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第二章 呪われた運命

第101話 悪い子は……

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 その次の日……いつものように修練に励んでいたルアだったが、そんな彼のもとにロレットが訪れた。

「あ、ロレットさん……。」

「ルア、由良の事を見てはいないか?」

「お母さんですか?そういえば……今日は見てないような……。」

「ふむ、そうか。実は我との修行にも姿を現していないのだ。」

「う~ん、どうしたんだろ。ちょっとボクお母さんの部屋に行ってみますね。」

「頼んだぞ。」

 そしてルアは由良の部屋へと向かう。その途中……由良の部屋へと続く廊下でルアは異変を感じ取った。

「…………??なんだろう……この甘い匂い。」

 由良の部屋に近づくにつれて、果実が熟れたような甘ったるい香りが漂い始めたのだ。
 その香りを嗅いだ東雲は何かを察したのか、クスリと笑う。

「くくくくく、そういうことか。由良のやつも暫くご無沙汰だっただろうからな。」

「……??何かわかったんですか東雲さん。」

「いや、なんでもない。くくくくく、妾はロレットに稽古をつけてこよう。恐らく由良は部屋から出てこれぬだろうからな。」

 ピョンと東雲はルアの頭の上から飛び降りると城の外へと戻っていった。

「う~ん?な、なんなんだろう……。」

 なにかモヤモヤとした気持ちを抱えつつも、ルアは由良の部屋の前にたどり着いた。すると、やはりこの辺りに漂う甘い香りは由良の部屋から漂ってきているのがわかる。

 一抹の不安を抱えながらルアは由良の部屋の扉をノックした。

「お、お母さん?大丈夫?」

「~~~っ!?る、ルアか!?」

 扉の向こうから、由良の焦って上擦った声が聞こえてくる。

「具合……悪いの?ロレットさん心配してたよ?」

「ち、ちと……な。ろ、ロレットには今日は大事をとって休むと伝えてくれんか?」

「う、うん……わかったけど、ホントに大丈夫?入ってもいい?」

 そしてルアが由良の様子を見ようとドアノブに手をかけたときだった。

「は、入ってはならん!!ダメじゃ!!」

「で、でも心配だよ。……っ入るからね!!」

 由良の言い付けを破り、ルアは部屋の中へと押し入った。すると、むわっ……とさらに濃厚な甘い香りがルアの鼻腔を突き抜けた。そして部屋の中には下着姿で内股になりながらモジモジと太ももを擦り付けている由良の姿があった。

「あ、ご、ごめんなさいっ!!」

 着替え中だと思い込み、ルアが部屋を急いで出ようとすると、突然後ろから手をとられ、ぐいっと引っ張られた。

「あぅっ!?」

 そしてルアはベッドの上に仰向けに寝転がされてしまう。そんな彼の腰の上に由良がのし掛かる。

「ふ~っ……ふ~っ!!まったく悪い子じゃ、入ってはならぬと言ったであろう?」

 息を荒くし、由良はルアのことを見下ろしながら言った。

「ご、ごめんなさい……。」

 下着姿の由良から目を反らすようにしながら謝ったルアだったが、由良に顔を掴まれ強制的に由良へと真っ直ぐな視線を送らされる。

 そして嗜虐的な笑みを浮かべながら由良は口を開く。

「悪い子にはお仕置きが必要じゃ。」

「うぅ……。」

「さて、どうしてくれようかのぉ~。」

 由良はルアに覆い被さるように体を密着させると、彼の耳元でボソリと囁いた。

「また、耳をたっぷりとねぶってくれようか?」

 恥ずかしさで顔を真っ赤にしているルアに嗜虐心をそそられたのか、由良はにんまりと笑みを浮かべた。

「むっふふふふ♪可愛い……可愛いわしのルア……。お前だけは……絶対に誰にも渡さんぞ。」

 ぎゅ~~~っと、いとおしそうに由良はルアのことを抱き締める。そして、彼の首筋に顔を近付けると由良は優しく首筋に口付けした。

「ちゅっ……ちゅっ…………。」

 首筋から徐々に上へと由良は口付けしていき、耳の真下の辺りまで近付くと、突然ルアの耳たぶを口に含んだ。

「はむっ……ちゅっ……れろ~っ。むふふ……ルアの耳たぶは餅のように柔らかいのぉ~。」

「ひっ!?お、お母さん……だ、ダメっ…………。」

 体をビクビクと震わせながら必死にルアは由良に訴えるが、そんな彼の反応がさらに由良の嗜虐心を煽ったらしい。

「ルアはわしがダメと言っても聞いてくれんかったからな。わしもルアのダメ……という言葉は聞かぬぞ?むっふっふ♪」

「あぅぅ……。」

「しかし……一人では片方の耳しか舐めてやれんな。それではつまらん。」

 由良は尻尾を二本に増やすとなにやら魔法を唱え始めた。そして詠唱が完了すると、ルアの目の前で由良が二人に

「お、お母さんが二人!?」

「むっふっふ♪これならば両耳とも味わえる。」

「さぁ……お仕置きの時間じゃぞ♪」

 そして二人がかりでルアは由良に耳を責められる。

 その様子を窓からひっそりと眺めていた者がいた。

「うわ……すっご……あの子体ビクビクさせて、足ピーンってしちゃってる。」

 それはアルだった。ルアの動向を見守っていた彼女はたまたま今の状況を目撃してしまったのだ。

「な、なんか……いけないものを見ちゃった気がするけど……も、もう少し位なら見ててもいいよね?」

 結局一部始終アルはルアが由良に好き勝手にされている姿を眺めていた。
 
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