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第二章 呪われた運命
第100話 平和という違和感
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無事にクロロやエナが覚醒を終えてから数日後……ルアたちは各々修練に励みながらも平和な生活を送っていた。が、そんな生活に異を唱える者が一人……。
「おいルア、暇だ。」
相も変わらずルアの頭の上に居座る東雲がルアの頭をぺちぺちと叩く。
「ボクにそんなこと言われても……。」
魔力を操りながら、ルアは頭の上にいる東雲の無茶ぶりに困り果てた表情を見せた。近頃毎日のように東雲はルアにこんな無茶ぶりをしていた。
「何か考えろ。でないと暇すぎておかしくなりそうだ。」
「う~ん、じゃあ東雲さんもボク達みたいに修行したらどうですか?」
「簡単に言ってくれるなお前は。妾は由良達のような金の卵ではない。例えるなら、もはや成熟した立派な鳥だ。これがどういう意味か分かるか?」
「え、えっと……。」
ルアが言葉に詰まっていると、じれったくなった東雲が自分の口で答えを言った。
「つまり、妾がこれ以上強くなることはとてつもなく難しいということだ。」
「そ、そうなんですね……。」
少し気まずくなったルアだったが、そんな彼に東雲はさらに続けるように言った。
「だが、方法がないわけではない。」
「えっ?」
「本来、妾達のような魔物から発達した人類は人間の♂から精を搾取し力を増すという性質がある。」
東雲の説明にルアが思わずポカンと呆気にとられたような表情を浮かべる。そんな彼に東雲はある例を挙げた。
「サキュバスという種族がいるだろう?」
「あ、ロザリィさんみたいな……。」
「あぁ、あれが典型的な例だな。今の時代はそれこそ♂がいない故に搾精による力の増強はできないが……。それでも奴等は変わらず女から性気を吸って生きている。」
説明をしながら東雲はルアの頭の上からピョンと飛び降りると、突然人の姿へと変貌を遂げた。そして妖しげな笑みを浮かべながらルアへと近付き、彼の頬に手を添えた。
「仮に妾にもっと強くなってほしいのならば……。」
東雲は口をルアの耳元に近付け、ボソリと囁いた。
「妾にお前の精を捧げれば良いのだぞ?」
耳元でそう囁かれたルアは一気に顔が赤くなり、モジモジと恥ずかしそうにし始めた。そんな彼の反応を見て東雲は楽しそうにクスリと笑う。
「くっくくくく……なぁに悪い冗談だ。……だが、頭には入れておけ。由良やロレット達が行き詰まったとき……助けになれるのはお前だけだということをな。」
「……は、はい。」
「わかったのなら良い。」
素直にルアが頷いたのを見た東雲は満足そうに頷くと、狐の姿へと戻り再びルアの頭の上へと登った。
「さて、お前の恥ずかしがる表情を見て妾は満足だ。修練を続けるのだ。」
「あ、あんまりからかわないでくださいよ……。」
そう苦言をていしたルアの表情は未だに赤い。
しばらくルアの修練の様子を見守っていた東雲だったが、ふとあることを口にした。
「しかし、最近は女神からの連絡もないな。」
「そういえば……確かに最近レトさんの声を聞いてないですね。」
普段であれば、何か事あるごとにルア達に声を届けていた女神レトだったが、最近はめっきりその声を二人は聞いていない。
東雲はそれに違和感を感じていた。
「……向こうの方で何かあったか?」
「そ、それってレトさんが天使にやられちゃったって事ですか!?」
「だとしたら既に無数の天使が来襲してきているだろう。……天使を抑えながらも、向こうの方で何か起こっているのやも知れんな。」
東雲の言うことは尤もだ。仮にルアの言うとおりレトが天使に敗北していた場合、今のような平和な日々を過ごすことは出来ていないはずだ。
しかし、今の状況を見る限り……あちら側で何か起こったと捉えるのが一番自然だろう。
「だが、妾達があちらの様子を知ることはできぬ。今はまだ……あちらから連絡が来るのをゆるりと待つとしよう。」
「だ、大丈夫かな……。」
レトの様子が心配になったのか、少し魔力の動きがぎこちなくなったルアに東雲は声をかけた。
「あちらの心配よりもこちらの心配だ。ルア、お前が一番天使に対しての切り札であることを忘れるな。」
「は、はい……。」
東雲に声をかけられ、集中力を取り戻したルアは再び修練へと臨む。
そんな二人の姿を影ながら眺める者が一人いた。
(……あの二人がお母様が言ってた子ね。)
二人を影ながら眺めていたのはアルだった。彼女はどうやらレトによって地上へと送られたらしい。そしてルア達の動向を見守っているようだ。
(あの狐の子……凄い力ね。ホントに神にすら届きそうな位……でもあっちの男の子は、なんか……言い方が悪くなっちゃうけど、弱そうね。)
東雲の実力は見てすぐにわかったアルだったが、ルアのことはあまり強そうには見えないらしい。
