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第9章 新たな生活

第309話 予想外の追跡者

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 屋敷への帰り道の途中、ナナシがふと話しかけてきた。

「主、後をつけられているぞ?」

「わかってる。」

 このまま屋敷へとまっすぐに帰るつもりだったのだが、予定が狂った。

 尾行してきている輩に屋敷へとたどり着かせるわけにはいかない。少し回り道しようか。

 道なりに進めば屋敷へと通じる道をあえて曲がり、人気のない道へと誘い込む。滅多に行き先が重なることのないはずの道だが、やはり後ろをついてきていた人物はしっかりと尾行してきている。

「……確信犯だな。ナナシ、次の角曲がったら仕掛けるぞ。」

「承知した。」

 そして見えてきた十字路を左に曲がると同時に俺とナナシは移動魔法で反対側へと飛んだ。
 すると、思惑通り後ろをつけてきていた人物は俺達を追って左に曲がるが……。

「い、いない!?」

 突如消えた俺達を探し、辺りをキョロキョロと見渡している。その背後から俺は声をかけた。

「誰を探してるのかな?」

「うわっ!?え、な……なんで後ろに!?」

 後ろから声をかけられ、思わず驚いて尻餅をついたのは、なんと幼い少年だった。
 年齢的にまだ中学生ぐらいだろうか?

「なんだ、餓鬼か。何故我らの後ろをつけてきた?」

 ナナシは少年の前でしゃがむと、そう問いかける。しかし、少年は口を割ろうとはしない。

「ふむ、何か言えぬ理由があるか。主、どうする?」

「どうするって言ったってなぁ。…………ん?」

 チラリと少年へと目を向けたとき、妙な膨らみが腰から太ももへとかけてあったことに気がつく。

「……これはまさか。」

 ある予感が頭をよぎった俺はすぐにスッと手を伸ばし、少年の腰につけられていた包丁を奪い取った。

「あっ!!」

「包丁か。」

「主、こんなものもついているぞ?」

 ナナシはぐいっと少年の足を掴み、靴の裏側から何かを毟り取るとこちらに見せてきた。

「これはGPSか?」

「…………。」

 包丁とGPS両方を取り上げられた少年は黙り込む。

 包丁を持って襲いかかってきたというだけならば、少年が一人で動いた行動にも思えるが、GPSが靴の裏につけられていたとなれば、話はまた変わってくる。

「キミ、誰の命令で俺達をつけてた?」

「…………。」

「言えないか。」

 だが、今の質問に何も言わないってことは肯定してるってことだ。

 GPSがついてたってことは多分、場所が特定されたら……親玉が現れるはず。とてもじゃないが、こんな少年では包丁を持っていたとしても大人を相手にはできないだろうからな。

「さて、どうするか……。」

 悩んでいると、後ろからゲラゲラと喧しい笑い声と共に男たちが現れた。

「おっ、今回の獲物はこの美人ちゃんか~?雪くんもなかなかわかってきたじゃん?」

「お前ら、こんな子供にこんなものまで持たせて何させてんだ?」

 俺がそう問い掛けると、男はへらへらしながら答える。

「そんなの決まってんじゃん金持ちの家を特定してもらってんだよ。雪くん金に困ってるみたいだからさぁ、俺らが雇ってるってわけ。」

「ずいぶん喋るんだな。」

「しゃべっても何も問題ねぇし?だって……もう二度と姉ちゃん達は家に帰れねぇんだからな。」

 そう言うと、男たちが俺とナナシのことを取り囲む。

 すると、雪と呼ばれていた少年が男たちの一人に話しかけた。

「あの、お、お金は……。」

「あぁ?今回も失敗してっから無しっしょ。」

「な、なんで!!」

「だって家まで特定できてねぇじゃん?ほれほれ、邪魔だどいとけ。」

 縋り付いていた少年を男は乱暴に振りほどくと、力任せに押し倒してしまう。

「あぅっ……。」

 今にも泣きそうになってしまっている少年の姿を見てナナシの表情に怒りが浮かぶ。

「……クズめ、幼き童を誑かし、こんなくだらない悪事に手を染めされるとは。」

「ナナシ、どうする?」

 俺がそう問い掛けると、彼女は先ほど少年を突き飛ばした男へと歩み寄り思い切り股間を蹴り上げた。それと同時にブチッ……と何かがつぶれたような音が辺りに響く。
 そして股間を思い切り蹴り上げられた男は口から泡を吹き、白目を剥きながら倒れ込んだ。

「この女ァっ!!」

 仲間が一人やられた男たちは次々とナナシへと襲いかかっていく。それが自分を破滅させる行動だとも理解せずに……。

「貴様らのようなクズには子を残す権利はない。短き一生を種無しでいきてゆけ。」

 ナナシへと襲いかかった男は容赦なく次々に男の象徴を潰され、最初の男と同じように泡を吹いて地面に倒れ伏していった。

「この……化け物め!!」

「ん?」

 次々に仲間がやられていくのをみて、一人が何やら拳銃らしきものを取り出してナナシに構えた。

「くたば…………。」

「やらせるわけないだろ。」

 構えていた男の手首へと手刀を振り下ろすと、アッサリと拳銃を手放した。足元に転がったそれを粉々に踏み潰すと、俺は男の顔面に拳をめり込ませ意識を刈り取る。

 その最中にナナシは他の男たちを男として終了させていた。

「最後はそやつだ。」

 そして俺が気絶させた男へと歩み寄ると、また容赦なくアレを踏み潰していた。

「くだらん。」

 男たちを片付けたナナシはチラリと怯える少年に視線を向けると彼に向かって歩み寄るのだった。
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