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俺が少しだけ開けたドアを相手の男がグイッと引いた。気配で玄関に入ってきたのだと分かる。
「気にしないで入ってきてください。ベッドは奥の部屋にあるんで」
いきなりベッドなんて単語を出してしまったことが、いかにも、という感じがして恥ずかしくなる。しかも奥の部屋だなんて言い方……うち、ワンルームなのに。そう思っていると「じゃあお邪魔します」と声が響いた。
ん?聞き間違いだろうか。いや、今のはついうっかりというやつに違いない。
「あの、声は出さないっていう条件を出していたはずなんですが」
「あぁ、聞きましたよ。でも俺」
男はそこまで言うと俺の目隠しに手をかけて、バッと外した。目の前には先輩とは似ても似つかない男の姿……。170センチは無いだろうという低めの身長も、細身の体も、可愛いと称されそうな容姿も、しかも多分、年下だ。
「そういうの嫌なんで」
「はっ?」
「なんつーか、誰かの代わり的なやつ。そんなことして抱かれたって、後で虚しくなるだけじゃん」
「嫌とかそういうんじゃなくて契約じゃ……」
「契約でもなんでも俺は嫌なんで」
男はつかつかと部屋の奥まで歩くとベッドに腰を下ろした。
「で、ヤるの? ヤらないの?」
このまま男を帰してしまえば俺はひとりで今日を過ごすことになる。それは嫌だ。それに、今日、俺は処女を捨てると決心したんだ。今日ヤらなきゃ、もう一生ヤれない気がする。
「ヤ、ヤります! ヤるっ」
「上出来じゃん」
男は俺をベッドの上に押し倒すと嬉しそう? に微笑んだ。
「俺、隆之。あんたは?」
「康介……」
「こーすけ」
呼ばれた名前が思いのほか甘く響く。そのまま顔が迫ってきて、出会って5分で俺たちはキスをした。
「ん……あ……」
しっとりとした唇が重なり離れて、また重なる。
触れる、触れさせている。先輩しかダメで先輩しか要らないと思っていたのに……。
先輩が脳裏を掠めて涙が滲むと、目の前の男の視線が俺を射抜いた。
「泣いてもいいから、俺だけ見てろよ」
そんなことを言われたらもう無理だ。後から後から涙が溢れて目から零れて髪の毛を濡らし、シーツを濡らす。
「こーすけ」
名前を呼ばれて深くキスをして、目じりを舐められて首筋を舌が這う。
「こーすけは可愛いよ」
「ばっ、何言ってんだよ。こんなデカい男が可愛いわけないだろ」
「だから、可愛いんだよ」
自分より可愛い男に可愛いと言われて泣きながらほんの少し笑った。隆之の手が俺の服を捲り上げ鳩尾にキスをする。
首筋から鳩尾、そして今ペニスを撫でられている。セックスって相手に急所をさらけ出す行為なんだ、ふとそんな言葉が浮かんだ。
「怖いか?」
まるで俺の思考を読んだかのような隆之の言葉。俺は静かに首を振った。
俺に跨った体勢のまま隆之が服を脱ぐ。服の上からでは想像出来ないほど引き締まった良い体をしていた。なんでこんなに見え……あ、今、昼間だ。時間は午後1時半。お日様は燦燦と外を照らし、家の中も明るい。
「どうしたの? 真っ赤になってるけど」
「ちょ、っと、さ、夜にしない?」
「何を?」
「これ……その、セックス」
「ぷっ、あははははは。もしかして部屋が明るくて照れたの?」
図星にされて逃げ場が無くなって顔を覆った。
「こーすけ、本当に可愛い。でもダメだよ。今する」
顔を覆っていた手を無理やり剥がされて目が合う。隆之が余裕のある表情で笑っていたがその目に少しの欲情が見えた気がして思わず目を逸らした。
「続けるよ」
言わなくてもいいのにワザと言葉にして俺を煽る。下着を脱がされペニスをさらけ出し、アナルに隆之の指が触れた時、俺は緊張と期待に揺れた。指の先端が意志を持って突き刺さり、ゆっくりと狭い道を進む。自分の指じゃない指。
「ふ……」
俺の呼吸に合わせるように隆之が指を進めると、昨夜も自分で慰めたソコは簡単に綻んだ。
「直ぐに柔らかくなったな。これだけ解れれば大丈夫か」
三本の指で内壁を押し広げながら隆之が指を引き抜いた。そしてあてがわれる熱。
「俺、あ、俺、まって、まっ」
隆之を招き入れたらもう本当に終わりなんだ。7年間ずっと思い続けてきた恋を本当に終わりにするんだと思ったら、死ぬ直前に痙攣する動物みたいにビクビクっと体が震えた。
先輩、先輩、先輩。
本当は今だって好きだ。
グッとアナルを押し広げようとする力を感じて俺はまた声を上げた。
「待って、隆之、ちょっと待って」
「だめだよ。待たない。大人しく諦めて」
その言葉が先輩が放った言葉のように胸に突き刺さった。
「あ……あ、あ」
足を高く掲げて隆之を受け入れる。凶暴な熱はヒリヒリと痛む胸とは正反対に少しの圧迫感を与えただけで、痛みをもたらすこともなく俺の中に収まった。
「は……はは、入った」
これでもう先輩とはサヨナラだ。寂しさを噛みしめるのはもうやめにするんだ。
ぽろぽろと零れる涙を見られたくなくて枕を引っ張って顔を隠した。
「こーすけ、泣いててもいいから顔見せて」
「……やだ」
「こーすけ」
頭を撫でられて優しく名前を呼ばれる。隆之は強引で頑固で容赦なくて……多分、やさしい。ぐいっと枕を奪われて隠すものが無くて今度は手で顔を覆った。
