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第二章 呪われた運命
第133話 名付け
しおりを挟む「んぅ……あっ?」
「おぉ!!目を覚ましたかルア!!」
ルアが目を覚ますと、由良が優しく抱き締めてきた。
「あ……れ?ボク…………。」
「お前は今の今まで魔物の毒に犯されていたのだ。」
「あ、あの時……。」
ルアは森で触手に捕らわれ、何かの液体を無理やり飲み込まされたことを思い出した。思い返せばあれが毒だったのかもしれない。
「一時はどうなることかと思ったが……こやつがお前の毒を中和してくれたらしい。」
東雲が目を向けた方にルアが視線を向けると、そこには花の少女が花弁の中からひょっこりと顔を出していた。
「もしかして……あの時もボクを助けようとしてくれてたの?」
「あぅ~。」
少女は小さく頷いた。
「最初目にしたときは何者かと思ったのじゃが……ルアを助けてくれて感謝するのじゃ!!」
由良は少女の手をとって感謝の言葉を述べる。そんな時、部屋の扉が音を立てて開いた。
「あ、ルアちゃん起きてる!!」
「良かったです~。」
「まったく、心配したんだぞ。」
「あはは、すみません……。」
部屋の中に入ってきたのはクロロ、エナ、そしてロレットだった。
「だが、無事で何よりだ。お前は我らの希望だからな。」
ポンポンとロレットはルアの頭を撫でた。そして彼女は花の少女へと向かって頭を下げた。
「ルアのことを救ってくれてありがとう。この国の主として礼を言う。是非名前を教えてもらいたい。」
「あぅぁ~?」
花の少女はロレットの言葉に首をかしげた。
「むっ?名を教えてほしいのだが……。」
「ロレット、そいつは言葉を話すことはできんぞ?何せ成り立てのようだからな。」
しょうじょがこたえてくれないことに疑問を持ったロレットに東雲が彼女が成り立てであることを話した。
「成り立て……ということは魔物から魔物娘へと進化を遂げたのか?」
「妾の見立てでは恐らくそうだろう。そしてそいつを連れてきたのは他でもない、そこにいるルアだ。だがまぁ、連れてきて正解だったな。そいつが解毒を施してくれなければ今頃ルアはどうなっていたことか。」
「なるほど……そういう経緯があったのか。」
「あ、あの、ロレットさん……この子をこの城に住ませちゃダメですか?」
おずおずとルアはロレットに問いかける。すると、ロレットはクスリと笑い即答した。
「別に構わんぞ?なにせ、我らの希望を救ってくれたのだ、部屋の一つや二つ用意しよう。」
「あ、ありがとうございます!」
ロレットの了承を得られたルアはパァッと表情を明るくする。
「それにしても……だ。彼女にも何か名前がなければ今後何かと不自由ではないか?決まった名前があるわけでもないのだろう?」
「それもそうじゃな。」
「じゃあ今から名付け大会って感じですね!?」
「そうだな、全員で名前を出しあって一番彼女が気に入ったものを名付けよう。」
そんなことを話していると、再びドアが開く。
「あははっ♪ルア君が倒れたって聞いたから急いできてみたら……なんか面白そうなことやってるね?」
「あてらも混ぜてほしいどす~。」
ドアを開けて中に入ってきたのは真琴と、ミリアの二人だった。
「ずいぶん遅かったな?」
じろりと東雲は二人に視線を向けた。
「まぁまぁそう言わないでよ~。結構遠い場所にいてさ、来るのに時間かかったの~。ねっ?真琴ちゃん?」
「そうどす~。」
「……まぁ良い。」
東雲はあまり深くは聞かずに話を打ち切った。
「それで?聞こえてきた声だと、この子の名前を決めようとしてたんだよね?」
「そうだ。」
ミリアは花の少女に近付くと、彼女の体をじっと眺めた。
「ふ~ん、種族的にはアルラウネ……ってとこ?でも自分で好きなように移動できるみたい。ってことは、アルラウネの変異種みたいな感じかな。」
「アルラウネ……ですか?」
「ルア君は見たことないかな?彼女みたいに下半身が植物で、上半身が人間の姿をした魔物娘のことだよ。まぁ、大半のアルラウネはエルフと共存してるから見る機会は少ないけどね。」
「そ、そうなんですか。」
「それでも、植物系の魔物がアルラウネに進化することってのは本当に稀なんだ。何せ人間の体を作ること自体が困難だからね。」
ミリアの言葉にルアはある疑問を抱いた。
「じゃあなんでこの子は……。」
「恐らくあの森に漂っている霊気を吸って力を得たのだろうな。その証拠にこやつの魔力の器は異様に大きい。」
「なるほど……。」
ルアが少し彼女のことを知ったところで、クロロが声をあげた。
「そ、それじゃあそろそろ名前を決めましょ!!私いい名前思い付いたんですよ。」
「ほう?言ってみろ。」
「ズバリ……花子ちゃんです!どうですか?おっきなお花ついてるし、可愛くないですか?」
クロロが考えた名前に全員がシン……と静まり返る。その雰囲気にクロロは顔から一つ冷や汗を流した。
「お前……胸も無ければ名付けの才能も無いのか?」
「にゃっ!?にゃにゃにゃっ……む、胸の大きさは関係なくないですか!?それに私と東雲さんそんなに大きさ変わんないですよね!?」
「うるさい貧乳猫、妾のほうがお前より大きいに決まっているだろうが!!」
そして言いあいを始めた二人。そんな二人は放っておいて残ったみんなで花の少女の名前を決めることになったのだった。
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