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第一章 転生そして成長

第26話 クラーケン娘のセコい商い!?

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 人魚の砂浜からシーレーヌの町へと戻ったルア達は、早速町を観光しながら買い物をすることにした。

「この町はの、海が近いこともあって海産物が豊富に採れるのじゃ。」

「ボクらが住んでる町って近くに海がないから、なかなか生のお魚とか売ってないもんね。」

 ルア達が住んでいる町の付近には海がない。そして、海からかなりの距離が離れていると言うこともあり、なかなか生の魚が店に並ぶことはなかった。

「うむ、せっかく海街に来たのじゃ。新鮮な魚をいくつか買って、今晩の夕食にしよう。」

「賛成っ!!」

 そして二人は魚を購入するために市場へと向かう。

 シーレーヌの市場はとても大きく、人通りも多い。人魚に続く町の名物であることから、観光客や地元客が多く訪れるのだ。

 人混みに揉まれながらも、ルア達はなんとか魚屋の前にたどり着く。

「おぉっ!流石は名物市場じゃな。色んな魚が並んでおるわ。さてさて……どれが良いかの~。」

 由良が店前に並べられた沢山の魚を品定めしている最中、ルアもまたじっと魚とにらめっこをしていた。

「う~ん……。」

 そんな彼の姿を見て、可愛らしくなったのか店の店員のクラーケン娘が声をかけてきた。

「あらあら、お母さんとお買い物?」

「あ、は、はいっ。」

「うふふっ、偉いのね~。お魚さんとにらめっこしてたみたいだけど~……違いわかるかしら?」

 そう優しく話しかけてきたクラーケン娘にルアはおずおずとしながら小声で言った。

「あ、あの……今朝とれたお魚って無いんですか?」

「…………!!」

 まるで核心を突かれたかのように、クラーケン娘のうねうねと動く触手が、体が固まった。

「どうしてそう思うのかしら?お姉さんに教えてもらってもいい?」

「うん、この魚とか一見綺麗に見えるけど……エラの内側がねばついてるし、こっちの魚は鱗が剥がれちゃってる。あと……そっちは…………。」

 ルアは問題点を次々と指摘していく。的確なルアの指摘にクラーケン娘は呆気にとられてしまっている。

 そしてクラーケン娘は彼の目は騙せないと観念すると、店の奥から沢山の新鮮な魚が詰め合わせになった箱を持ってきた。

「若いのに凄いわね~。お姉さんの負けよ、お詫びにこれ持ってって?」

「ふぇっ!?い、いいの?」

「いいのよ~。これは店前のフェイクを見抜いた人達みんなにあげてるの。」

 パチッ☆っとルアに向かってクラーケン娘はウインクする。

「あと、この事は内緒よ?うふふふ♪また来てねっ?」

「あ、ありがとうございました……。」

 そしてルアは、その箱を持って由良のもとへと戻る。すると、由良は未だに魚とにらめっこを繰り広げていた。

「うむむむ……こっちのが良いか?いや、それともこっちか?」

 由良はすっかりクラーケン娘が並べているフェイクに騙されてしまっているようだ。
 ルアがチラリと後ろを振り返ると、苦笑いを浮かべながらクラーケン娘がこちらを見ていた。

(あ~……お母さんすっかり騙されちゃってる。)

 少し気まずい気持ちになりながらも、ルアは由良に話しかけた。

「あ、お母さん?」

「む?ルアか……そうじゃ!!ルアや、この魚とこの魚、どっちが良いと思う?わしはこっちのが良いと思うのじゃが……。」

「あ、あはは……そ、その悪いんだけど、もうお魚買っちゃった。」

「なんとな!?魚はちゃんと選ばねばならんのじゃぞ?」

「大丈夫ですよ~。新鮮なお魚を私がしっかり選ばせてもらいましたから。」

 困っていたルアにクラーケン娘が助け船を出した。彼女の言葉に由良は納得し頷いた。

「む、ならば問題はなさそうじゃな。餅は餅屋に、魚は魚屋にじゃ。さてどれ、ルアや重かろう?その箱はわしが預かろう。」

「あ、大丈夫だよ?……あっ!!」

 ルアが持っていた箱をひょいと片手で由良が持ち上げると、彼女は肩から提げていたバッグに箱を近づける。すると、明らかにバッグよりも大きな箱が吸い込まれるようにして、小さなバッグの中へと入ってしまった。

「えぇっ!?そのバッグどうなってるの?」

「むっふっふ、わしの特別製じゃ。さぁ、これで身軽になったじゃろう。次の店に行くのじゃ~!!」

 手荷物がなくなり、身軽になったルアの手を引いて由良は次の店へと向かう。

 そんな二人の後ろ姿を見送ったクラーケン娘は、二人がいなくなった後、軽くため息を吐いた。

「ふぅ……いったいどうなってるのかしら、あの親子。これからは要注意しなくちゃいけないわね~。」

「店員さ~ん!!この魚くださ~い!!」

「あ!!は~いありがとうございま~す。」

 そしてクラーケン娘もいつも通りの商いへと戻る。

 この店ではルアと由良がブラックリストに登録されたとかなんとか……。そのお話はまた別の機会に……。
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