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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)
第3-6節:ノエルからのお願い
しおりを挟むそうした様子から察するに、一時的にギクシャクしていたふたりの関係はすっかり修復して、仲の良い兄弟に戻っているみたい。それには私としても安堵して、ホッと胸を撫で下ろす。
「でも、ノエル様にも私とリカルドの仲を認めていただけて嬉しいです。――ところでノエル様、私に話とは何でしょうか? そのためにここへいらっしゃったんですよね?」
「あ……えっと……その……」
「ほら、ノエル。さっさと言ってしまえ」
躊躇して口ごもっているノエル様の背中をリカルドは力強く叩いた。
ただ、それでもなお踏ん切りがつかない様子のノエル様は、俯いてモジモジしたりキョロキョロと視線を動かしたりするばかりでなかなか言葉を発しない。
もちろん、私としては彼の心の整理が付くまで静かに見守ることにする。
やがて彼は意を決したように目を見開いたかと思うと、すかさず私に向かって深々と頭を下げてくる。
「シャロン殿! 今までの数々の無礼、お許しください!」
「……あぁ、そのことでしたか。もうお気になさらないでください」
「俺っ、きちんとお詫びをしたくて! このまま有耶無耶にしたら、シーファ姉様にも叱られてしまいそうですし!」
「律儀なんですね、ノエル様は。お義姉様に頭が上がらないところといい、リカルドとそっくりです。さすが弟分というだけありますね」
「恐縮です!」
すっかり平身低頭しているノエル様を見て、私は彼に心の成長を感じた。自分のしたことをきちんと反省して、素直に謝れている。そんな今のノエル様はちょっと格好良い。
本当に男子はちょっと見ない間に大きく成長するものだと思う。そのスピードには目を見張るものがある。素敵な紳士への階段を確実に上っているのだと感じる。
だからこそ私も自身の言行を顧みなければならない。謙虚な気持ちになって彼に深く頭を下げる。
「私もあの時、もう少し配慮できていればと反省しています。ごめんなさい」
「いえっ、シャロン殿は悪くないです! 悪いのは本当に俺なんです!」
「それではお互いに悪かったということで手を打って、あのことはおしまいにしましょう」
「はいっ! それでシャロン殿にお願いがあるのです。……あのっ、シャロン殿のことを『シャロン姉さん』とお呼びしてもよろしいでしょうか? それと俺にもリカルド兄様と同じように、私的な場では砕けた話し方をお願いします!」
「っ!? き、急にどうしたのですか?」
ノエル様からの思いも寄らない申し出に、私は目を丸くした。だって『姉さん』だなんて……。
彼は頬を真っ赤に染め、期待と不安の入り混じったような面持ちで私の返事を待っている。まるで一世一代の愛の告白でもしたかのような印象。もちろん、そこに恋愛感情はないんだろうけど。
ただ、私を慕う気持ちは確かにあるのだと思う。そして打ち解けたことは嬉しいけど、私としては戸惑いが全くないというわけでもない。数時間前まではツンツンして、私を拒絶していたんだから。
そんな感じで私が色々と考えを巡らせていると、不意にリカルドがクスッと笑う。
「シャロン、ノエルはキミに甘えたいのだ。呼び方や話し方くらいなら許してやれ。ただし、ベタベタするのは厳禁だ! それをしていいのは僕だけなのだからな」
「……リカルド、もしかして独占欲が強い?」
「っ!? そ、そんなことはないだろう。もしそうであれば、絶対に男をキミに近付けんはずだ。ノエルもジョセフもナイルもモーリスもな。あるいは女性であってもポプラくらいに親密度の高い者なら遠ざけるかもしれん」
「どうかな? だってリカルド、ちょっとムキになって否定してるし」
「き、気のせいだ! あまり僕をからかうな」
リカルドは頬を真っ赤に染め、外方を向いてしまった。そんな純真無垢な反応がなんだか可愛らしい。思わず私はほくそ笑んでしまう。
(つづく……)
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