あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか

文字の大きさ
61 / 106
Chapter13*泡はなるもの?帰するもの?

泡はなるもの?帰するもの?[1]ー③

しおりを挟む
「そう言えば、森ちゃんが本命チョコを上げた相手って誰? わたしは全然知らない人?」

ずっと気になっていたけど、自分のことで精いっぱい過ぎてすっかり忘れていたのだ。

わたしが何気なく口にした言葉に、ロッカーを漁る音がピタリと止んだ。ロッカーの扉の向こうで、彼女が動きを止めているのが分かる。

「あ、もしかしてわたしの知っている人?」

わたしがそう言うと、森がゆっくりと上体を起こし、ロッカーをパタンと閉めた。

のん・・のことは今はええんですぅ……静さんはひとのことを気にしている場合やないですよねぇ?」
「うっ……」

森よ、相変わらず痛いところを突いてくる。

「でもわたしばっかり……ずるいじゃない……」

森よりもずいぶん年上で先輩なのに、散々あんな醜態をさらしたのだ。少しくらい森のことを教えてもらっても、バチは当たらないはずでしょ。

年甲斐もなく頬を膨らませてじっとりと森を見ると、彼女は黒めがちな丸い目をにっこりと細めて言った。

のん・・のことはぁ……静さんがぁバッチリ上手くいかはったらぁ、その時には教えますぅ」
「う、うん……」

釈然としないながらも頷くと、森が急にずい・・っと何かをこちらに突き出した。

「ぬぉっ……、なに!?」
「これどうぞぉ!」
「え、わたしに……?」

差し出されたのは小ぶりな紙袋。それと森の顔を目で往復すると、森が一度頷いてから口を開いた。

「明日頑張ってください! の差し入れですぅ!」
「ありがとう……」
「開けるのは絶対明日にしてくださいねぇ!」

森が口にしたセリフに既視感が湧く。

何が入っているのだろう……。もしかして今度こそゲテモノのつづら、なんてこと……。

「もうっ、静さんっ! のん・・の念と愛が詰まってるだけですぅ!」
「う、うん……?」

森の“念”って……怨念じゃないのか?

「もうっ! 静さんが上手くいくように、っていう気持ちですぅ! そんなん言うなら返してもらいますよぉっ!」

ぷんすかと頬を膨らませながら紙袋を引っ込めようとする森。
わたしは「ごめんごめん」と謝ってから彼女の手からその紙袋を受け取った。

「ありがとうね、森ちゃん」
「……開けるのは絶対明日ですよぉ?新幹線の中とかあっちで時間が余った時とかぁ!」
「うん、分かった」

今度は素直に頷いたわたしに、森は「絶対絶対ですよ?」と念を押しまくられたあと、「プレゼンも頑張ってくださいね」と言われた。

森よ、完全にそっちはおまけだろう。そう思っていたら、彼女は意外なことを口にした。

「来年は絶対のん・・が選ばれてみせますぅ!」

お、珍しい……森ちゃんが仕事に目覚めた?
そう思った矢先。

「──で、のん・・もただで東京に行くんですぅ」

おいっ!そっちが目的かよ!
遊びに行くのじゃないんですけど!?

「……ていうか、森。そもそも本社で最終プレゼンがあるのは今回が特別で、例年だと関西支部で終わりなのよ?」

オリンピックイヤーの今年は、特別な年だからということでグループ全社を挙げた大コンペ大会となったのだけれど、例年だと我が社と【トーマビール】だけの募集。関西支部で“優秀企画”として選ばれたあとは、社内報に載るところで終わりなのだ。

「えっ! そやったんですかぁ!?」
「知らなかったの?」
「はいぃ……」

それもそうか。森はまだ二年目で、去年は新入社員だったからコンペには参加しなかったんだ。

「いいなぁ静さん……課長と東京やなんて……」

ガックリと落ちた森の肩をポンポンと叩くと、ポツリとこぼした声が耳に届いた。

だから森よ……、遊びに行くんじゃないんだってばよっ!!


―――――――――――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。