「気にしないで入ってきてください。ベッドは奥の部屋にあるんで」
いきなりベッドなんて単語を出してしまったことが、いかにも、という感じがして恥ずかしくなる。しかも奥の部屋だなんて言い方……うち、ワンルームなのに。そう思っていると「じゃあお邪魔します」と声が響いた。
ん?聞き間違いだろうか。いや、今のはついうっかりというやつに違いない。
「あの、声は出さないっていう条件を出していたはずなんですが」
「あぁ、聞きましたよ。でも俺」
男はそこまで言うと俺の目隠しに手をかけて、バッと外した。目の前には先輩とは似ても似つかない男の姿……。170センチは無いだろうという低めの身長も、細身の体も、可愛いと称されそうな容姿も、しかも多分、年下だ。
「そういうの嫌なんで」
「はっ?」
「なんつーか、誰かの代わり的なやつ。そんなことして抱かれたって、後で虚しくなるだけじゃん」
「嫌とかそういうんじゃなくて契約じゃ……」
「契約でもなんでも俺は嫌なんで」
男はつかつかと部屋の奥まで歩くとベッドに腰を下ろした。
「で、ヤるの? ヤらないの?」
このまま男を帰してしまえば俺はひとりで今日を過ごすことになる。それは嫌だ。それに、今日、俺は処女を捨てると決心したんだ。今日ヤらなきゃ、もう一生ヤれない気がする。
「ヤ、ヤります! ヤるっ」
「上出来じゃん」
男は俺をベッドの上に押し倒すと嬉しそう? に微笑んだ。
「俺、隆之。あんたは?」
「康介……」
「こーすけ」
呼ばれた名前が思いのほか甘く響く。そのまま顔が迫ってきて、出会って5分で俺たちはキスをした。
「ん……あ……」
しっとりとした唇が重なり離れて、また重なる。
触れる、触れさせている。先輩しかダメで先輩しか要らないと思っていたのに……。
先輩が脳裏を掠めて涙が滲むと、目の前の男の視線が俺を射抜いた。
「泣いてもいいから、俺だけ見てろよ」
そんなことを言われたらもう無理だ。後から後から涙が溢れて目から零れて髪の毛を濡らし、シーツを濡らす。
「こーすけ」
名前を呼ばれて深くキスをして、目じりを舐められて首筋を舌が這う。
「こーすけは可愛いよ」
「ばっ、何言ってんだよ。こんなデカい男が可愛いわけないだろ」
「だから、可愛いんだよ」
自分より可愛い男に可愛いと言われて泣きながらほんの少し笑った。隆之の手が俺の服を捲り上げ鳩尾にキスをする。
首筋から鳩尾、そして今ペニスを撫でられている。セックスって相手に急所をさらけ出す行為なんだ、ふとそんな言葉が浮かんだ。
「怖いか?」
まるで俺の思考を読んだかのような隆之の言葉。俺は静かに首を振った。
俺に跨った体勢のまま隆之が服を脱ぐ。服の上からでは想像出来ないほど引き締まった良い体をしていた。なんでこんなに見え……あ、今、昼間だ。時間は午後1時半。お日様は燦燦と外を照らし、家の中も明るい。
「どうしたの? 真っ赤になってるけど」
「ちょ、っと、さ、夜にしない?」
「何を?」
「これ……その、セックス」
「ぷっ、あははははは。もしかして部屋が明るくて照れたの?」
図星にされて逃げ場が無くなって顔を覆った。
「こーすけ、本当に可愛い。でもダメだよ。今する」
顔を覆っていた手を無理やり剥がされて目が合う。隆之が余裕のある表情で笑っていたがその目に少しの欲情が見えた気がして思わず目を逸らした。
「続けるよ」
言わなくてもいいのにワザと言葉にして俺を煽る。下着を脱がされペニスをさらけ出し、アナルに隆之の指が触れた時、俺は緊張と期待に揺れた。指の先端が意志を持って突き刺さり、ゆっくりと狭い道を進む。自分の指じゃない指。
「ふ……」
俺の呼吸に合わせるように隆之が指を進めると、昨夜も自分で慰めたソコは簡単に綻んだ。
「直ぐに柔らかくなったな。これだけ解れれば大丈夫か」
三本の指で内壁を押し広げながら隆之が指を引き抜いた。そしてあてがわれる熱。
「俺、あ、俺、まって、まっ」
隆之を招き入れたらもう本当に終わりなんだ。7年間ずっと思い続けてきた恋を本当に終わりにするんだと思ったら、死ぬ直前に痙攣する動物みたいにビクビクっと体が震えた。
先輩、先輩、先輩。
本当は今だって好きだ。
グッとアナルを押し広げようとする力を感じて俺はまた声を上げた。
「待って、隆之、ちょっと待って」
「だめだよ。待たない。大人しく諦めて」
その言葉が先輩が放った言葉のように胸に突き刺さった。
「あ……あ、あ」
足を高く掲げて隆之を受け入れる。凶暴な熱はヒリヒリと痛む胸とは正反対に少しの圧迫感を与えただけで、痛みをもたらすこともなく俺の中に収まった。
「は……はは、入った」
これでもう先輩とはサヨナラだ。寂しさを噛みしめるのはもうやめにするんだ。
ぽろぽろと零れる涙を見られたくなくて枕を引っ張って顔を隠した。
「こーすけ、泣いててもいいから顔見せて」
「……やだ」
「こーすけ」
頭を撫でられて優しく名前を呼ばれる。隆之は強引で頑固で容赦なくて……多分、やさしい。ぐいっと枕を奪われて隠すものが無くて今度は手で顔を覆った。
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