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第一章 転生そして成長

第54話 肉球を求めて

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 そしてあっという間にルアが作った料理を食べ終えてしまった三人。
 やはり量が量だったため、三人ともきっちりお腹いっぱいになったらしくお腹を膨らませて、椅子の背もたれに寄りかかっていた。

「かふっ……流石の妾ももう食えん。」

「相も変わらずルアの作る料理は美味しかったのじゃ~。」

「うむ、大満足だな。」

 そんな最中、ルアは一人東雲に詰め寄った。

「どうでしたかっ!?」

「む、むっ!?ま、まぁ……妾に作る料理としては、きゅ、及第点だな。」

「そのわりにはずいぶん食べてたみたいですけど?」

「そ、それなりに美味かったからな。」

「ふ~ん…………。」

 じりじりと詰め寄ってくるルアに、東雲はだらだらと冷や汗を顔から流す。そして、ちらちらと由良とロレットの二人に助け船を出すように視線を向けるが、彼女たちはそれに気がついていない。

 そして誰の助けもないことを悟った東雲は、話をそらすために別の話題を切り出した。

「そ、そうじゃ!!ほれ、次に行かねばならん場所について話し合っておかねばならんだろう?」

「次に行かなきゃいけない場所……ですか?」

「うむ、ルアお主はあやつから聞いておるやもしれんが、天使は一人ではない。故に妾達で相手にするのにも限界がある。だから天使に対抗できる仲間を集めねばならん。」

「……なんかすごい話題をずらされた気がするんですけど、今はそっちの方が大事だからそっちの話を聞くことにしておきます。」

 しぶしぶルアは東雲の話を聞くことにした。

「それで、東雲さんは天使に対抗できるような強い人に心当たりはあるんですか?」

「もちろんあるぞ?そやつは生前の妾と同等に渡り合った実力者だ。」

「ほぅ?それは面白そうな話だな。」

 東雲の話にロレットが反応した。

「我のお婆様以外にそんな実力者がいたとは……いったい誰なのだ?」

「大霊山の狸どもの親玉だ。」

「大霊山?どこですかそれ?」

 ルアは大霊山という聞いたことのない地名に首をかしげているが、由良とロレットはそのワードにピクンと反応した。

「そっちの二人は知っているようだな。」

「大霊山と言えば荒くれ者の狸が数多く暮らしているという法の外の世界ではないか。」

「その通り、妾が生きていた時代もあの場所だけはコレットの作った法というものに縛られていなかった。文字通り無法地帯というやつだな。」

「な、なんかすごい怖そうなところですね。そんなところに行かなきゃいけないんですか?」

「うむ、次に来る天使達に備えるためあやつの力は必要だ。それに上手くいけば狸どももこちらに協力してくれるやもしれん。」

 どんどん話が進んでいくなか、あることを疑問に思った由良が東雲に問いかけた。

「東雲様、一つ良いですかな?」

「ん?どうした?」

「なぜ、東雲様は天使と戦って一度命を失ったというのに……その大狸はまだ生きておると思うのですかな?」

「くくくくく……それはな、あやつは何故かからだ。妾もやつを一度本気で殺そうとしたが……叶わなかった。」

 やれやれと呆れたように東雲は言った。

「不死身……ということですじゃ!?」

「まぁ、そう捉えて間違いない。やつは尻尾さえ残っていれば何度でも再生するからな。」

 そう言ってのけた東雲に一同は思わず唖然としてしまう。

「それに魔法の使い方も飛び抜けている。まぁ妾ほどではないがな。」

 唖然とする一同のなか、東雲は一人くつくつと楽しげに笑う。

「妾が生きておる……とあやつが知ったらどんな顔をするのか今から楽しみだ。なにせ、あやつの弱点を知っておるのは妾一人……って、あっ…………。」

 楽しげに笑っていた東雲だったが、ついさっきペラペラと話していたあの事について思い出してしまった。

「…………さっきの話は聞かなかったことにしてくれ。」

「無理だな。」

「無理ですじゃ。」

「なんとな!?」

 無理だと即答した二人に東雲は思わず耳と尻尾をピンと立ててしまう。そしてわなわなと体を震わせながら言った

「ぐぬぬぬ、ま、まぁ良い。後々知っておかねばならんことじゃったからな。だが、絶対に大狸のやつと出会ったときに尻尾に触るでないぞ!?良いな!?」

「ん~……でも、ボク東雲さんの肉球さわらせてもらってないし、もしかしたら触っちゃうかも?」

「お前っ……る、ルアまでそんなことを申すか!?ぐぬぬぬぬ……こうなれば仕方がない。」

 ピョンと東雲は軽く跳ねると、すぐに先程までと同じ狐の姿に化けた。そして、てしてしと可愛らしい足音を立てながらルアの方に近付くと自分の前足を差し出した。

「ほれ!!褒美じゃっ!!」

「えっ……いいのっ!?」

「あの狸に機嫌を損ねられたら面倒だからな。ほれ、早うせい。」

 ルアは恐る恐る、東雲の前足を手に取ると、その裏側にある肉球をふにふにと触り始めた。

「ふわぁ~……ぷにぷにしてて気持ちいい。」

 触り心地の良いそれに上機嫌になるルアだったが、一方で東雲は少し息を荒くして、顔も少し赤くしていた。

「ふっ…………くぅっ……。そ、そんなに揉むように触るで……ないっ。」

 東雲の責め苦は数十分に渡って続いたとか…………。

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