あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか

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Encore*玉手箱はお受けいたしかねま…す?

玉手箱はお受けいたしかねま…す?[1]ー④

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「静さん、こちらが藤波(ふじなみ)怜さんと妹の美寧だ。―――怜さん、美寧、こちらが僕の婚約者の、静川吉野さんです」
「初めまして、静川です。この度は、ご家族の団らんに突然お邪魔してしまい、大変申し訳ありません」

お腹の前で両手を重ね、三十度に腰を折って頭を下げる。すると、「私たちに謝られることではありませんよ。顔を上げてください」と優しげな男性の声が言う。顔を上げると「藤波です。以後よろしくお願いいたします」と微笑まれた。

ふぉっ、眼福…!

クールなイケメンの優しげな微笑み。そのギャップに、イケメンに興味のないわたしでもうっかり見惚れそうになる。これは森が見たら大騒ぎ案件間違いなし、だわね。

―――なんて考えはおくびにも出さず、負けずににっこりと微笑んでから「ありがとうございます。よろしくお願いします」と返した。

「あの……静川さんは吉野さんとおっしゃるのですか?」

藤波さんの隣からおずおずと可愛らしい声が聞こえて、顔を向けると美少女――もとい、美寧さんがわたしを見ていた。

長いまつげに縁取られた大きな瞳。
パッチリとしているそれは、目尻がほんの少しだけ上がっていて、アキとは逆だなぁ、お母さま似なのかしら――なんて考えていたら、返事に一瞬変な間が空いた。
そのせいなのか、彼女は急に焦ったような顔になる。

「あっごめんなさいっ…! わたしったらちゃんとご挨拶もしないで……。初めまして、当麻…じゃなかった、ふ…藤波、美寧です」

言いながら美寧さんの白い頬が、みるみる桃色に染まっていく。

「ごめんなさい……あの、まだ新しい苗字に慣れていなくて……」

ああ、そうか。結婚したばかりだったわよね。
初々しいさに、つい頬がゆるんでしまう。わたしは口を開いた。

「初めまして。聡臣さんにはいつもお世話になっております。静川吉野です」
「静川、吉野さん……」

確認するように呟いた彼女に、わたしは反射的に身構えた。

『苗字みたい』
『変わってる』
『珍しい』

大抵の人がそう口にするか、そう思ったのを誤魔化すように気まずい顔をする。

慣れているから今さら傷ついたりはしないけれど、だからといって無防備にそれを受け止められるほど強くもない。

そんなわたしを、彼女は輝くような笑顔で見た。

「桜と同じお名前なんですね! すごく素敵ですっ!」
「え、……あ、ありがとう……」
「もし差し支えなければ、『吉野ねえさま』――とお呼びしても構いませんか?」
「えっ!?」
「ダメ…ですよね、やっぱり……初対面なのにすみません……でもお兄さまの特別な方にお会いしたのって初めてで……ちょっと舞い上がってしまって……」

“あざとさ”の欠片も見当たらない上目遣いのあと、申し訳なさそうにそう言った美寧さん。

近くで見ると、ふわふわの長い髪もアキと同じ、色素の薄い茶色。
年齢よりもずいぶん若く見えるところや、小さな顔、白磁の肌もそっくり。
目元以外は本当によく似た兄妹なのだなぁと、つい観察してしまう。

最後に「ごめんなさい」と言った彼女が、しょんぼりと耳――じゃなかった眉を下げるところも、アキとよく似ていて。

くぅ~~っ、可愛すぎるっ! そんな顔されたら何でも許しちゃうってば…!

そう思ったら、自然と手が動いていた。

「ありがとう。是非そう呼んでもらえると嬉しいな。わたしも『美寧ちゃん』と呼んでもいい?」

彼女の頭を右手で「ヨシヨシ」と撫でると、大きな瞳がさらに大きく見開かれる。

(あ、しまった。馴れ馴れしかったかな)と慌てて手を引っ込めようとしたとき、彼女の顔がパーッと輝くほど明るくなった。

「はいっ! お願いします、吉野姉さま!」

満開の桜のような笑顔の美寧ちゃんにつられて、わたしも笑顔になった。



――――――――――
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