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 びっくりしたぁ~、男の人に抱き付かれてたよ瑤ちゃん。
 なんかむちゃくちゃ衝撃的で、ドラマか映画のシーンのようだった。

 所謂イケてる人たちの絡みっていうの?

 ドギマギしちゃって、無花果をいきなり渡すだけ渡して急ぎ足で帰ってきたものの、びっくりしてドキドキした後に今度は瑤ちゃんのこと遠くに感じて
不安になって、次に襲ってきたのは悲しみだった。

 泣いてたら家の前に来てるよって瑤ちゃんからのLINEが届いた。
 さっきの説明がしたいって。


 聞きたいけど、聞きたくないような。
 聞きたくないのに聞きたいような。

 私の胸の内ではげしい葛藤が繰り広げられた。

 すぐに話をしに来てくれた瑤ちゃんに会わないわけにはいかないし、
話を聞かないわけにはいかず、私は玄関のドアを開けた。

 家の前の道路に路駐して比奈ちゃんと立ってる姿が見えた。

 私の姿を捉えた比奈ちゃんがスマホ画面を覗き込んでた瑤ちゃんに
教えてくれたみたいで瑤ちゃんも私のことを確認すると二人でこちらに
やって来た。


「瑤ちゃんわざわざ来てくれたんだね。
ごめんね、ちょっとびっくりしちゃって声も掛けずに帰っちゃって。
散らかってるけどどうぞ、比奈ちゃんもいらっしゃい」

「苺佳ちゃん、無花果ありがとー」

「たくさん食べてね。
眞奈はおばあちゃん家行ってていないんだけど、絵本やブロックで
遊んでていいからね」

「はーい」

「瑤ちゃん、コーヒー淹れるね」

「あぁ苺佳ありがと。だけどすぐに帰るから気使わないで。
話もすぐに済むし。座って・・。
まずはわざわざ無花果重いのに持ってきてくれてありがと。
うれしいよ、比奈も私も好きだからね」


「喜んでもらえて、よかった」


「苺佳、さっきのおぞましいシーン見たくなかっただろうけど見たよな?」

「うん、見ちゃったね」


「あれ、忘れて」

「どうかな?」


「アイツはね、医学生だった頃に少しの間付き合ってた相手で、浮気者で
裏切り者なんだ。ある日いきなり私との付き合いを止めると言ってきたんだ。

その時にはもうすでに少し前から二股してたみたいで、別の女と付き合うから
私との付き合いは止めるって一方的に宣言してきた酷いヤツなんだよ。

 その時の彼女に振られたんじゃないのかな、急によりを戻したいと
言ってきて。

 今日家に来たのも不意打ちで、抱き付いてきたのも不意打ちだったんだ。

 私の意志は微塵も入ってないから。これだけは苺佳に話しておきたかった」


「瑤ちゃん、今日見たの忘れることにする」


「そっか、ならよかった。じゃあ、帰るよ」

「うん、気をつけてね」

          ◇ ◇ ◇ ◇

 私にわざわざ会いに来てくれた瑤ちゃんは比奈ちゃんと一緒に
帰って行った。

 今日はとても疲れた。
 感情の振れ幅が半端なかったせいよね。

 忙しいのに瑤ちゃんは直接会いに来て説明してくれた。

 なんとなくだけど、私は大切にされてるんだなぁと感じて幸せって思えた。

 ありがと、瑤ちゃん。

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