(でもお母様のお気に入りみたいだし……なにかあるに違いないわ。)
気配を完全に消しているアルは東雲にもルアにも気付かれず、二人の事を見守るのだった。
「おいルア、暇だ。」
相も変わらずルアの頭の上に居座る東雲がルアの頭をぺちぺちと叩く。
「ボクにそんなこと言われても……。」
魔力を操りながら、ルアは頭の上にいる東雲の無茶ぶりに困り果てた表情を見せた。近頃毎日のように東雲はルアにこんな無茶ぶりをしていた。
「何か考えろ。でないと暇すぎておかしくなりそうだ。」
「う~ん、じゃあ東雲さんもボク達みたいに修行したらどうですか?」
「簡単に言ってくれるなお前は。妾は由良達のような金の卵ではない。例えるなら、もはや成熟した立派な鳥だ。これがどういう意味か分かるか?」
「え、えっと……。」
ルアが言葉に詰まっていると、じれったくなった東雲が自分の口で答えを言った。
「つまり、妾がこれ以上強くなることはとてつもなく難しいということだ。」
「そ、そうなんですね……。」
少し気まずくなったルアだったが、そんな彼に東雲はさらに続けるように言った。
「だが、方法がないわけではない。」
「えっ?」
「本来、妾達のような魔物から発達した人類は人間の♂から精を搾取し力を増すという性質がある。」
東雲の説明にルアが思わずポカンと呆気にとられたような表情を浮かべる。そんな彼に東雲はある例を挙げた。
「サキュバスという種族がいるだろう?」
「あ、ロザリィさんみたいな……。」
「あぁ、あれが典型的な例だな。今の時代はそれこそ♂がいない故に搾精による力の増強はできないが……。それでも奴等は変わらず女から性気を吸って生きている。」
説明をしながら東雲はルアの頭の上からピョンと飛び降りると、突然人の姿へと変貌を遂げた。そして妖しげな笑みを浮かべながらルアへと近付き、彼の頬に手を添えた。
「仮に妾にもっと強くなってほしいのならば……。」
東雲は口をルアの耳元に近付け、ボソリと囁いた。
「妾にお前の精を捧げれば良いのだぞ?」
耳元でそう囁かれたルアは一気に顔が赤くなり、モジモジと恥ずかしそうにし始めた。そんな彼の反応を見て東雲は楽しそうにクスリと笑う。
「くっくくくく……なぁに悪い冗談だ。……だが、頭には入れておけ。由良やロレット達が行き詰まったとき……助けになれるのはお前だけだということをな。」
「……は、はい。」
「わかったのなら良い。」
素直にルアが頷いたのを見た東雲は満足そうに頷くと、狐の姿へと戻り再びルアの頭の上へと登った。
「さて、お前の恥ずかしがる表情を見て妾は満足だ。修練を続けるのだ。」
「あ、あんまりからかわないでくださいよ……。」
そう苦言をていしたルアの表情は未だに赤い。
しばらくルアの修練の様子を見守っていた東雲だったが、ふとあることを口にした。
「しかし、最近は女神からの連絡もないな。」
「そういえば……確かに最近レトさんの声を聞いてないですね。」
普段であれば、何か事あるごとにルア達に声を届けていた女神レトだったが、最近はめっきりその声を二人は聞いていない。
東雲はそれに違和感を感じていた。
「……向こうの方で何かあったか?」
「そ、それってレトさんが天使にやられちゃったって事ですか!?」
「だとしたら既に無数の天使が来襲してきているだろう。……天使を抑えながらも、向こうの方で何か起こっているのやも知れんな。」
東雲の言うことは尤もだ。仮にルアの言うとおりレトが天使に敗北していた場合、今のような平和な日々を過ごすことは出来ていないはずだ。
しかし、今の状況を見る限り……あちら側で何か起こったと捉えるのが一番自然だろう。
「だが、妾達があちらの様子を知ることはできぬ。今はまだ……あちらから連絡が来るのをゆるりと待つとしよう。」
「だ、大丈夫かな……。」
レトの様子が心配になったのか、少し魔力の動きがぎこちなくなったルアに東雲は声をかけた。
「あちらの心配よりもこちらの心配だ。ルア、お前が一番天使に対しての切り札であることを忘れるな。」
「は、はい……。」
東雲に声をかけられ、集中力を取り戻したルアは再び修練へと臨む。
そんな二人の姿を影ながら眺める者が一人いた。
(……あの二人がお母様が言ってた子ね。)
二人を影ながら眺めていたのはアルだった。彼女はどうやらレトによって地上へと送られたらしい。そしてルア達の動向を見守っているようだ。
(あの狐の子……凄い力ね。ホントに神にすら届きそうな位……でもあっちの男の子は、なんか……言い方が悪くなっちゃうけど、弱そうね。)
東雲の実力は見てすぐにわかったアルだったが、ルアのことはあまり強そうには見えないらしい。
(でもお母様のお気に入りみたいだし……なにかあるに違いないわ。)
気配を完全に消しているアルは東雲にもルアにも気付かれず、二人の事を見守るのだった。
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