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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)
第3-7節:もうひとつのお願い
しおりを挟むその後、わずかに間を置いて気持ちを切り替えてから、ノエル様に問いかける。
「では、ノエル様。あなたが私のことを『シャロン姉さん』と呼ぶのなら、私もあなたのことを『ノエルくん』と呼んでもよろしいですか? それなら申し出をお受けします」
「は、はいっ! もちろんです、シャロン姉さん!」
「ふふっ、ありがとう。ノエルくん、これからもよろしくね」
「こちらこそっ!」
ノエルくんは太陽のように明るい笑顔を見せ、私の手を握って何度も上下に振っていた。
ちなみに横目でチラリとリカルドの様子を窺ってみると、彼は唇を噛んで妬ましげにノエルくんを睨み付けている。でも握手やハグくらいなら挨拶みたいなものだから問題ないよね?
……安心して、リカルド。照れくさくて口には絶対に出せないけど、それ以上の接触を許すのはあなただけだよ。だからそんなに頬を膨らませないで。
あなたが望むなら、私は……。
「シャロン姉さん? ボーッとしちゃってどうしたんですか?」
「へっ? あっ! え、えっとっ、な、なんでもないよっ! 気にしないでっ! あははははっ! そ、それよりもお義姉様のことはシーファ姉様なのに、私は姉さんなんだね?」
「俺にとっての『姉様』はシーファ姉様だけですから。それにシャロン姉さんは身近な印象があって、『姉さん』って呼び方の方が合っている気がしますし」
「あっ、なるほど……。うんっ、私もなんとなくその気持ちが分かる気がする。お義姉様は女神様のように尊いというか、崇敬の対象って感じだもんね」
お義姉様は見目麗しくて、魂のレベルだっていくつも上で、手の届かない高貴な存在という印象がある。しかも知的で演奏の腕も一流だなんて、本当に憧れてしまう。
私なんかと比べたら月とスッポン。もちろん、月がお義姉様で私はスッポンだ。
「そうだ、シャロン姉さんにもうひとつお願いがあるのですが」
「ふふっ、ノエルくんは本当に甘えん坊さんだねっ? ん、いいよ、言ってみて」
「シャロン姉さんは水路の掘削工事が始まって以来、その現場へ視察に出かけているとか。俺もフィルザード滞在中に同行して、見学させてもらえないでしょうか?」
「視察への同行か……。うーん、警備などの問題もあるから私の一存じゃ決められないな……」
「その辺はキールたちと話し合って調整します。その結果、難しいようなら諦めますが。まずはシャロン姉さんの同意を得たいのです」
確かに周りのみんなが視察を許可したとしても、そもそも私が拒絶したらどうにもならない。それで最初にお伺いを立てたということか……。
もちろん、一緒に視察するというのは個人的には大歓迎。百聞は一見にしかずとも言うし、実際に領民たちの働く場を見ることは、いずれ領主となる彼にとって得るものが大きいと思う。
事実、すでに領主の立場にあるリカルドは私と同意見のようで、こちらの考えていることを悟って同調してくる。
「いいんじゃないか、シャロン? 僕もノエルとともにみんなを説得しよう。視察はノエルの今後にとって、良い勉強になるだろうからな。なによりコイツが公務に本気で興味を持ったというのが素晴らしい」
「ノエルくんやリカルドが良いと言うなら、私は問題ないよ」
「よし、決まりだ。明日の朝にでもジョセフやキールに相談することとしよう。ただし、あらためてノエルに釘を刺しておくが、シャロンとベタベタするのは許さんからな?」
「わ、分かってますよ、リカルド兄様……」
こうしてノエルくんの視察に関する相談が終わり、その後の私たちはお茶を楽しみながら世間話に花を咲かせたのだった。
(つづく……)
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