
そうポツリとリリィが呟いたその時、再び東雲の声が響く。
「くくくくく、どうした?妾が見つけられんか?」
「……おかしい。この森全部見た……でも東雲いない。」
「何も不思議なことではない。お前がそうやって木々から視界を得るのは予想していた。そう簡単に見つけられるようにするわけがなかろう?」
「じゃあ東雲は……ホントにこの森にいる?」
「もちろんだ。だが、そうやってアルラウネの力に頼っているようでは……いつまで経っても妾を見つけることなどできんぞ。この狭い森のなかでも……な。」
そしてまた東雲の言葉が聞こえなくなる。
リリィは地面から下半身の根を引っこ抜くと、瞳を開けた。
「……なら地道に探す。すぐに……見付ける。」
東雲の言葉通り、アルラウネとしての能力に頼ることを止めたリリィはゆったりとした足取りで森の奥へと向かったのだった。
「くくくくく、まさか一日で言葉を話せるようになっただけでなく……よもや妾に覚醒の指南をねだってくるとはな。」
鬱蒼とした森の中を歩く東雲は、くつくつと笑いながら後ろを振り返る。彼女の後ろには、リリィの姿があった。
「なぜそこまで覚醒にこだわる?今現在不自由しているというわけではないだろう?」
「……不自由……してる。」
リリィは自分の下半身の自在に動く足がわりの根っこを忌々しそうに眺める。
「なるほど、その下半身に不満がある……ということか。」
「ルアがアルラウネになったとき……ルアは足があった。……でも、普通の……アルラウネ足……無い。」
「ほぅ……アルラウネに変身したルアには足があった……ということか。」
リリィの説明に東雲は少し考えるような仕草を見せると、くつくつと笑い始めた。
「くくくくく、なるほど……なるほどなるほど。お前は、自分が覚醒した姿を見せつけたルアに嫉妬したということだな?」
「嫉妬……違う。リリィも……皆と同じがいい。それだけ。」
「…………皆と同じがいい……か。確かにそれは嫉妬ではないな。」
ピタリと歩みを止めた東雲はリリィに向かって歩み寄ると言った。
「それはお前が自分に嫌気がさしている証拠だ。」
「……っ!!違う、リリィは…………っ。」
「何も違わん。空を飛べぬ者が空を自由に飛べる者を羨むのと同じだ。」
「…………っ。」
東雲の言葉にリリィは何も言い返すことはできなかった。うつむく彼女に東雲は再びクスリと笑うとある言葉をかけた。
「……だが、今の自分を変えたい……そう思う気持ちは大事だ。向上心に繋がる。」
そう語りながら東雲はリリィの周りをくるくると歩き回る。そして彼女の眼前でピタリと歩みを止めると、リリィの瞳の奥を見据えながら言った。
「お前は今の自分を捨てる覚悟はあるか?」
「…………ある。」
「くくくくく、迷わずに答えるその姿勢……良い。ならば、もがけ、もがいて、もがいて、死に物狂いでもがき抜け。今の自分を捨てるために……な。」
「わかってる……早く始めて。リリィは……もう準備できてる。」
「威勢も良いな若造め。」
「樹齢を含めたら……東雲よりリリィのほうが年上。若造じゃ……ない。」
「くくくくく、言ってくれるわ。では、早速始めるか。」
すると、突然東雲はリリィの前から姿を消した。そして森の中に反響するように東雲の声が響く。
「最初の試練は妾を見つけること……だ。ここはお前の生まれた森だ……見つけるのは容易いだろう?」
「……わかった。」
リリィが答えると東雲の言葉は一切聞こえなくなった。彼女はふぅ……と一つ息を吐き出すと、下半身の根を強く地面に差し込んだ。
そして瞳を閉じた……。
すると、リリィの頭の中に森の木々から見た視界が共有される。
これはアルラウネ特有の能力で、自身の根と繋がった植物から視覚を得ることができるのだ。
「…………いない?」
しかし、周囲の木々から視界を得てもどこにも東雲の姿は見当たらない。
「どこ……この森のどこかにいるはず。」
さらに根を伸ばして索敵範囲を広げるが、一向に東雲の姿は見当たらない。その現状に思わずリリィは首をかしげた。
「……どうして……どこにもいない。……まさかもうこの森の中にはいない?」
そうポツリとリリィが呟いたその時、再び東雲の声が響く。
「くくくくく、どうした?妾が見つけられんか?」
「……おかしい。この森全部見た……でも東雲いない。」
「何も不思議なことではない。お前がそうやって木々から視界を得るのは予想していた。そう簡単に見つけられるようにするわけがなかろう?」
「じゃあ東雲は……ホントにこの森にいる?」
「もちろんだ。だが、そうやってアルラウネの力に頼っているようでは……いつまで経っても妾を見つけることなどできんぞ。この狭い森のなかでも……な。」
そしてまた東雲の言葉が聞こえなくなる。
リリィは地面から下半身の根を引っこ抜くと、瞳を開けた。
「……なら地道に探す。すぐに……見付ける。」
東雲の言葉通り、アルラウネとしての能力に頼ることを止めたリリィはゆったりとした足取りで森の奥へと向かったのだった。
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