あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか

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Chapter14*オオカミなんて怖くない!ドラトラだってどんと来い!(※個人の見解です)

オオカミなんて怖くない!ドラトラだっ(以下略)[2]ー②

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縋りつくようにしがみ付いた広い背中。
握りしめたジレの下に隠されている、硬く逞しい感触を思い出す。

固くまぶたを閉じ、肌と耳だけ彼を感じる。
与えられる甘い刺激と言葉に身を委ねる。

「はやく」「もっと」

恥も外聞もかなぐり捨てて、本能のままに彼を求めようと口を開いた――そのとき。

ピロピロピロピロ、ピロピロピロピロ、―――

けたたましい・・・・・・電子音が頭上から聞こえて、体が大きくビクリと跳ねた。

と同時に、まるでブレーカーのスイッチを「バチン」と上げた時のように、頭の中が急に明るくなった。思考がクリアになった途端、猛烈に我に返った。

わたしったら、なにをっ……!

目を見開くと、一点を見つめて停止しているアキが。その視線を辿ると、わたしの頭上――つまりデスクの上にある内線電話機だった。

「で、電話っ……」

動揺のあまり、つい分かり切ったことを口にしてしまったけれど、わたしの声でアキもハッとしたみたい。

良かった…! アキも正気に返った!

お互い、こんなところでいったい何をしようとしたのだろう。内線が鳴らなかったらわたしたち、きっとあのまま……。正気じゃなかったと言えばそれまでかもしれないけど。

いやはや。ケンカのあとの仲直り……げに恐ろしや。

とにかく正常な状態に戻らねば!と、けたたましくなる内線電話機の音を聞きながら、わたしは着衣の乱れを直しつつ、デスクから降りようと上半身を起こした。

――が。

「何してるの?」
「わっ、」

肩をグイっと押されて、再びデスクの上に仰向けに。

エグゼクティブデスクの寝心地最高!――って、ちがーうっ!!

「ちょっ、なにって……!わたしは降りるからアキは早く内線を、」
「構わない」
「え、」
「内線は無視でいい」

――はい?

「本来なら席を外している時間だ。秘書にはそのことを伝えてあるし、内線これに出なくても問題はない」
「や、……だけど、」

鳴り続ける電子音などまったく耳に入らないというように、アキはわたしが元の位置に戻した下着ブラを、今度は根元ホックから外しにかかる。

「やっ、ちょっと…待って、」
「待たない」

いやいやっ! 待とう、待ちましょう!

「電話長いこと鳴ってるよ!?大事な要件かもよ!?」
「大丈夫」

だから目が本気マジだってばっ……!

「いやいやいやいやっ…!大丈夫じゃないよっ、取らないと後悔するかもよ!?」
「今吉野を食べない方が後悔する」

ちょっとおぉぉーーっ!
誰かこのエロドラネコ猛獣御曹司を止めてくださぁぁいっ!!

なんとかアキの手から逃れようと体を捻るけど、腰から下はガッツリと押さえられていて動かない。無我夢中で上半身を左右に捻り、両手をバタバタと動かしたとき。

「ピッ」という短い音のあと、《CMO、今よろしいですか?》と男の人の声。
ピタリと動きを止めたわたしたち。見上げると、アキは思いっきり眉間にシワを寄せている。
どうやらわたしの手が当たって、“スピーカーホン”がオンになったようだ。

良かった…! 天の救いだ!
そう思ってホッと胸を撫で下ろした――のだけれど。

「むんっ、」

彼がわたしの上半身に再び圧し掛かり、唇を合わせてきたのだ。

ちょ、ちょっと!それじゃ電話に出れませんよーー!!

もがもが・・・・と抵抗するわたしの声は、彼の咥内に呑み込まれて行く。

くぅ~っ、これじゃわたしが代わりに返事をすることも出来ないじゃないかぁ!!

わたしたちの無音の応酬の上から、《CMO、聞こえてらっしゃいますか?》と男性の声が訊ねる。
なのにアキは、わたしの口を自分のものでガッツリ塞いだまま、一向に電話に出ようとしない。

さては……!電話が切れるのを待ってるわね!!

再びのピンチに焦るけれど、巧みなディープキスにあっという間に抵抗力が削がれていく。
電話機は《CMO……?》と怪訝そうな声がしたあと、しばらく沈黙した。

もはやこれまでか……!

そう思った時。

《CMO―――そこにいらっしゃるのは分かっています。CEOから『今すぐ来るように』と言付かっております。もしこの電話にお出にならない場合は、問答無用でそこを開けますが、構いませんか?》

えぇっ!鍵が掛かっているんじゃないの!?

驚愕に目を見開くと、男性が続けて言った。

《CEOから合鍵の使用許可は頂いております》


その言葉に、アキがやっとわたしの口を離したかと思うと、すぐさま「チッ」と舌打ちをした。

えぇーっ! 舌打ちとかしたよ、この御曹司!

だけど今のわたしはそんなことに構っている場合じゃない。
ブラウスもブラも豪快にはだけているし、スカートも半分くらい上にたくし上がって、ストッキングは床に落ちている(はず!見えないけど)……。もっと言ったらショーツだって…やだダメっ、皆まで言わせないでっ!

とにかく、こんなあられもない姿を他人に見らでもしたら、羞恥と情けなさで恥ずか死ねる!
もう一生お嫁になんて行けないわよ……ていうか、行ってあげないんだからっ!!

そんな心の叫びを人生最大レベルで込めて、アキをきつく睨みつけた。

すると彼は「ふぅ~」と長い溜め息をついたあと、わたしの上から退き、電話機に手を伸ばした。

「はい」

彼が受話器を取ったのを見て、すかさずデスクから降りる。そしてデスクの陰にしゃがんで着衣を整えた。
頭の上からはアキが「え……、どういうことですか」と言う声。

何かあったのだろうかと気にはなりつつも、わたしは自分の身なりを整えることで精いっぱい。万が一今ドアが「ガチャッ」と開いたら、と思うと気が気じゃない。

なんとか体裁を保てる程度には衣服を整えられた時、アキの声が耳に飛び込んで来た。

「え、彼女も一緒に――ということですか……」

えっ…!なんだか聞き捨てならない言葉が聞こえたような……。

アキの方を見ると、彼も同じタイミングでわたしを見た。バッチリと目が合う。彼は受話器を耳に当てたままわたしに頷いて見せた。

「分かりました。ではこれからそちらに伺いますと、CEOに伝えてください」

彼はそう言うと静かに受話器を下ろし、ゆっくりとわたしの方へ顔を向けた。
さっきまでの熱はどこへ――というような冷静沈着な瞳。

嫌な予感がする。
アキが口を開く瞬間を、ゴクリと生唾を飲み込んで凝視した。

「静さんごめん。呼び出しだ」

固唾を呑むわたしに、アキは淡々とそれ告げた。

「あなたと一緒に来るように、と。――CEOじょうし命令だ」



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