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第二章 呪われた運命
第123話 東雲の秘策!?
しおりを挟む「さぁて……あいにく妾は腹の虫の居所が悪くてな。手加減できそうにないぞ。貴様はあの弓を使わなくて良いのか?」
バキバキと指を鳴らし、憎悪の炎を燃え上がらせながらアルへと近付く東雲。
「あら、手加減なんて考えてるの?そんな無駄なことを考えてないで…………。」
アルが話している途中で、彼女の眼前に東雲の拳が迫る。しかし、東雲の拳が彼女に当たることはなく、まるで彼女の体を突き抜けるように虚しく空を切った。
「ちっ……。」
「人の話は最後まで聞くことよ。まっ、不意打ちなり何なりと使って私に一撃当ててみなさいよ。そしたらあなた達の勝ちにしてあげるわ。」
「方法は何でもいいのかい?」
今回の東雲達の勝利条件を提示したアルにミリアが問いかける。
「構わないわ。なんなら私に触るってだけでもいいわよ?」
「あははははっ♪ずいぶん私達も舐められてるみたいだねぇ。それも神様の余裕……ってやつかい?」
「一回敗けてるっちゅ~ても、あてらを舐めすぎやない?」
「今の私でもそれぐらいの余裕はあるってことよ。ま、四の五の言わずかかってきなさい。」
「言われなくても行かせてもらうよ。」
余裕ぶっているアルにミリアと真琴が襲いかかる。しかし、先ほどの東雲のように彼女達の攻撃はアルには当たらない。
その様子をじっ……と端から眺めていた東雲。すると、後ろから突然声をかけられた。
「あなたはかかってこないの?さっきはあんなに殺気だってたのに。」
暇そうに問いかけてきたアルに、ポツリと東雲はある言葉をかけた。
「……貴様、どこにいる?」
「……!!」
東雲の言葉にアルは明らかな動揺を見せた。その反応に東雲はニヤリと口角を吊り上げた。
「その反応……やはり妾達が相手取っているモノは、幻影か……それとも何かしらの歩法で生み出した残像か?……まぁどちらにせよ本体は別なところにいるのだろう?」
「…………そこまでわかってるなら、何であの子達に教えてあげないのよ。」
「くくくくく、先ほど貴様は言ったな?一撃でも加えられれば妾達の勝ちだ……と。貴様に最初に一撃をくれてやるのは妾だ。あやつらにくれてやるのは勿体無い。」
「協力する気は更々ないってことね。」
「そういうことだ。」
「……まぁ、あなたの魂胆はわかったけど。1つ質問いいかしら?」
「構わんぞ。」
「どうして今ここにいる私が全部本物じゃないってわかったの?少なくとも、あなたの後ろにいる私が偽物だったとして……あっちの子達が戦ってる私は本物なのかもしれないじゃない?」
素直な疑問を東雲にぶつけるアル。そんな彼女に東雲はため息混じりに答えた。
「そう簡単に一撃を当てさせてくれるわけないだろう?それに、いくら貴様と言えど妾達三人を相手取って近距離戦をやるリスクは犯さない筈だ。」
「……なるほどね。」
「それにさっき妾が攻撃したとき……感じたあの違和感。まるで実体を通り抜けたような感覚。あれが決定的だった。」
「よくわかったわ。それで?あなたはこれからどうするつもりなの?今みたいにぼ~っとして突っ立ってるわけじゃないでしょ?」
「もちろんだ。」
すると、おもむろに東雲は背後にいるアルを無視してルアの方へと歩み寄った。
「あ、東雲さん。」
「ルア、頑張っているところ悪いのだが……少しお前の力を借りたい。」
「ボクの力を……ですか?」
「うむ、とはいってもお前は何もする必要はない。」
「え、それって……どういう…………。」
東雲の考えがわからずに首かしげているルアだったが、そんな彼に東雲は手を翳すと手に魔力を込め始めた。
「破っ!!」
「ふえっ!?」
東雲が魔力を手から放出すると、ルアが身に纏っていた衣服のみが綺麗に全て弾けとび、ルアがあられもないすっぽんぽんの姿になってしまった。
「わぁぁぁぁぁぁぁっ!?な、なななななにするんですかっ!?」
咄嗟にルアは両手で大事な部分を隠して地面にへたりこむ。
「くくくくく、さぁ……姿を現せ変態女神っ!!」
すると、くつくつと笑う東雲のすぐそばの岩影で真っ赤な噴水が上がった。
「ぶふっ!!」
「そこだっ!!」
岩影から吹き上がる赤い噴水のもとへ東雲は魔力を込めた御札を飛ばす。そしてそれが岩肌にペタリと張り付くと大爆発を起こした。
「くくくくく、手応えあり。」
ニヤリと笑う東雲。
そして爆煙の中から人影が飛び出してくる。
「うぅ……ま、まさかそんな手段を使うなんて……ぶふっ!!」
爆煙の中から飛び出してきたのは正真正銘本物のアルだった。鼻を押さえている手からは鼻血が止まることなく、ポタポタと地面に滴り落ちていた。
「妾の作戦勝ち……というわけだ。ルアの裸に興奮するとは、流石は変態女神だな。」
「くぅ……言い返す言葉がないわ。」
そんなやり取りをする二人にルアが声をあげた。
「そ、それよりも!!ボクの服を返してくださいっ!!」
「おぉ、すっかり忘れていた。すまなかったなルアよ……くくくくく。」
思わぬ被害を被ってしまったルアだった。
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