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Encore*玉手箱はお受けいたしかねま…す?
玉手箱はお受けいたしかねま…す?[1]ー⑤
しおりを挟む料理を待つ間、ビールをちびちびと飲みながらスマホを眺めていた。
そこには、出会ったばかりの女の子がこちらに向かって可愛らしい笑顔をくれている。
「仕事の疲れもいっぺんに吹き飛ぶわぁ……」
いつ見ても本当に癒される。これなら料理が無くても、ビール何杯でもいけちゃう!
勇気を出してお願いして本当に良かった。
こんな可愛い子が義妹になる日が来るなんて、ドラネコも拾ってみるもんだな。
玉手箱はノーセンキュウだけど、竜宮城バンザイだ。
なんて我ながら現金なことを考えながら、同じ時に撮った写真を指でスライドさせていく。
美寧ちゃん単体が五枚、美寧ちゃん藤波さん夫婦のツーショットが二枚、そして――
(兄妹ツーショット!――尊いっ…!)
兄弟が寄り添っている写真が出てきた。アキったら、美寧ちゃんの肩を抱いて嬉しそう。美寧ちゃんもはにかんだ笑顔を浮かべている。
二人ともくっきりとした二重の大きな瞳だけど、美寧ちゃんの方が目尻が上向いている分、アキよりも“子猫”っぽい。子どもの時に飼っていたふわふわの白猫を思い出した。ネコネコ兄妹、サイコーか!
「は~、ほんと、尊いわぁ……」
「尊いって何が?」
「ひゃっ!」
耳のすぐそばで囁かれた声に、思いっきり肩が跳ねた。勢いよく振り向くと、そこには――。
「アキっ!」
「お疲れ、静さん」
「え、なんで、いつの間に…!?」
「さっき普通にそこから入ってきたんだけど」
そう言われてみれば、後ろで引き戸の音と大将の「いらっしゃいませ」を聞いた気がしなくもない。
「でも明日まで本社だって……」
「の予定だったんだけど、最速で済ませてきた――早くあなたに会いたくて」
最後のところだけそっと小さく囁いた彼の唇が、わたしの耳の端をかすめた。
「っ、――こ、こ、ここっ、」
ここ、外なんですけど…!
わたしが口をハクハクと空振りさせているのを見てにこにこしながら「可愛いニワトリだね」と楽しそうに言い、隣に腰を下ろした。それからネクタイの結び目をゆるめ、きっちりと後ろに流されている髪に手を入れクシャリとかき混ぜながら「ふぅ」と息をつく。
言いたいことは色々あるけれど、疲れて帰って来た彼を労うのが先決。
わたしはアキに「お疲れ様」と言ってから、わたしは片手を上げカウンターの向こうに声をかけた。
「大将、彼にジンジャーエールを、」
「生、お願いします」
――はい?
被せるように聞こえた言葉に勢いよく隣を見る。
よほどわたしの顔が怪訝なものだったのか、アキは苦笑いをしながら「そろそろ挑戦してみようかと思って」と言う。
「……手伝わないわよ、さすがに」
じろりと目だけでアキを見上げると、「今はその顔やめておいて」と意味の分からない返事。
なに?そんなに変な顔だった?
他人様にお見せしてはいけないものだったかも――とうつむくと、「あんまり可愛いと我慢できなくなるだろ」とむくれたように言う。
「なっ…! だっ…、こっ、」
だからっ! ここ、そとっ! 外ですよーー!
今度こそビシッと注意しようと思った矢先、大将が「はいよっ、生おまちっ!」とカウンターに生ビールを置いた。
「お疲れ様、静さん」
「……お疲れ」
アキが持ち上げたジョッキに、わたしは自分のものを軽く合わせる。
ビールに口をつけるアキを、思わずじぃっと見つめてしまう。眉ひとつ動かさずに飲んでいるのを見てホッとしたところで、わたしもやっとビールをグっと呷った。
「――で、なにが尊いの?」
ジョッキから口を離したアキが訊いてきた。わたしが「これ」と言って手元のスマホを向けると、「おっ!」と言ったアキの顔が一気にほころぶ。
「美寧だ」
「うん。なんでこんなに可愛いのかなって。ほんと見てるだけで癒される」
「だよな」
謙遜も否定もいっさいする気がない『お兄さま』の顔をしたアキに、思わず「ふふっ」と笑ってしまう。
でもその気持ちよく分かる。だって本当に可愛いんだもの。
「もちろん美寧ちゃんも可愛いのだけど、この兄妹ツーショットはお宝ものだなぁって」
自分の方に戻したスマホを見ながらうっとりとしてると、アキが「それを言うならこっちの方がお宝ものだろ」と自分のスマホを出して見せた。
「なっ、それっ…!」
「僕の宝物たち」
あろうことか、そこにはわたしと美寧ちゃんのツーショットが!
「ちょっ……いつの間に………」
「怜さんも写真を撮っていただろ? よく撮れているからって、僕に送ってくれたんだ」
怜さん……そんな義兄サービス要りませんよっ!
「だからって壁紙にしなくても……もし誰かに見られたら……」
「大丈夫。これはプライベートの方だから。見られることがあったとしても高柳さんくらいだ」
それもどうよ……。あの鉄仮面統括がこれを見て何かコメントするところなんて、全く想像できないわ……。
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