1 / 1
赤ちゃん
しおりを挟む
すると、素子の顔が一層赤く染まる。ピアノ教室では優しくて頼りになる先生も、家に帰ればおむつだけを身に着けて、大人の言葉は一切使わない。もちろん秘所の毛も必要ない。
「おっきいんだね~」
佐知は手元で大人用の紙おむつを開く。子供用のおむつは小さくてかわいいが、大人用ともなると大きさの方に目が行く。一度おむつを置いてあるカラーボックスの方へ行って、パッケージの説明を見ながらおむつの当て方を確認した。慣れない手つきでパッドを重ねておむつのセッティングをする。初めての佐知のために、素子は自分でお尻をくっと上げてサポートした。
「もとちゃんね、じゃあおむつするよ。さっきみたいにおもらししたらこまるもんね」
1時間ほど前の痴態を思い出してまた素子は顔を赤らめる。何か言い返そうとしたが、心まで幼児に退行した素子には、まともな言葉が出てこなかった。
「いあうもん!」
違うもん!と言ったつもりだったが、舌足らずの幼児のような言葉になる。
「もとちゃん、いいんだよ。あかちゃんはおむつよごすのもしごとなんだよ~」
ふたたび佐知が素子の頭をなでると、ふっと眠気が来るのを感じた。佐知はすっと立ち上がると、部屋のピアノの前に立ち、アナログのメトロノームにそっと触れた。カチッカチッと小気味良い音を立てて時間を刻みだした。佐知は素子のところへ戻り、メトロノームの音に合わせて、おなかをトントンと軽く叩き出した。何十年も聞きなれたメトロノームの音は、素子にとってのお母さんの心臓の音のようだった。
「もとちゃん… もとちゃん…」
佐知が歌うように素子の名前を呼んだが、素子の意識はすでに深い眠りの中に陥っていた。
翌朝目を覚ますと、すでに佐知は起きていた。
「朝になっても、先輩じゃなくてもとちゃんでいいよね?」
「うん!」
素子は昨日とは打って変わって、素直な表情で頷く。
「もとちゃん、ちーでたかなぁ?」
昨日なら赤面して俯いていただろう。
「もとちゃんね、ちーでたの!」
素子はニコニコと笑って昨日当ててもらったおむつを指さす。
「もとちゃん、ちーいえたね!えらいね~」
佐知は何度も素子をぎゅっと抱きしめて、長い髪を梳かすようにして頭を撫でた。
「きょうからずーっと、わたしがもとちゃんのねえねでいい?」
6年生のあの日、お母さんは「今日だけね」と言った。その言葉の通り、あれからおむつを履かせてもらうことも、トントンしてもらうことも一度もなかった。佐知は、「きょうからずーっと…」たしかにそう言った。
「うん!これからずーっと!」
りを吸う素子の横に座った。ベッドの横にはカラーボックスが並んでおり、そこに置かれた紙おむつのパッケージからテープタイプのおむつを一枚引き抜いた。同時にその横のパッドをとっておいた。
脱衣所で見繕ったハーフパンツとパンツは佐知の手でさっさと脱がされてしまった。
「もとちゃん、ここもきちんとあかちゃんなんだね!えらいね~」
「おっきいんだね~」
佐知は手元で大人用の紙おむつを開く。子供用のおむつは小さくてかわいいが、大人用ともなると大きさの方に目が行く。一度おむつを置いてあるカラーボックスの方へ行って、パッケージの説明を見ながらおむつの当て方を確認した。慣れない手つきでパッドを重ねておむつのセッティングをする。初めての佐知のために、素子は自分でお尻をくっと上げてサポートした。
「もとちゃんね、じゃあおむつするよ。さっきみたいにおもらししたらこまるもんね」
1時間ほど前の痴態を思い出してまた素子は顔を赤らめる。何か言い返そうとしたが、心まで幼児に退行した素子には、まともな言葉が出てこなかった。
「いあうもん!」
違うもん!と言ったつもりだったが、舌足らずの幼児のような言葉になる。
「もとちゃん、いいんだよ。あかちゃんはおむつよごすのもしごとなんだよ~」
ふたたび佐知が素子の頭をなでると、ふっと眠気が来るのを感じた。佐知はすっと立ち上がると、部屋のピアノの前に立ち、アナログのメトロノームにそっと触れた。カチッカチッと小気味良い音を立てて時間を刻みだした。佐知は素子のところへ戻り、メトロノームの音に合わせて、おなかをトントンと軽く叩き出した。何十年も聞きなれたメトロノームの音は、素子にとってのお母さんの心臓の音のようだった。
「もとちゃん… もとちゃん…」
佐知が歌うように素子の名前を呼んだが、素子の意識はすでに深い眠りの中に陥っていた。
翌朝目を覚ますと、すでに佐知は起きていた。
「朝になっても、先輩じゃなくてもとちゃんでいいよね?」
「うん!」
素子は昨日とは打って変わって、素直な表情で頷く。
「もとちゃん、ちーでたかなぁ?」
昨日なら赤面して俯いていただろう。
「もとちゃんね、ちーでたの!」
素子はニコニコと笑って昨日当ててもらったおむつを指さす。
「もとちゃん、ちーいえたね!えらいね~」
佐知は何度も素子をぎゅっと抱きしめて、長い髪を梳かすようにして頭を撫でた。
「きょうからずーっと、わたしがもとちゃんのねえねでいい?」
6年生のあの日、お母さんは「今日だけね」と言った。その言葉の通り、あれからおむつを履かせてもらうことも、トントンしてもらうことも一度もなかった。佐知は、「きょうからずーっと…」たしかにそう言った。
「うん!これからずーっと!」
りを吸う素子の横に座った。ベッドの横にはカラーボックスが並んでおり、そこに置かれた紙おむつのパッケージからテープタイプのおむつを一枚引き抜いた。同時にその横のパッドをとっておいた。
脱衣所で見繕ったハーフパンツとパンツは佐知の手でさっさと脱がされてしまった。
「もとちゃん、ここもきちんとあかちゃんなんだね!えらいね~」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる