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第二章 呪われた運命

第131話 花の少女

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 謎の植物によって連れ去られてしまったルアは、森の奥で全身をぬるぬるとした触手で拘束されてしまっていた。

「うぅ……ぬるぬるして気持ち悪い。この……離してよっ!!」

 ジタバタとルアはもがくが、触手の拘束から逃れられそうにはない。それどころかどんどんルアの体に触手がまとわりついていく。

「ぼ、ボクの力じゃ抜け出せない……こうなったら……メタモ……むぐっ!?」

 自分の切り札であるメタモルフォーゼを使おうと、口を開けたルアだったが、その開いた口に触手が潜り込んだ。

「ん~っ!!むぐっ……む~っ!!」

 うねうねと口のなかで蠢く触手に不快感を覚えるルア。なんとか噛みきれないか、試してみたが……まるでゴムのような弾力で、まるで歯が立たない。

「んむぅ……んっ!?」

 口に触手が入り込み、声する出せなくなったルアの前に何やら花の蕾のようなものが先端に付いた触手が現れる。

 そしてルアの顔の前で、その蕾はピンク色の妖しげな花を咲かせた。
 いったい何をされるのかとルアが不安になっていると、突然……。

 ボフッ!ボフッ!

「んんっ!?」

 花から花粉が放出され、口を塞がれていたルアはそれを鼻から吸い込んでしまう。
 すると、強烈な甘い香りが鼻から頭まで突き抜けるような感覚にルアは体をピクリと体を震わせた。

(こ、これぇ……ダメ。吸い込んじゃ……頭溶けちゃいそう。)

 花粉によってトロンと表情が蕩け始めてしまっているルア。しかし、なんとか残っている理性で息を止めて抗おうとする。
 しかし、人間という生物は呼吸無しでは生きてはいけない。いずれ限界がやってくる。

(も、もう……無理。)

「んむ……スゥ…………。」

 ボフッ!

「む~っ!!」

 まるでルアの呼吸の限界が来るのを見計らっていたように、またしても触手の花から花粉が放出される。
 更に嫌なことに、無理して呼吸を我慢していたせいで大きく息を吸った。それにより花粉も先程より多く吸い込んでしまった。

「ん……んっ……。」

 まるで全身を甘い香りが充満して、内側から犯されているような感覚にルアは表情を蕩けさせた。
 そして花粉の効果で体が敏感になっているようで、ぬるぬるとした触手が体を這う度に、ゾクゾクと甘い快感がルアを襲っていた。

 そんな時、何かが這い寄ってくるような音が聞こえた。

「んんっ!?」

 その音でハッと我に返ったルアは、動かせる範囲で周りを見渡す。すると、大きなチューリップのような花が根を足のように動かしてこちらに近付いてきているのが見えた。

(な、なに……あれ。魔物?魔物なの!?逃げなきゃっ……!!)

 残っている力で触手を振りほどこうと暴れるルア。未だ反抗的なルアに、触手が新たな動きを見せる。

「ん~っ!!ん~~~~~っ!!……ふむっ!?」

 突如ルアの目に入ったのは、自分の口に入れられている触手の根本が膨らみ、その膨らみが徐々にルアの口へと向かって近付いてきている光景だった。

 その光景に恐怖を覚え、顔を横に何度も振り拒絶の意思を見せるが、触手はお構い無くルアの口の中にドロドロとした粘性の液体を注ぎ込んだ。

「ん~っ!?んくっ……んむぅ~っ!!」

 触手から注がれる液体は喉に絡み付くようで、とても飲みづらい。だが、飲まないと窒息してしまう。

(これ……変な味…………。もういらないよぉ。)

 そして触手に注がれた液体で胃の中がタプタプになるのを感じたルア。それと同時に体に異変が起き始めていることにも気が付く。

(あれ……力入んない。頭がくらくらする。)

 手足に力が入らなくなり、抵抗すらできなくなってしまった。

 そんなルアの前についに大きなチューリップの姿をした何かが至近距離まで近付いてしまった。

(あぁ……ボク食べられちゃうのかな。)

 そう悟り、ぎゅっと目をつぶったルア。しかし、いっこうに何かをされる気配はない。不思議に思い、ルアが目を開けると、ちょうどチューリップが花開いている時だった。
 そして開いた花弁の中から一人の女の子が姿を現した。

(女の子?魔物じゃ……ない?)

 パチパチとルアが目を見開いていると、花弁から姿を現した少女が手を伸ばし、ルアの頬に触れた。

「あ~……う~……?」

 少女はどうやら言葉を話すことはできないらしく、あ~う~とだけ口にして、ルアのことを観察している。

(言葉が話せないのかな?ひ、ひとまず襲ってくる気配はないけど……。)

 ルアがひと安心したその時……。

「ルア!!無事かっ!!」

「んむっ!!」

 その場に駆けつけたのは魔力の強化を終えた東雲だった。彼女はルアを拘束していた触手をあっという間に細切れにすると、ルアのことを軽々抱き抱えた。

「ぷはっ!!けほっけほっ!!し、東雲さん……ありがとうございます。」

「無事で何よりだ。さて……貴様か?妾のルアを襲ってくれたのは……。」

 ギロリと東雲は少女のことを睨み付け、臨戦態勢に入る。

「あ、東雲さん待ってください!!その子は違うんです。」

「なんだと?」

「あぅ~。」

 花の少女は東雲の視線に恐怖心を抱いたようで、再び花弁の中に閉じ籠ってしまい、ふるふると体を震わせている。

「…………ではなんなのだこいつは。」

「ぼ、ボクにもわかんないですけど……魔物じゃないみたいなんです。」

「魔物じゃない……だと?」

「はい、ボクが捕まってても何もしてこなかったし……それに言葉みたいなのも話すんです。」

 東雲はルアの話を聞いて、深く悩むような仕草を見せ、閉じ籠った少女の方に視線を向けた。

「…………まさか、か?」

 東雲達の会話を、花の少女は花弁から少しだけ顔を出して聞いていた。
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