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Epilogue*王子様の愛はお受けいたしかねます。
王子様の愛はお受けいたしかねます。③
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「ちょっ……笑うことないじゃない」
そんなに変なことを言っちゃったかな……?
どうやらツボにハマったアキは、いつまでも笑い続ける。
キュッと目をつむって口の端を持ち上げて笑う顔が、ベビーフェイスの彼にとても合っている。すごく可愛い。いつまでも眺めていられそう。
頬を染めたままぼうっと見惚れていると、額に「ちゅっ」と音を立てる短いキスが降ってきた。
「堪んないね、あなたってひとは……」
「……すみませんね、変なアラサー女で」
今さらながら大胆すぎる発言だったと恥ずかしくなって、不貞腐れたふりをしてプイっと顔を背ける。すると、膨れた頬に柔らかな感触と軽やかな音。
「可愛くて美味しくてカッコ良くて温かくて……僕の伴侶は最高の女性だってこと」
なにそれ、褒めすぎ。
「あなたと一緒なら、スイーツは無くてもいいな」
「え……、わたしはアキもビールもどっちも要るけど」
素で返すと、アキがまた「くくくくっ」と心底楽しげに笑う。
綺麗な顔をクシャリと潰して笑う顔は可愛いけれど、こっちは居た堪れない。「ちょっと!」と言いながらこぶしを振り上げて殴る真似をしようとしたら、手を取られてぎゅっと握りしめられた。
「それでこそ僕の吉野。未来のTohmaCEO夫人だ」
CEO夫人って…!
そりゃそうか。アキはTohmaの後継者。いずれ彼がCEOになる。
アキのプロポーズを受けるということは、その彼の妻になるということだ。
何も考えずに返事をしたけれど、さすがにちょっと不安になった。私に務まるのだろうか。
「大丈夫、僕がいる。だけど吉野ならきっとどこに居て何をしても、そのままで十分素晴らしい奥さんになる。どんな時だってあなたはあなたらしく、僕のそばに居てくれるだけでいいんだ」
「そばに居るだけ……? べったり?」
それはちょっと無理じゃないかな……お互い仕事もあるし、自分の時間だって欲しいよね?
難しい顔になったわたしを見て、アキがまた小さく笑いを噛み殺す。
「四六時中そうしたいところではあるけど、正確にはこっち」
そう言ってわたしの膨らみをシーツの上から軽くノックした。
「心がそばにあれば、物理的な距離は関係ない。あなたの心の中の大事な場所に、いつも僕を置いてくれる?」
「心の中の大事な場所に……。それってアキも? わたしのこと、そこに置いてくれるの?」
「ああ。僕の中の一番大事な場所は、とっくにあなたのものだ……これからもずっと」
溶けかけのチョコレートみたいな瞳で微笑まれて、胸がキュンと甘く鳴く。
“大好きな人の大事な場所を、永遠に自分が占拠する”
なんて甘やかで、なんて素敵なことなんだろう。
年を取っておじいちゃんおばあちゃんになっても、お互いのことをそんなふうに想い合えたら最高に幸せ。
わたしがぽうっと呆けたようになっていると、アキは握っていたわたしの手の甲にそっと唇を押し当て、そのまま視線だけこちらに寄越した。
目尻に向けて下がる甘い瞳が、真っ直ぐにわたしを射抜く。
「僕の愛は重いよ? でもあなたにはそれを受け止めて欲しい。永遠に注ぎ尽くすことを誓うから」
せつなげに細められた瞳が、『あなたが欲しい』と語っている。
そんなふうに好きな人に甘く乞われて、『ダメ』と言える女の子がいるのだろうか。少なくともわたしには無理。
林檎が樹から落ちるように頷きかける。けれどすんでのところで留まった。
――ちょっと待て。
これから何十年も一緒にいるってことは……最初が肝心じゃない?
“しつけ”……大事よね!?
「遠慮しとくわ。王子様のご寵愛なんて、わたしには荷が重すぎるもの」
これでもかというくらいの真顔でそう言うと、アキが「えっ」と両目を見張る。わたしは彼が何か言うより早く、言葉を繋げた。
「だけど拾ったドラネコのことは生涯愛することを誓うわ。言ったでしょ? 逃げたくなっても逃がさないって。女に二言はないの」
垂れ目を丸く見開いた顔が可愛くて、耐え切れず「ふふふっ」と笑う。目も口もすべてがゆるんでしまったから、もう真顔に戻せそうにない。
わたしは全開の笑顔のまま、固まっているアキに顔を寄せた。
「だから大人しく一生わたしのものになってね――ドラネコ御曹司くん」
大きく見開かれて行く甘く綺麗な垂れ目を見ながら、わたしは彼の唇に自分のものを重ねた。
【Fin.】
そんなに変なことを言っちゃったかな……?
どうやらツボにハマったアキは、いつまでも笑い続ける。
キュッと目をつむって口の端を持ち上げて笑う顔が、ベビーフェイスの彼にとても合っている。すごく可愛い。いつまでも眺めていられそう。
頬を染めたままぼうっと見惚れていると、額に「ちゅっ」と音を立てる短いキスが降ってきた。
「堪んないね、あなたってひとは……」
「……すみませんね、変なアラサー女で」
今さらながら大胆すぎる発言だったと恥ずかしくなって、不貞腐れたふりをしてプイっと顔を背ける。すると、膨れた頬に柔らかな感触と軽やかな音。
「可愛くて美味しくてカッコ良くて温かくて……僕の伴侶は最高の女性だってこと」
なにそれ、褒めすぎ。
「あなたと一緒なら、スイーツは無くてもいいな」
「え……、わたしはアキもビールもどっちも要るけど」
素で返すと、アキがまた「くくくくっ」と心底楽しげに笑う。
綺麗な顔をクシャリと潰して笑う顔は可愛いけれど、こっちは居た堪れない。「ちょっと!」と言いながらこぶしを振り上げて殴る真似をしようとしたら、手を取られてぎゅっと握りしめられた。
「それでこそ僕の吉野。未来のTohmaCEO夫人だ」
CEO夫人って…!
そりゃそうか。アキはTohmaの後継者。いずれ彼がCEOになる。
アキのプロポーズを受けるということは、その彼の妻になるということだ。
何も考えずに返事をしたけれど、さすがにちょっと不安になった。私に務まるのだろうか。
「大丈夫、僕がいる。だけど吉野ならきっとどこに居て何をしても、そのままで十分素晴らしい奥さんになる。どんな時だってあなたはあなたらしく、僕のそばに居てくれるだけでいいんだ」
「そばに居るだけ……? べったり?」
それはちょっと無理じゃないかな……お互い仕事もあるし、自分の時間だって欲しいよね?
難しい顔になったわたしを見て、アキがまた小さく笑いを噛み殺す。
「四六時中そうしたいところではあるけど、正確にはこっち」
そう言ってわたしの膨らみをシーツの上から軽くノックした。
「心がそばにあれば、物理的な距離は関係ない。あなたの心の中の大事な場所に、いつも僕を置いてくれる?」
「心の中の大事な場所に……。それってアキも? わたしのこと、そこに置いてくれるの?」
「ああ。僕の中の一番大事な場所は、とっくにあなたのものだ……これからもずっと」
溶けかけのチョコレートみたいな瞳で微笑まれて、胸がキュンと甘く鳴く。
“大好きな人の大事な場所を、永遠に自分が占拠する”
なんて甘やかで、なんて素敵なことなんだろう。
年を取っておじいちゃんおばあちゃんになっても、お互いのことをそんなふうに想い合えたら最高に幸せ。
わたしがぽうっと呆けたようになっていると、アキは握っていたわたしの手の甲にそっと唇を押し当て、そのまま視線だけこちらに寄越した。
目尻に向けて下がる甘い瞳が、真っ直ぐにわたしを射抜く。
「僕の愛は重いよ? でもあなたにはそれを受け止めて欲しい。永遠に注ぎ尽くすことを誓うから」
せつなげに細められた瞳が、『あなたが欲しい』と語っている。
そんなふうに好きな人に甘く乞われて、『ダメ』と言える女の子がいるのだろうか。少なくともわたしには無理。
林檎が樹から落ちるように頷きかける。けれどすんでのところで留まった。
――ちょっと待て。
これから何十年も一緒にいるってことは……最初が肝心じゃない?
“しつけ”……大事よね!?
「遠慮しとくわ。王子様のご寵愛なんて、わたしには荷が重すぎるもの」
これでもかというくらいの真顔でそう言うと、アキが「えっ」と両目を見張る。わたしは彼が何か言うより早く、言葉を繋げた。
「だけど拾ったドラネコのことは生涯愛することを誓うわ。言ったでしょ? 逃げたくなっても逃がさないって。女に二言はないの」
垂れ目を丸く見開いた顔が可愛くて、耐え切れず「ふふふっ」と笑う。目も口もすべてがゆるんでしまったから、もう真顔に戻せそうにない。
わたしは全開の笑顔のまま、固まっているアキに顔を寄せた。
「だから大人しく一生わたしのものになってね――ドラネコ御曹司くん」
大きく見開かれて行く甘く綺麗な垂れ目を見ながら、わたしは彼の唇に自分のものを重ねた。
【Fin.】
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